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結婚式直前、婚約者が愛人を連れてきた第3話

この話は約1458字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

「谷山さん、お腹の赤ちゃんはもう三か月で、とても健康ですよ。本当に中絶されますか?」

医師は柔らかい声で問いかけ、その表情にはどこか名残惜しさが漂っている。

私は画面に映る小さな胎芽を見つめた。

まるで、彼が大きくなった未来の姿を想像できるかのようだ。

目尻に滲んだ涙を指先でそっと拭い、力強くうなずいた。

七年間も待ち望んでいた命だが、晴翔と離婚するのなら、私たちのつながりはすべて断ち切らなければならない。

さもなければ、私はきっと心が揺れてしまう。

医師は私の覚悟を感じ取ったのか、一つため息をつき、手術を午後に予定した。

手術室に運ばれるまで、私は病床に横たわっている。

テレビでは、今日のニュースが放送されている。

「谷山グループの社長と彼の側近が、盛大な結婚式を挙げます!」

私はきっと悲しみに耐えられなくなると思っていたが、実際には、ただ少し「やっぱりね」という覚悟ができた安堵の気持ちが湧くだけだ。

真希は純白のウェディングドレスを身にまとい、まるでおとぎ話の姫のように美しく、清らかに入場した。

正直に言えば――そのドレスはとても美しい。

裾に散りばめられたダイヤが、日差しを受けて眩しく輝いている。

ただ、それは私に似合わないし、私のものでもない。

病室に突然、スマホの着信音が響いた。

画面に表示されたのは【谷山晴翔】という文字。

本当は出たくなかったけれど、七年の歳月を思えば、最後に祝福の一言くらいは言うべきだと思った。

電話をつなぐと、相手が口を開く前に、私は先に言葉を発した。

「結婚おめでとう、晴翔。時間があるときに早く離婚の手続きをしに行こうね。海老沢を正式な妻にしてあげないと、彼女が可哀想よ」

どの言葉が晴翔の気分を害したのか。数秒の静寂の後、彼の声が突然荒れ狂った。

「静菜、いい加減にしろ!ただのウェディングドレスだろ?何日経ったと思ってるんだ?それをまだ引きずってるのか?

お前が勝手に家出したからだろ!仕方なく真希に新婦の代わりを頼んだんだ!

俺が結婚式の前日に新婦を失ったって、世間に知られたいのか?」

――そう、ウェディングドレス。でも、それだけではない。

私の心の最も深い傷を、彼は知っている。

それなのに、平然と踏みにじり、挙げ句の果てに「まだ引きずってるのか」と言った。

この世には、忘れられることがある。

私は静かに答えた。「あなたにとっては都合がいいじゃないの?彼女の内助の功が大きいという評判が固まって」

マスコミの配慮でカメラが晴翔に近づけないのか、テレビの画面は少しぼやけているが、その中で晴翔が苛立ちを露わにして鼻筋をつまむ仕草だけははっきりと見えた。

「静菜、今回の式はマスコミ向けのパフォーマンスだ。俺の妻はまだお前だ」

式の時間が迫っているのだろう。画面の中で、真希が晴翔の腕に手を添えた。

そして彼女は突然、ごく自然な動きで晴翔のネクタイを直した。その慣れた仕草は、まるで何度も繰り返してきたかのような、理想的な妻の姿そのものだ。

晴翔は片手でスマホを持ち、もう一方の手で真希のベールを整えている。

その顔は、溢れるような優しさに満ちている。

――ちくりと、私のお腹が痛んだ。まるで赤ちゃんが、自分の父親が他の女と結婚しようとしていることに気づいたかのように。

私はスマホを握る手に力を込め、画面の中の彼を見つめながら言った。

「晴翔、離婚は本気よ。私はもう、あなたの妻でいたくない。

赤ちゃんも……今日で終わりにする」

そしてひと呼吸置いて、続けた。

「これを聞いて、あなたは――結婚式を抜け出して私のところへ来るの?」

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