結婚して七年、夫は息子を連れて再婚した第2話
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家に戻って間もなく、両親が大量の贈り物を車に積んで押しかけてきた。
高圧的な口調で言った。
「この贈り物は全部、私たちが自分で選んだものよ。もう千紗は蒼介と結婚したの。これ以上騒ぎ立てたって、あんたのためには何一つならないのよ」
「そういうことだから、これからは蒼介が千紗と過ごしたあと、あなたのところにも顔を出すの。おとなしく『愛人』でいればいいじゃない」
その言葉に、思わず口元が冷たく歪んだ。
「愛人?いつの時代の話をしてるの?蒼介に女をあてがいたいなら勝手にすればいい。でも、その相手が私だなんて、冗談じゃない!」
私は彼にもらった結婚指輪を取り出し、二人に投げつけた。
「これを蒼介に返してきて。これから何人女を囲おうと、私には関係ないって伝えておいて」
私があまりに毅然としているのを見て、両親はかえって不機嫌そうな顔をする。
これ以上言わせまいと、私は容赦なく二人を追い出した。
それから、自分の荷物をまとめた。
蒼介と蓮に関する物はすべて捨てる。
人も、思い出も、全部いらない。
夜が明けても、蒼介は帰ってこなかった。
ネットには、彼と千紗の華やかな結婚式の映像が溢れている。
指輪の交換、誓いの言葉、そして友人たちの歓声の中で交わすキス。
二人の表情は初々しく、熱に浮かされたようだ。
私と蒼介が七年も「秘密の結婚」をしていて、五歳の息子までいることを知らなければ――誰だって、彼がこれが初めての結婚だと思うだろう。
スマホの画面を閉じると、蒼介の秘書が玄関に現れた。
笑みを浮かべながら、彼が私に贈った指輪の箱を差し出した。
「神崎社長からの伝言です。――これ以上わがままを言うなら、その『指輪』が『離婚届』に変わるかもしれませんよ」
指先が震えた。
私はその箱を握りつぶしそうになった。
怒りが、はらわたが煮えくり返る。
蒼介は今、千紗と「新婚旅行」の真っ最中だと知った。
私はすぐに一番早い便を予約し、彼の正体を暴くため、彼らの新婚旅行先へと飛び立った。
行き先は海沿いのリゾート――かつて、私と蒼介も訪れた場所だ。
あのとき、彼は背後から私を抱きしめ、「一生、離れない」と囁いた。
その記憶が、今は嘲笑のように胸を刺す。
現実に戻ると、リビングには千紗がいる。
私のネグリジェを身にまとい、ゆっくり階段を下りた。
まるでこの家の女主人のように、ソファに腰を下した。
「ごめんなさい、お姉ちゃん。昨夜は私と蒼介さんの初めての夜だったの。彼、まだ寝ているわ。
今の蒼介さんは私の夫よ。何か話があるなら、私に言ってちょうだい」
千紗は何気なく髪をかき上げ、首筋に並ぶ無数のキスマークを晒している。
目の奥が焼けるように痛み、拳を握りしめた。
「そんなに自信があるの?彼が『あなたの夫』だって?」
私はバッグの中にある彼がくれた指輪の箱に手を伸ばそうとした。
その瞬間、二階から重なる声が響いた。
「「どうしてここにいるんだ!」」
蒼介と蓮が階段を駆け下りた。
父と息子、そっくりな眉と瞳が、同じように警戒の色を帯びて私を見つめた。
千紗の目尻がすぐに潤んだ。
「蒼介、お姉ちゃんがあなたに会いたいって言うから、少し待っててもらってたの。でも、急に私を罵り始めて……」
私はすぐに反論した。
「違う!私はそんなこと――」
言い終わる前に、蓮が勢いよく走り出し、私を体当たりした。
「この悪い女!ママをいじめるな!」
悪い女――?
衝撃で体が固まった。心臓を鷲掴みにされたような激痛が走った。
息子の目に映る私は、ずっと「悪い女」だったのだ。
たまらず言葉がこぼれた。
「蓮……どうしてそんなこと言うの。私はあなたの――」
「もういい!それ以上わけの分からないことを言うな!」
蒼介の怒声が遮った。
彼は私の手首を乱暴に掴み、力任せに外へ引きずり出した。
玄関の影、人の目の届かない場所で、蒼介は私の顎を掴み、低く脅すように言った。
「楓、よく考えろ。俺との関係、そしてお前がようやく手に入れた『お嬢様の座』を。
もし千紗に、蓮が本当はお前の子だと知られたら――お前は一生、息子に会えなくなるぞ」
――本当に、彼は千紗のためならどこまでもやる。
でも、私が欲しかったのは、結婚でも、『お嬢様の座』なんて肩書でもなかった。
蒼介の愛、そして両親の愛――それだけだった。
なのに、一番大切にしてきた者が、一番私を軽んじていた。
胸の奥が締め付けられ、視界が揺れた。
瞬きをした途端、涙が頬を伝った。
その涙を見て、蒼介の声が少し柔らかくなった。
指先で私の目尻を拭いながら、穏やかに言った。
「もういい。いい子にしてろ」
――その背後で、千紗の驚いた声が響いた。
「蒼介……お姉ちゃん……何をしてるの?」
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