私を蔑み、母になる未来まで奪った夫などもういらない第3話
この話は約1588字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
涼子がスマホの動画を皆に見せつける。
その動画には、私が段ボールを抱えて倉庫に入った直後、倉庫から火が上がる様子が映っていた。
そしてすぐに炎は勢いを増し、オフィスにいた全員が閉じ込められてしまった。
涼子が私を指差し、大声でわめく。「犯人はこの人です!倉庫にわざと火をつけて、会社に大きな損失を出し、社員を巻き込んで!」
それを聞いた理仁は、私を助けようとした医療スタッフたちを突き飛ばした。
私の胸ぐらを掴み、容赦ない目つきで私を睨みつける。「柚葉!お前には仕事をくれてやったのに、どういうつもりだ?
俺がこの会社をどれだけ大切に思ってるか知ってるだろ?なのに、ここに火を放つなんて、どのツラ下げて救急車に乗るっていうんだ?お前は、大人しく刑務所にでも行ってこい!」
そう言いながら、理仁は私の襟を掴んで引きずっていった。
「こいつが放火犯です!早くこの女を逮捕するように、警察へ連絡してください!」とその場にいた消防士に叫び散らした。
「うちの会社の法務部のやつを入れるか?すぐに訴状を準備しろ。裁判にかけて、この愚かな女に全ての責任を取らせてやる!」
引きずられるたびに衣類の首元が喉に食い込み、私は呼吸ができなくなっていく。
そんな時、部下の青木雅美(あおき まさみ)が見かねて割り込み、理仁の腕を無理やり引き離してくれたことで、私はようやく空気を吸うことができた。
窒息しかけたせいで真っ青になった顔で、私は激しく咳き込む。
雅美は涙をこらえながら、私のそばで守るように立ってくれた。
「部長、なんで何も言わないんですか……」
すると、理仁が険しい顔で雅美を睨んだ。「青木さん。うちの会社で働いてるっていうくせに、この女をかばうのか?たった一言でもこいつのために口をきいたら、明日から来なくていいからな」
周囲は一瞬で恐怖に凍りつき、沈黙に包まれる。
社長の家庭内の問題に口を挟んで、自分の生活まで失う勇気がある者は誰もいないだろう。
私も雅美の手を押し返し、ここから逃げるよう促した。
しかし雅美は動かず、理仁に向かって言い放った。「社長、その動画だけで部長が犯人だって決めつけるなんておかしいですよ。社長なのに、こんなこともご自身で判断できないんですか?」
理仁がふっと鼻で笑う。
「何の理由もないのに、段ボールを持って倉庫に入ったのがまず怪しいだろ?それに、こいつは避難用のロープや火災避難用マスクを用意していたんだ。もし、こいつが犯人でなければそのことをどう説明するっていうんだよ?」
雅美は私のために必死になってくれた。彼女が涙ながらに言葉を続ける。「部長は総務部長ですから、本来であれば荷物を運ぶような仕事はしなくてもいいんです。
それでもここ数年、経営が悪化している会社のために、少しでも節約しようと、率先して体を動かしていたのを忘れたんですか!
それに、その避難具は以前から用意していたものです。万が一、会社で火事が起こった時のことを心配して、部長は全社員に配布してくれていたんです」
理仁の表情がわずかに歪んだ。「嘘だ!それなら、なぜ俺や涼子の分がないんだ?」
雅美は目を赤くし、涼子を指差す。「そんなの陣内さんに聞いてくださいよ!配られたものをどうしたかって!」
涼子は全身を震わせ、取り乱しながら弁解した。「しゃ……社長、私はそんな、ぬ、盗んでなんかいません!」
図星を突かれた様子の涼子を見た理仁は、顔を曇らせた。
そして私の腹部を視界に入れた雅美は、さらに声を震わせる。
すすり泣きながら雅美は私に聞いてきた。「部長……子供、子供はもう……」
それを聞いて、理仁が勢いよく近づいてきた。「子供?なんのことだ?」
私は首を振って、何も話さないようにと、雅美を見つめる。
何かに気づいた理仁が食い下がろうとしたその時、警察が駆けつけてきた。
「放火犯を捕まえたと通報を受けましたが、犯人はどこにいるんですか?」
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