私のお墓にはお花を一輪置いてほしい第3話
この話は約1660字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
灯は病院へ送られて手当てを受け、車椅子に乗せられて家に帰ってきた。
父と母と兄は交代で灯の看病をし、私の部屋に私がいるかどうかを見に来る者すらいなかった。
翌朝、私はいつも通り学校へ行かなければならなかった。
うつむき加減で教室に入ると、机の上はまたしてもめちゃくちゃに荒らされていた。
ノートは破られ、筆箱はなくなり、水筒の中にはチョークの粉が入れられていた。
私は黙って机の上を片付け、隅の席に座った。
前の席の女子数人がヒソヒソと話し合い、時折こちらを振り返っては、ニヤニヤしている。
灯の席は、真ん中の一番前だ。
今日、母が新しく買った花柄のワンピースを着ていて、机の周りにはクラスメイトがぐるりと集まっている。カップケーキの包み紙がまだ机の上に広げられており、男子数人が彼女に近づいて話しかけていた。
「昨日、お前のお兄ちゃんがタピオカミルクティーを差し入れしてくれたけど、お前んちのお菓子ってマジで美味いよな」
灯は甘えるように、可愛らしく微笑んだ。
灯は、私と血の繋がりがあることを決して認めようとしない。
兄も灯一人だけを守ると公言し、私の名前を口にすることは一度もなかった。
誰も庇ってくれる人がおらず、性格も弱気な私は、一番いじめやすい相手だと全員が思っているのだ。
チャイムが鳴ると同時に、担任の竹内先生が成績表を手に握りしめて教室に入ってきた。
「今回の定期テストの結果が出ました。クラスの一位は今回も夕凪遥さんです。満点でした」
私は立ち上がり、通路を通って教卓へ向かった。
答案を受け取る私の指先は白くなるほど強く握りしめられていた。
満点。
前回と同じ。これまでずっと同じだ。
でも、私が何度一位を取っても、家族は誰も知らない。
答案を持ち帰っても、父は「ふうん」と生返事をするだけ。母は無造作にローテーブルに置き、兄に至っては見ようとすらしない。
だから、いつしか私は答案をカバンから出すのをやめた。彼らが関心すら持たないことで、どうして何度も惨めな思いをしなければならないのだろうか。
それなのに、灯が学年最下位を取ったとき、母は彼女を抱きしめて「灯はまだ小さいんだから、次頑張ればいいのよ」と慰めるのだ。
兄は彼女におもちゃを買ってあげるし、父はアイスクリームを食べに連れて行く。
竹内先生が声をかけた。
「遥さん、どうしたの?顔色が良くないわよ」
口を開きかけた瞬間、胸の奥から生臭い血の味が込み上げ、堪えきれずに俯いて、また大量の血を吐き出した。
今回は違った。血がどす黒いのだ。
教室が、一瞬にして静まり返った。
竹内先生はパニックになり、小走りで近づいて私の肩を支えた。
「動かないで!今すぐお家の人に電話するから!」
彼女はスマホを取り出して電話をかけ、焦った声で言った。
「遥さんの保護者の方でしょうか?お子さんが学校で血を吐きまして、しかもどす黒い血で、かなり酷い状態です!すぐに……」
電話の向こうで何と言われたのか、竹内先生は眉をひそめた。
「顔色もすごく悪いですし、一度学校に来ていただいた方が……本当にいいんですか?分かりました、じゃあ一人で帰宅させます」
電話を切ると、彼女は私をちらりと見て、言いにくそうに口籠もり、最後にはこう告げた。
「ご両親が、自分で歩いて家に帰って休むようにって……」
私は頷き、答案を折りたたんでポケットにしまい、カバンを整理し始めた。
前の席の女子たちは再び集まってヒソヒソ話を始め、灯は俯いて机の引き出しからお菓子を探している。
カバンを背負って出口へ向かい、教室のドアを開けた瞬間、廊下の向こうから歩いてくる三人組が見えた。
母は灯の小さなリュックを持ち、父はカメラを首から下げ、兄はお菓子の袋を提げている。
彼らは私を見ると、ほんの一秒だけ足を止めた。
母は私に向かって微笑みかけた。
「遥、あなたは先に家に帰りなさい。私たちは灯を遊園地へ連れて行くから。今日はこの子の誕生日のお祝いを前倒しでやるのよ」
そう言い残して私の肩をかすめて、教室に入ると、満面の笑みで呼びかけた。
「灯!パパとママから、サプライズよ!」
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