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私は心を取り戻し、あなたもこれ以上付き合う必要はない第1話

この話は約1671字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

森川優香の誕生日、ずっと寄り添って生きてきた母が亡くなった。

夫は優香の誕生日を祝うどころか、母の葬儀にも姿を見せなかった。

——彼は空港に初恋の人を迎えに行った。

* * *

母の遺骨を納骨堂に安置すると、森川優香は叔母からの電話を受けた。

「優香、お母さんが亡くなって、あなたが日本に一人でいるのが心配なの。海外で私と一緒に暮らさない?」

優香は長い沈黙の後、大きな決意を固めたかのように、厳かに答えた。「はい」

「本当?来てくれるの?嬉しいわ!」電話の向こうで叔母は喜びの声を上げた。「でも、日本で結婚したって聞いたけど、ご主人も一緒に来てくれるの?」

その言葉に、優香は笑みを浮かべた。「大丈夫です、もうすぐ離婚しますから」

電話を切る前に、玄関から物音が聞こえてきた。

深津航が帰ってきたのだ。

優香は目を上げて玄関を見たが、いつものように出迎えることはしなかった。

そこへ、航の妹の深津美咲が入ってきた。得意げな表情で言う。「お兄ちゃんが姿月お姉様を連れて帰ってきたわ。あなたくらいの偽物は、すぐに追い出されるわよ~」

優香は眉を少し寄せた。「......偽物?」

美咲はさらに得意げな表情を浮かべた。「姿月お姉様を見れば分かるわよ」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、航が浅井姿月を連れて入ってきた。

運転手が大小の荷物を持って、後ろについてきている。

姿月は巨大な薔薇の花束を抱えていた。鮮やかな赤い薔薇が目を奪い、優香の目尻が思わず赤くなった。

まさか彼女に薔薇を買う時間があったなんて。

結婚して五年、一度も花を贈ってくれたことはなかったのに。

「姿月が帰国したばかりで、まだ住む場所が決まっていないから、しばらくうちに泊まることになった」航は優香を見もせず、姿月から目を離さないまま言った。「俺の隣の客室を掃除しておいてくれ。これからは姿月がそこに住むから」

相談ではなく、命令口調だった。

まるで夫婦ではなく、この家の家政婦でもあるかのように。誰かが泊まりに来るのに彼女の同意は必要なく、ただ客室の掃除をすればいい、とでも言うように。

「航、私が掃除するわ。優香さんに迷惑をかけたくないの」姿月が顔を上げ、優香は初めて彼女の顔を見た。

優香は凍りついたように、体が硬直して動けなくなった。

この瞬間、美咲の言った「偽物」の意味を理解した。

浅井姿月は優香によく似た顔をしていたのだ。

ただし、より柔らかく美しく、優雅な雰囲気を漂わせていた。姿月の目元には、選ばれし者としての誇りが垣間見えた。

なるほど......

優香は突然笑い出し、さりげなく目尻の涙を拭った。なるほど、やっと分かった。

自分はいつも不運で、神様に見放されていた。母との二人暮らしだったのに、母は優香の誕生日に亡くなってしまった。

そうだ、こんな不運な自分が、たった一度の出会いで、大企業の御曹司に見初められ、結婚までできるなんて、そんな幸運があるはずがない......

なるほど。

これで全て説明がついた。

自分は代役に過ぎなかったのだ。

「あら、泣いちゃったの?大げさよ。姿月お姉様はほんの数日泊まるだけなのに、泣くことないでしょ?森川優香、器が小さすぎるわ」美咲は嘲るように言った。

優香は慌てて首を振った。「違います、浅井さんのせいじゃ......」

言葉を終える前に、姿月は目に涙を浮かべた。「やっぱり帰ります。私のせいで夫婦仲が悪くなるのは嫌です」

航の表情が一瞬で曇った。

「帰る必要はない」彼は姿月を制し、誰も反論を許さない口調で言った。「この家のことは俺が決める!森田さん、荷物を上に運んで!」

運転手は顔を上げ、不安そうに優香を見たが、動かなかった。

それを見て、航も優香の方を向いた。

「何か文句があるのか?」彼は上から目線で尋ねた。

その声には脅しのような響きさえあった。

優香は首を振り続け、目を赤くしながら笑った。「何もありません。浅井さんが来てくれて嬉しいです」

文句なんてない、あるはずがない。

もうすぐ去る人間に、何の文句があろうか。

彼女は品位を保ったまま身を引き、そして永遠に去っていく。二度と戻ってこない。

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