私たちの家に幼馴染が住み着いた日、愛が試された第3話
この話は約1553字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
私はこれまでの経緯を包み隠さず彼女に話した。
しかし、静江さんの表情は次第に曇り、慰めるような笑みが完全に消えてしまう。
そのまま黙り込んでソファに座り、眉間にうっすらと影を落とした。
まあ、母親が息子の味方をするのは当然だ。
その場で私を擁護しないのも無理はない。それでも、私だって溜め込んだものを吐き出す相手が必要だった。
彼女は何か言いかけたようだったが、結局何も言わず、かすかに首を振るだけだった。
「何か思うところがあるのなら言ってほしい」
そう思って口を開こうとした瞬間、ちょうど料理が運ばれてきた。
無言のまま静江さんと向かい合い、食卓につく。
けれど、会話が弾むことはなく、重い空気が食事の間ずっと続いた。
どうにも味がしなくて、心の中で「あの時、話すべきじゃなかったかもしれない」と自分を責める。
そして、食事が終わる頃。静江さんはようやく口を開いた。
「和代さんを辞めさせたこと、それは悠真が悪い。でもね、由利......
桃香と悠真は、子供の頃からずっと一緒に育ってきたのよ。
桃香の両親が亡くなったとき、私たちの家に彼女を託したの。それがどれほどの責任かわかる?」
一息ついて、さらに言葉を続ける。
「彼女の病気がわかったとき、正直、私も胸が痛んだ。お父さんもずっと彼女に付き添って海外で治療してきたわね、あなたも知ってるでしょう?
それに、今回のことだって彼女が家にちょっと滞在するだけじゃない......目をつぶってくれない?
彼女、もう時間がほとんど残されていないのよ......」
聞いている間、箸を持つ手がゆっくりと止まった。
さっきまで食べていた料理は、もう何の味もしない。
胸が痛まないと言えば嘘になる。
むしろ彼女には何も言わないでほしかった。無言でいてくれたほうが、よっぽど傷つかないで済んだのに。
唇をきつく結び、心の中の失望が少しずつ麻痺に変わっていくのを感じた。
結局、表情を無理やり取り繕い、乾いた声で答えるしかなかった。
「......わかりました」
食事が終わると、静江さんは「一晩泊まっていけばいいのに」と声をかけてくれたが、私は断り、家へ向かった。
家に帰ると、1階の明かりは全て消えていて、唯一灯っていたのは2階の寝室のランプだけだった。
嫌な予感がして、靴を脱ぐことさえせず、そのまま2階へ駆け上がる。
寝室のドアを勢いよく開けると、ちょうど悠真が手を伸ばしてランプを消そうとしているところだった。
ベッドは視界を遮るように衣装棚の陰になっている。私は一歩ずつ近づきながら、視界が徐々に開けていくのを感じた。
――そして、ついにベッドの全貌が明らかになった瞬間。
聞き覚えのある女性の声が、布団の中からこもったように響いてきた。
「どうしてまだ電気消さないの?」
頭が真っ白になった私は、衝動的に持っていたバッグをベッドに向かって思いっきり投げつけた。
「この私の家で、私のベッドで、なにやってるのよ!」
硬めの素材のバッグはベッドに叩きつけられ、化粧品が中身ごと飛び出した。
ベッドの中からうめき声が上がり、乱れた髪の毛とともに桃香の顔が現れる。
彼女は痛みで顔をしかめながら、小さく訴えた。
「由利さん......お腹に当たった......すごく痛い......」
悠真は怒りも忘れ、慌てて布団をめくり、桃香の様子を確認する。
それから、私に向かって大声を上げた。
「お前、何考えてるんだ!
彼女を傷つけたらどうするつもりだ!命に関わるんだぞ!」
だが、私の怒りは収まらない。周りのものを手当たり次第掴んでは、ベッドの上の桃香に向けて投げつけた。
「どうして私のベッドで寝てるのよ!
さっさと降りなさい!」
その光景に耐えきれなくなった悠真が、ベッドから飛び降り、私のそばまで歩み寄ると――
力いっぱい、私の頬を平手で打った。
「黙れ!」
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