結婚式前夜に親友を選んだ婚約者を捨てました第1話
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結婚式を翌日に控えた夜、婚約者の友人たちが「花嫁チャレンジをやろう」と騒ぎ出した。
私、桐島紗奈(きりしま さな)と親友の小野寺美咲(おのでら みさき)が、私の婚約者である高瀬直哉(たかせ なおや)についてのクイズに、同時に答える。私が1問負けるたびに、花嫁の持ち物を1つ差し出すというルールだった。
最初のクイズは、直哉のいちばん好きな色だった。
私が黒と答えると、美咲は青と答えた。彼のクローゼットには青い服など1着もないのに、みんなは声をそろえて宣言した。
「美咲、正解!」
私は式で履くはずの靴を脱ぐしかなかった。
2問目は、胃の調子が悪い時、直哉が食べたいものだった。
私は卵雑炊、美咲はシーフードパエリアと答えた。
けれど、彼はひどい胃潰瘍を患っていて、魚介類を食べて救急外来へ運ばれたこともある。何年ものあいだ、夜中に卵雑炊を作ってあげていたのは私だった。
反論しかけた私に、直哉は冷たい顔を向けた。
「そんなに自分がいちばん俺のことをわかってるって言いたいのか?」
私はブーケも差し出すことになった。
そして、最後の問題。
「直哉が、明日の結婚式で隣にいてほしいのは誰?」
私が結婚指輪を握りしめる一方で、美咲は笑って自分を指さした。次の瞬間、直哉は私の前を通り過ぎ、彼女の手を取った。
たちまち歓声が上がった。
「大正解!」
ルールに従えば、これで私は指輪も直哉も失ったことになる。
直哉は私の指から無理やり結婚指輪を抜き取り、美咲の指にはめてから振り返った。
「ただの予行演習だろ。まさかゲームくらいで本気で怒ってるのか?」
笑い転げる親族や友人たちを見て、私はふと気づいた。答えが合っているかどうかなんて、どうでもよかったのだ。最初から、誰も私を勝たせるつもりはなかった。
私はベールを外し、美咲の腕に載せた。
「明日の結婚式も美咲とすればいいわ」
* * *
ついさっき、私は結婚式をキャンセルした。
あの人たちのゲームで花嫁がいつでも取り替えられるのなら、私だって、こんな花婿はこっちから願い下げだ。
あの人たちのことも、もういらない。
……
式場の外に出たところで、直哉に後ろから手首をつかまれた。指輪で擦りむいた傷からは、まだ血が出ている。
彼は眉をひそめると、スーツのポケットからハンカチを取り出して私の傷口を押さえた。
「ただのゲームだろ。こんな怪我をするほどのことか?」
その手つきは優しく、さっき無理やり指輪を奪ったのとは、まるで別人のようだった。
私はうつむく彼の顔を見つめ、ふと尋ねた。
「黒と青、本当はどっちが正解だったの?」
指にハンカチを巻いていた彼の手が、一瞬止まった。
「黒だ」
「じゃあ、胃の調子が悪い時は?」
「卵雑炊」
答えに迷いはなかった。私の答えがすべて正しく、美咲の答えはすべて間違っていると、彼はわかっていたのだ。それなのに、みんなと一緒になって私の負けだと言った。
「どうして?」
私が手を引っ込めて尋ねると、直哉はため息をついた。
「美咲は子どものころから、みんなに注目されることなんてなかったんだ。花嫁気分を味わいたかっただけだろ。明日、本当に俺と結婚するのはお前なんだから、何回か勝たせてやったっていいじゃないか」
私は指についた血を見つめた。
彼にとって、靴もブーケも指輪も、大したものではないのだろう。最後に私と結婚しさえすれば、それでいい。私の誇りも人前での体面も、彼に選ばれたと思える喜びも、美咲の機嫌を取るためなら踏みにじっても構わないのだ。
私が黙っていると、直哉は少し口調を和らげた。
「わかったよ。明日、式が終わったら美咲に直接謝らせる。とりあえず今は戻ろう、みんな待ってるから」
そう言って私の手を取ろうとする彼から、私は1歩下がった。
「疲れたから、部屋で休みたい」
直哉はやや顔を曇らせたものの、それ以上は引き止めなかった。
「わかった。落ち着いたら、グループチャットに大丈夫だって送っておけよ。お前を怒らせちゃったんじゃないかって、美咲がずっと泣いてるんだ」
数歩歩いたところで振り返り、彼は念を押した。
「ドレスをスイートルームに届けるの、忘れるなよ。美咲が、今の服じゃ靴に合わないから、全部そろえて着てみたいって」
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