私はこの子を産んで億万長者になってみせる第3話
この話は約2557字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
桐生蒼真は眉間を押さえ、ため息をついて私を見た。「君は本当に子供の父親が誰なのか分からないんですか?」
私はぶつぶつと文句をこぼした。「私に分かると思う?あなた達三人が連続で私とヤったからでしょ」
彼は冷ややかな声で言った。「まだ言い訳するつもりですか?あの日、私の努力が足りなくて満足させられなかったんですかね?次の日も別の男を探しに行くほど元気が有り余っていたとは」
あの至福のあまり、ぼうっとしていた数日間を思い出し、私は腰がまた疼いてきた。
彼は携帯を見て言った。「白鳥玲央は海外に出張に行っています。彼が帰国したらしっかり話し合いましょう」
私と西園寺隼は異論はなかった。
ちなみに私は帰る前に、彼にも子供の養育費を要求するのを忘れなかった。
彼の嫌悪感を露わにした目つきには気付かないふりをして、携帯に送金された通知を見て私は超絶ハッピーになっていた。
心の中で、またへそくりが増えたことを考え、白鳥玲央の帰国をものすごく期待した。
私はお腹をさすり、良い仕事をしてくれた可愛い我が子に感謝した。
家に帰って横になってすぐ、瀬戸家の母親から電話がかかってきた。
私が電話に出ないでいると、電話は鳴り続けた。
結局、耐えきれずに電話に出た私は、彼らが一体何の用なのか聞いてやろうと思った。
「葉月、あんた今日また愛莉をいじめたんでしょう?あんたは今まで彼女の人生を奪っておいて、それでもまだ足りないのか?」
口を開くと怒涛のように質問攻めをしてきた。
胸元に手を当て、涙が滲んできた。
「そんな話をするだけならもう切るわよ」
電話の向こうは焦って「待ちなさい、明日は愛莉をお祝いするパーティをするから、あなたも来なさいよ」と言った。
私と瀬戸愛莉はすでに入れ替わっていたが、瀬戸家は今まで社交の場で愛莉を正式に家族として紹介していなかったのだ。
明日の愛莉帰還パーティは彼女のために特別に催されるものだ。この機会に彼女を上流社会へと溶け込ませようというのだ。
だけど、私を招待するなんてどういうこと?
瀬戸愛莉を際立たせるためか?
考えもせずそのまま断った。「時間がないの」
彼女は立て続けにこう言った。「それはあんたが決めることじゃないわ。あんたが来ないなら大吉を他所の家にやるわよ」
大吉は私が飼っているボーダーコリーのことだ。私が瀬戸家を離れる時に、一緒に連れて行こうとしたが瀬戸愛莉がそれを許さなかったのだ。
まさか今、瀬戸家に犬質にされてしまうとは。
切られた電話を見ながら、しばらく沈黙していた。そして、西園寺隼たち二人に行くかどうか尋ねた。
返事が来て、私はほっと胸をなでおろした。
明日瀬戸家が何も悪知恵をはたらかせないことを願う。そんなことをしたら、お腹にいる子供の父親にどんな仕打ちをされるか知らないぞ。
翌日、私は大金をはたいて髪型、メイクと完璧にお洒落をした。決して相手に引けを取ってはならないのだ。
パーティ会場に到着し、子供の父親を探して回った。探している相手が見つかる前に瀬戸愛莉が私の行く手を塞いだ。
彼女は口元に手を当て色っぽく笑ってみせた。「お姉様は来ないかと思っていたわ」
同じ年、同じ月、同じ日に生まれた私達なのに、瀬戸家はどうしても私を姉と位置付けたがった。
私と瀬戸愛莉が喧嘩した時に、彼らは私にお姉さんなのにどうして妹に譲らないの?だの言うためだ。
私は私で彼女は彼女だ。同じ人間なのに、どうして私のほうが彼女に譲ってあげなければならないのだ?
私はワイングラスを持ち、彼女のほうに向けてゆらゆらと揺らした。「なんで私が来ないと思ったわけ?」
彼女はすぐに顔色を変え、悪意の目で私を見た。
「お姉様、私が一度あなたを追い出したからには、二度目も同じなのよ。空気を読みなさいよ。さっさとここから出て行きなさい。
それから、西園寺社長はあなたが気にかけるような相手じゃないの。あんたの今の身分じゃ、彼の荷物持ちになる資格さえなくてよ」
私は彼女の後ろにいる人のほうを向いて笑った。
西園寺隼は相手を愚弄したような顔でやってきた。「彼女が俺を気にかけないというなら、誰が気にかけるんだ?貴様か?」
彼女は突然現れたその人物を見て、また血相を変え、どもりながら説明した。
「西園寺社長、わ、私はそういう意味では」
彼は私の肩を抱き、私に問題がないと確認してから目線を彼女のほうへと向けた。
「では、どういう意味なんだ?俺が彼女の好きにさせているんだ。貴様にどうこうできる問題か?」
瀬戸愛莉はそれを聞き、顔を真っ青にして、ちらちらと私に目線をよこしてきた。
瀬戸孝介はその様子に気づき、瀬戸愛莉のところまでやってきた。
「西園寺社長、姉妹二人が冗談を言い合っていただけですよ。本気になさらないでください」
「瀬戸さん、それは聞き捨てならないですね。私の知るところでは、瀬戸葉月はとっくの昔にあなた達瀬戸家から勘当されているでしょう。それなのに姉妹とはどういうことでしょうか?」桐生蒼真が遠くから近寄って来て、彼の話を遮った。
この二人に瀬戸家は敵わないので、瀬戸孝介は気まずくなり腹が立って、ちらりと瀬戸愛莉を睨んだ。
口調を強めて彼女に向って言った。「愛莉、早く葉月に謝りなさい」
瀬戸愛莉は彼の様子を見て、納得できないといった様子で私に謝り急ぎ足で去って行った。
そこには瀬戸孝介がなんとも気まずそうに残されていた。
私は思わず笑ってしまった。
桐生蒼真はその様子を見て私のもとにやってきた。「そんなに嬉しいんですか?」
私は激しく頷いた。
初めて誰かが瀬戸愛莉と私の間で、私のほうに肩を持ってくれたのだ。
すぐ隣に立っている大物たちに、非常に安心感を覚えた。
それから、私は隅の方に座って、ケーキを食べていた。
すると突然、西園寺隼が私の肩を叩いた。「こいつは誰だと思う?」
私は顔を上げ、目の前に突然現れたイケメンを見て目を輝かせた。
「瀬戸葉月、そのうっとりした目を元に戻しなよ。ベッドの上で僕のこと十分見たでしょ?」
私はその人物が誰なのか分かった。「白鳥玲央、どうしてここにいるの?海外に出張に行ってるはずじゃ?」
彼は手を伸ばし、私の顔をつねった。「もたもたしてたら、どっかの誰かさんに僕の子供が取られそうだからね。
言ってみなよ。君は僕の子供を誰の息子にしようと思ってるの?」
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