私の両親の遺産を愛人親子に使った夫第1話
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夫・春日直伸(かすが なおのぶ)のスマホでナビを見ている時、突然、自動振込完了の通知が画面上に表示された。
すぐに、彼の元カノである白水麻由香(しろうず まゆか)からLINEのメッセージが届いた。
【今月の養育費40万円、ちゃんと受け取ったよ。ありがとう、直伸。あなたがいなかったら、私、本当にどうしようもなかったわ】
一瞬、頭が真っ白になった。
「養育費……?
直伸、『お母さんの治療費』だって?毎月、そう言ってたわよね?!」
直伸の表情が硬直し、慌てて説明し始めた。
「いやッ、そうじゃなくて!!麻由香は本当に大変なんだ――シングルマザーだし、元夫は養育費もまるで払わない……ただ、力になれることならと思ってさ……」
そんなみっともない言い訳を聞きながら、私は思わず、節約のため何年も買い替えていない古い腕時計に触れた。底抜けに冷たいものが、改めて心の中に広がっていくのを感じた。
「月収30万円のあなたが、毎月40万円も出すなんて……一体、どうしてそんなことができるの?そのお金、いったいどこから?」
彼は口を開いたが、声は出てこなかった。沈黙がしばらく続いてから、かろうじて言葉を絞り出した。
「……新居の頭金にするつもりで貯めてたお金、覚えてる?それを少し使ったんだ」
ただ呆然とした。私の両親が数十年も節約してやっと貯めてくれた、新居の頭金を……元カノの子供の養育費につぎ込んでいたの?!
* * *
私・田町洋恵(たまち ひろえ)は夫・春日直伸(かすが なおのぶ)のスマホでナビを見ている時、突然、自動振込完了の通知が画面上に表示された。
すぐに、彼の元カノである白水麻由香(しろうず まゆか)からLINEのメッセージが届いた。
【今月の養育費40万円、ちゃんと受け取ったよ。ありがとう、直伸。あなたがいなかったら、私、本当にどうしようもなかったわ】
一瞬、頭が真っ白になった。
「養育費……?
直伸、『お母さんの治療費』だって?毎月、そう言ってたわよね?!」
直伸の表情が硬直し、慌てて説明し始めた。
「いやッ、そうじゃなくて!!麻由香は本当に大変なんだ――シングルマザーだし、元夫は養育費もまるで払わない……ただ、力になれることならと思ってさ……」
そんなみっともない言い訳を聞きながら、思わず節約のため何年も買い替えていない古い腕時計に触れた。底抜けに冷たいものが、改めて心の中に広がっていくのを感じた。
「月収30万円のあなたが、毎月40万円も出すなんて……一体、どうしてそんなことができるの?そのお金、いったいどこから?」
彼は口を開いたが、声は出てこなかった。沈黙がしばらく続いてから、かろうじて言葉を絞り出した。
「……新居の頭金にするつもりで貯めてたお金、覚えてる?それを少し使ったんだ」
ただ呆然とした。私の両親が数十年も節約してやっと貯めてくれた、新居の頭金を……元カノの子供の養育費につぎ込んでいたの?!
「違うっ!そういうんじゃないんだ……!」
直伸は慌ててこちらの方を向き、説明しようとした。しかしハンドルを握る手が滑り、車は一瞬S字に蛇行した。
後方から鋭いブレーキ音と怒鳴り声が響いた。
直伸は仕方なく路肩に車を止めると、私の肩を抱えて必死に訴えた。
「洋恵、お願い、怒らないで!本当に、君が思ってるようなことじゃないんだ!
麻由香があの男と別れたのは二年前なんだ。相手は本当にダメな奴で、子供は押し付けっぱなしだし、養育費は一銭も出そうとしなくて……母子二人で本当に追い詰められてたんだ。だから……少しでも助けてやらないと、って思っただけなんだ。
誓うよ!本当にそれだけなんだ!」
私は手の中のスマホを握りしめ、声を低くして問いただした。
「いつから始めたの?どうして私に一言も言わなかったの?!」
直伸は青ざめた顔で私を一瞥し、長い沈黙の後、ようやく口を開いた。
「だって……君、麻由香のことが元々好きじゃないし……あの貯金、命みたいに大事にしてるって分かってるよ。だから……言えなかったんだよ。絶対に止められるって分かってた……そうなる前に、こっそりやってしまおうって……」
その言葉で、全てがつながった。そうか、つまり彼は、私を「冷たくて金にがめつい女」だと思い込んでいた。だからこそ、あれほど必死に隠したんだ。私が、元カノの子供を養うのを邪魔するんじゃないかって、心底怖がってたんだ。
怒りを胸の奥で押し殺し、さらに尋ねた。
「いつから連絡を取り合ってたの?養育費を渡し始めたのはいつ?」
直伸はうつむき、しばらくして小さな声で言った。
「……二年前、彼女が離婚してすぐからさ。
彼女も本当に追い詰められてて……頼れる人が他にいなかったんだ。放っておけば、母子共にどうなっていたか分からないだろ?」
私は返事をせず、核心へと切り込んだ。
「毎月『お母さんの治療費』ってのは全部嘘なら、週末『お母さんの世話』に行ってたのも、当然嘘なんだよね?
じゃあ、週末、いったいどこで何をしてたの?正直に言いなさい!」
直伸は顔をこわばらせ、鼻をこすりながら、言葉をにごした。
「……その……副業とかをしてたんだ」
長年の付き合いで、彼が嘘をついているかどうか、一目ですぐに分かる。
これ以上言い訳を聞く気力はないので、彼の手からスマホを奪い、メモ帳アプリを開いた。
彼がメモ帳に日記をつける癖があることは知っている。これまで彼のプライバシーを尊重する思いで、一度も覗いたことはなかった。
だが今、そのメモを開いて、初めて知ったのだ。
彼がどれだけ密かに、元カノとその子供のために時間と労力を捧げてきたかを。
私と息子を置いていった週末は、すべて、元カノとその子供との「家族の時間」に費やされていた。
先週末の日記を開けば、そこにはっきりと書かれている。
彼が麻由香と、その息子・白水太地(しろうず たいち)を連れて、ディズニーリゾートで二日間、笑いながら過ごしていたこと。
その同じ日、私たちの息子・春日佑助(かすが ゆうすけ)は、約束していた父親が授業参観に来てくれなかったことで、午後ずっと泣いていた。
そして私は、ほんの少しの昼食代を節約しようと佑助のお弁当を作っていたその時、包丁で手首を深く切り、右手が二度と動かなくなるかもしれないほどの大怪我を負ってしまったのだ。
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