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私たちの絆は、ここに断つ第3話

この話は約1499字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

突然、胸の奥に罪悪感が湧き上がってきた。少し悩んだ末に、彼は長蛇の列ができているカウンターに並び、夕帆の好きなお菓子をいくつか買った。

買い物を終えた彼がふと顔を上げると、どこかで見覚えのある姿がこちらに向かって歩いてくるのが目に入った。自然と口元に微笑みが浮かんだが、すぐに何かがおかしいと気がついた。

服装、体つき、そして近づいてきたときに見えたその顔――夕帆ではない。どう見ても雪華だ。

彼女は恥ずかしそうに微笑みながら彼に近づき、腕を絡ませた。

「夕帆、ちょっと体調悪いみたいで......チケットを譲ってくれたの。さあ、行きましょ」

だが、彼女の言葉を聞いた瞬間、茂仁の顔色が一変した。

「具合が悪い?どこが?」

そう言うなり、彼はすぐに引き返そうとした。

それに気づいた雪華は慌てて彼の腕を引き止め、甘えるように言った。

「ほんの風邪よ、ちょっと休めばすぐ治るって......茂仁、この演目、ずっと前から楽しみにしてたの。一緒に観ようよ!」

彼女の甘く柔らかな声が、不安で乱れた彼の心を落ち着かせた。彼は昔から彼女の頼みを断れないのだ。少しのためらった末に、結局うなずいて、雪華と共に会場へと足を踏み入れた。

彼女の顔には再び笑みが浮かび、道中も彼の腕を引きながら絶え間なく話しかけていた。本番が始まると、雪華は舞台の一場面ごとに感想を述べるほどだった。

だが、かつてなら彼女の言葉に全て応じていた茂仁も、今日は上の空だった。ただ機械的に頷き、時おり適当な相槌を打つばかり。

終演後、彼は一言も発さず、無言のまま彼女を連れて別荘に戻った。

扉を開けると、そこにいたのは病気で寝込んでいるはずの夕帆ではなかった。彼女の頬には赤みが差し、霧吹きを手に花に水をやっていた。

「具合が悪いって言ってたじゃないか?」

茂仁の声は冷たく鋭く、その詰問が彼女を怯ませることはなかった。

「ええ、もうだいぶ良くなったわ」

彼女は手を止めることなく答えた。少し間を置いてから顔を上げ、二人を見た。

「今日は楽しかった?良い時間を過ごせた?」

彼女の様子を見て、茂仁にはわかっていた。彼女は病気なんかではなかったし、チケットを渡したのも自分の意思だったはず。だが、そんな平然な態度で振る舞われると、胸の中に何とも言えない怒りが渦巻いた。

「とても、楽しかった」

歯を食いしばりながらそう言うと、彼は険しい表情をして部屋へと入っていった。

残された夕帆は、彼の態度に戸惑った。好きな人と一緒になれるよう手を尽くしたのに、何を怒ってるのだろう。

そして、すぐそばから不快な声が響いた。

「夕帆、これが『私たちを結びつける』ってこと?まさか、わざとじゃないでしょうね?そんな手で茂仁の気を引こうなんて!いいわ、そっちが諦めないなら、私も遠慮しない!」

こう言った後、雪華は床に倒れ込み、顔を青ざめさせて腹を押さえながら叫び出した。

「痛い......お腹が、すごく痛い!」

玄関を出たばかりの茂仁は、その悲鳴を耳にした瞬間、慌てて引き返してきた。倒れている雪華を抱き上げ、動揺した声を漏らす。

「雪華、どうしたんだ!?」

彼女は彼の腕の中で、涙に濡れた目をこちらに向けた。

「分からない......さっき、夕帆がくれた水を飲んでから、急に......」

「何度言ったら分かる!俺と雪華のことは、もう終わったって!なのに、なんでわざわざ彼女を傷つけるんだ......チケットだって、自分からあげたんじゃないのか?それなのに、なんでこんなことを!」

その目には怒りが燃え上がり、彼は震える声でボディガードに命じた。

「こいつを外に立たせておけ。雪華が許すまでは、絶対に中に入れるな!」

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