私が結婚してから後悔だなんて、遅くない?第3話
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授賞式の壇上で、司会者が受賞者を発表していた。
数年前、清良が出演したドラマが大ヒットし、主催者側は彼女が今回の最優秀女優賞を受賞するだろうと以前から噂していた。
既に芸能界を去る決意をしていたが、それでも少し興奮していた。
長年の努力が実を結んだのだ。自分の芸能活動に完璧な終止符を打ちたかった。
「最優秀女優賞を受賞されるのは――
佐藤奈々さんです!」
司会者の声は熱気を帯びていたが、発表された名前は予想外のものだった。
全員が一斉に清良の方へ顔を向け、様々な表情を浮かべた。
清良は驚き、顔が自然と曇った。
授賞式の後、彼女は舞台裏へ向かった。
奈々はトロフィーを手に、智也と怜を一人ずつ抱きしめていた。
奈々が顔を向けると、ちょうど清良がこちらへ歩いてくるのが見えた。彼女の目には、勝ち誇った笑みが浮かんだ。
「智也、怜、本当にありがとう!この賞、どうしても欲しかったの!
でも……清良さんが、あなたたちが私を助けてくれたって知ったら、怒っちゃうかな?」
智也は彼女の頭を優しく撫でた。「大丈夫だよ。彼女には、こんな賞なんてなくても困らないだろ」
怜も続けて言った。「それに、俺たちは何もしてないよ。主催者にお前を少し褒めただけだ。お前は実力があるんだから、当然の結果だよ」
清良は、その場に立ち尽くした。まるで雷に打たれたようだった。
そう、智也と怜以外に、誰が賞レースに手を出すことができるだろう?
二人は主催者に軽く褒めただけだと言ったが、主催者は馬鹿ではない。二人が奈々を推していることを知れば、当然受賞者選考に影響が出るだろう。
二人は、清良がどれだけの努力をしてきたかを知っていたはずなのに。
撮影で残った傷跡と、なかなか治らない胃の痛み。これらは、清良のひたむきな情熱を物語っていた。
必死に追い求めて手に入れたものが、こんな風にプレゼントのように扱われるなんて……
智也と怜は、ようやく清良に気づいた。
二人は顔を見合わせ、戸惑いの表情を浮かべた。
智也が先に我に返り、清良に近づいてきた。「清良、説明させてくれ。奈々は井上監督の映画に出たがっていて、この賞がどうしても必要だったんだ……」
怜も横から口を挟んだ。「そうだよ、清良。奈々が今まで苦労してきたのも知ってるだろ。ここは譲ってやってくれよ」
清良は指の関節が白くなるほど、拳を強く握りしめた。深呼吸をして、なんとか冷静さを保とうとした。「私が簡単にここまで来れたと思ってるの?
私がどれだけの努力をしたか、知ってるはずでしょ」
智也と怜の顔に、わずかな罪悪感が浮かんだ。しかしその時、奈々は突然口元を覆って泣き出した。
彼女のまつげはぱちぱちと震え、とてもか弱く見えた。「ごめんなさい、清良さん。全部私のせい。今すぐ主催者に話して、賞を清良さんに譲ってもらうようにするわ……」
智也の顔から罪悪感は消え失せ、声は再び冷たくなった。「清良、いい加減にしろよ。お前には他にもたくさんあるだろ?なんで奈々と取り合わなきゃならないんだ?
早く奈々に謝れ!」
自ら手を組んで奪っておきながら、謝れと言うのか?
清良は、怒りで笑ってしまった。
彼女は言いなりになるような性格ではなかったので、彼らに背を向け、その場を立ち去った。
ほんの僅かだが、背後から怜の声が聞こえた。
自分が芸能界に入って以来、ずっと根気強く、丁寧に励まし、導いてくれた人が、奈々の背中を優しく叩きながら、いつもの穏やかな口調で言っていた。「気にしないで。お前は何も悪くない。この賞はお前のものだ」
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