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約束を破った俺は、離れ去った君に会えない第3話

この話は約1784字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

午後、真奈美は幸太を誘って買い物に出かけた。

出かけ際、幸太は冷ややかに言い捨てた。「夜は真奈美が家で食事をする。彼女の好物を作っておけ」

私は窓の外の枯れた植木鉢を眺め、黙り込んだ。

二人が出て行ったあと、厚手の服を着込んで病院へ向かった。

薬局で並んでいると、幸太の後ろ姿が見えた。

彼は真奈美を抱き寄せ、特別診療エリアで待機していた。

真奈美は手を押さえ、不満そうに言った。「幸太さん、手が痛いの」

幸太は、赤く腫れた真奈美の手の甲に優しく息を吹きかけていた。「大丈夫、あと少しで先生が来るから」

私はカルテを握りしめ、言葉を失った。

余命はあと3ヶ月。幸太は私の容体なんて気にしもしない。

真奈美の手が少し赤くなっただけで、あれほど献身的に尽くすのに。

視線を感じたのか、幸太が気づいた。「直美?なぜここにいる?」

幸太は大股で近づくと、私の手からカルテをひったくった。

「つけてきたのか?いつからそんな粘着質な女になったんだ?」

胸が締め付けられ、私は奪い返そうと手を伸ばした。「返して」

幸太は私の手をするりとかわし、カルテを一瞥すると、鼻で笑って破り捨てた。

「こんな偽のカルテまで捏造して、いつまで嫉妬するつもりだ?同情を引くためなら手段を選ばないのか」

真奈美が寄ってきて、幸太の腕にしがみついた。「直美さん、そんなに幸太さんの関心が欲しいの?でも病気のフリをして、不幸を招くようなマネはやめたら?」

床に散らばる紙屑を見つめ、心が底なしの闇に落ちていくのを感じた。

「幸太、あれは本物なのよ」

「いい加減にしろ!」幸太は遮った。「真奈美は本当に痛がってる。お前はただの芝居だ。さっさと帰って飯を作れ、恥をさらすな」

周囲の好奇の視線の中、真奈美は幸太の背中に隠れ、あざ笑うようにこちらを見ていた。

私は背を向け、ゆっくりと歩き出した。

一歩進むたびに、胃の中に鋭いナイフを突っ込まれたような痛みが走る。

家に帰ると暗いリビングで、母との唯一のツーショット写真を見つめ、涙がこぼれ落ちた。

母が他界してから、この世で私を心配してくれる人なんて一人もいない。

かつて、私は幸太を頼りにしていた。

けれど今は、幸太には他の女性がいる。もし彼にお金が必要でなければ、とっくに私と関係を断っていただろう。

そのとき、ガチャリとドアが開いた。

幸太と真奈美が、大量の買い物袋を抱えて帰ってきた。

真奈美は部屋に入るなり顔をしかめた。「嫌だ、真っ暗じゃない?直美さん、まだ料理を作ってなかったの?」

幸太が明かりをつけると、空のダイニングテーブルを見て、たちまち激昂した。

「直美!俺の言葉を無視するつもりか?」

ソファに座ったまま、私は動けなかった。「体調が悪くて」

「体調だと?尾行する元気はあるくせに」

幸太が近づいてくると、私の持っていたフォトフレームを見て鼻で笑った。「死人の写真抱えて何のつもりだ?だから家に帰るのが嫌になるんだよ!」

幸太は力ずくでフォトフレームを奪い取り、中の写真を抜き取った。

「二度と、そんな忌々しい写真は置いておくな」

幸太が写真を破ろうと構えた瞬間、私の怒りが頂点に達した。

写真を奪い返そうと飛びかかったが、軽くいなされた。

幸太は私を軽蔑しきった目で見下ろす。「真奈美に謝れ。そうしたら写真を返すか考えてやってもいい」

一瞬、頭が真っ白になった。

謝罪?

私と幸太の幸せを壊したクズ女に対して、謝れというの?

放心状態の中、写真が裂ける嫌な音が耳に刺さった。

躊躇していた私に業を煮やした幸太は、すでに写真の端を引きちぎっていた。

「謝れ」幸太は繰り返した。

私は歯を食いしばり、床に膝をつき、深く頭を下げた。「ごめんなさい。すべて私が悪かったわ。松尾さん、許して」

破れた写真は、真奈美のあざ笑う声と共に膝元に落ちてきた。

「相変わらず、みじめな執着だな」幸太の声が、より一層冷たく響いた。

私は答えない。

ただ、床の残骸を震える手で拾い集め、胸に抱きしめた。

幸太の言う通りだ。私は本当にみじめな執着を続けている。

創業当時、安いカップ麺を一緒に食べたのは私なのに。

食費を節約するために、半月も賞味期限間近のサンドイッチで食いつないだこともあった。

あろうことか幸太の不倫の後でさえ、たった一つの妻という座のために、全財産を切り崩して尽くした。

それなのに幸太、最初に娶ると言ったのはあなたよね。

約束を破ったのは、あなたよ。

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