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結婚して七年、夫は息子を連れて再婚した第3話

この話は約2025字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

声が響いた瞬間、蒼介はためらいもなく私を階段から突き落とした。

床に叩きつけられた瞬間、足首に鋭い痛みが走り、全身に広がっていく。

それでも蒼介は一瞥すらせず、千紗の手を取り、優しい声でなだめた。

「今のは彼女が俺に掴みかかってきただけだ。俺は何もしてない」

その声に気づいた蓮が飛び出してきて、思わず叫ぶ。

「ママ、大丈夫?!」

一瞬、胸の奥が温かくなった。

言葉を返そうとした、その刹那――千紗の声が被さった。

「大丈夫よ、蓮。ママは平気」

その一言で、蓮の足が止まった。

数メートル先で立ち尽くしたまま、迷うような顔をして、やがて静かに千紗のそばへ寄り添う。

――思い出した。

まだ蓮が小さかったころ、彼はよく私に聞いた。

「ママ、どうしておじいちゃんとおばあちゃんに会わせてくれないの?」

何度も考えた。いつか蓮を連れて、養父母に会いに行こうと。

あの人たちは私を実の娘のように愛してくれた。

だから、蓮のことも同じように大切にしてくれると信じていた。

でもその幻想も、今、息子の手で壊された。

――もういい。彼が私を要らないというなら、私も彼を要らない。

胸の奥の痛みを飲み込み、足首の激痛に耐えながら、ゆっくり立ち上がった。

階段の上から千紗が見下ろすように言った。

「お姉ちゃん、あなたがここまで追いかけてきたこと、もう両親に話したわ。

次やったら、家から追い出すそうよ。

お姉ちゃん、せっかく『田舎娘』から『お嬢様』になれたんだから、もう少し大人しくしてたほうがいいわよ」

――私は、養父母の正体を誰にも話したことがなかった。

あの日、白石家に戻った私は、篠宮家が用意した十数台の高級車の車列に送り届けられ、首には篠宮家に代々伝わる宝石のペンダントをかけていた。

どう見ても、「田舎から引き取られた娘」には見えなかったはずだ。

それに、この数年間、養父母は私が白石家に戻って生活水準が下がらないよう、裏でずっと白石家に大型案件を回し続けていた。

そのおかげで、わずか数年で白石家は名ばかりの豪門から業界の中心にまでのし上がった。

けれど今――その養父母が、私が白石家でどれほど屈辱を受けてきたかを知った。

帰ってくれば、白石家の終わりはすぐそこだ。

そう思うと、不思議と痛みが遠のく。

私は冷ややかに笑い、唇を開く。

「お父さんとお母さんが戻ってきたときにも、今みたいに威張っていられるといいわね」

千紗はため息をつき、首を横に振った。

「お姉ちゃん、あなたはもう白石家の娘なの。

たとえ養父母が戻ってきたって、あなたに口出しする権利なんてないわ」

蒼介が彼女の肩を抱き寄せ、鼻で笑った。

「身の程をわきまえて、田舎の土地でも守ってろよ。

下手に逆らえば、白石家だけじゃない――神崎家も黙ってはいない」

蓮は何も言わなかった。

けれど、その視線がすべてを物語っていた。

――彼もまた、私を恥だと思っているのだ。

もう、何も言う気がしない。

翌日、私と蒼介がもみ合う映像がネットで拡散され、瞬く間にトレンド入りした。

無数のネット民が蒼介と私を「関係が怪しい」と罵り、私は「図々しい女」だと叩いた。

事態が大きくなると、すぐに白石家が記者会見を開いて釈明に走った。

蒼介はカメラに向かって真摯な顔を作った。

「楓と俺には何の関係もない。ずっと向こうからつきまとわれていただけだ」

千紗は蒼介の胸にもたれ、同じように強い口調で言った。

「お姉ちゃんが世論を利用して私たちを引き裂こうとしているなら、諦めて。私は一つの動画で私の愛する人を疑ったりしない」

その瞬間、場の空気は一転した。ネット上の罵詈雑言も、わずかに潮目を変えた。

「楓、ありえないだろ。男に飢えてて、妹の恋人まで手を出すのかよ?」

「あんた知らないの?楓って『本物のお嬢様』として引き取られたんだよ。

でも戻ってからずっと千紗をいじめて、婚約者まで奪ったらしい。

で、男の方がやっと目を覚まして『偽のお嬢様』と結婚したんだって。

そりゃ楓も発狂するわけじゃん」

「確か、蒼介って前から楓の婚約者だったはずだよね?」

「あんた、楓の愛人だろ?なんで必死で庇うんだ?」

そうした中で、記者会見に来ていた友人の美羽が黙っていられなくなり、壇上に駆け寄ってマイクを奪った。

「蒼介、何を演じてるの?最初からあなたが楓にしつこく迫って、婚約までしたんだよ。追い払おうとしても離れなかったじゃない!

それに子どもを見てよ。あの子、誰に似てるか本当にわからないの?」

美羽の追及に会場は騒然となり、カメラが蓮の困惑した顔を映すと、彼の、私に似たその顔を見て会場の空気が凍るように変わった。

千紗の顔色が青ざめた。

「その子、本当に……」と呟く間もなく、蒼介は羞恥と怒りで堪え切れず、美羽の胸元に蹴りを入れた。

美羽が痛みに顔を歪めるのを見て、私の理性は音を立てて崩れた。

私はポケットから、彼がくれた指輪の箱を取り出し、蒼介の顔めがけて放り投げた。

「この指輪も、この子も、全部あなたのものよ。返す。私、もういらない!」

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