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私が一番じゃない恋は、もういらない第3話

この話は約1954字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

私が早番の日には、朝6時半に起きて車で送ってくれたし、新作スイーツの開発に失敗したときも、見た目の悪いケーキを一つ残らず食べてくれた。

初めて店の社内コンテストに出たときは、緊張で一睡もできなかった私のために、控室の前で4時間も待っていてくれた。

あの頃の朔は甘いものが苦手だったのに、私が作った甘さたっぷりのイチゴのケーキをきれいに平らげて、こう言ってくれた。

「うちの橘シェフが作るものは、何でもおいしいよ」

だから、朔がだんだん忙しくなっても、仕方がないと思っていた。いつまでも付き合い始めのようにはいかないし、今は仕事が忙しいだけなのだと。

寧々が朔の設計事務所に入ってから、二人はいくつもの案件を一緒に担当するようになった。寧々は頭の回転が速く、専門知識も豊富で、人とのやり取りもうまい。

朔が建築設計を担当し、寧々が内装の詳細設計を進めるうちに、二人の息はどんどん合っていって、食事中も、歩いているときも、私の家に遊びに来たときでさえ、二人は仕事の話ばかりしていた。

最初の頃は、私もわざと会話に割って入っていた。

「私にわからない話は禁止!」

すると、寧々は笑いながら手を挙げるのだ。

「了解!じゃあ、今日は仕事の話をした人が罰ゲームね!」

けれど10分もしないうちに、二人はまた何かの建材をめぐって議論を始める。

口を挟めない私は、仕方なくキッチンへ行ってフルーツを切り、そしてリビングに戻ると、二人はさっき私とした約束なんてすっかり忘れているのが常だった。

ずっと、それが普通なのだと思っていたが、最近になって気づいた。長い間ないがしろにされ続けると、人は自分を後回しにする相手のために、いつの間にか自分から言い訳を考えるようになるのだと。

午後3時、朔からメッセージが来た。

【寧々が退院したよ】

私は返信しなかった。

しばらくして、また連絡が来る。

【夜、マンションに帰ってくるか?】

やっぱり返信しなかった。

朔とは1年以上同棲していて、住んでいるマンションは彼が借りたものだった。

今年の初め、朔はローンを組んで家を購入した。リフォームが終わったら一緒に引っ越そうと言われ、私はこっそりキッチンの寸法を測って、ビルトインオーブンを買おうと考えていた。

でもその夜、仕事が終わった私はそのまま祖母の家へ向かった。

朔から電話がかかってきた。

「いつ帰ってくるんだ?」

「しばらく、おばあちゃんのところに泊まるから」

彼は一瞬、黙り込んだ。

「昨日の夜のことで怒ってるのか?」

「怒ってないよ」

「じゃあ、なんでだよ?」

私は少し考えた。

「ただ、おばあちゃんと一緒にいたくなっただけ」

「好きにしろ」

彼は不機嫌そうな声でそれだけ言うと、電話を切った。

暗くなった画面を見つめていると、やっぱり胸は痛んだけれど、前とは何かが違った。

昔の私なら、彼の声が少し冷たいだけで「自分がわがままだったかな」と反省していたが、今は、ただどっと疲れを感じるだけ。

祖母がフルーツを切ってくれて、私の隣に座る。

「朔くん?あなたたち、もうすぐ結婚するんじゃなかったのかい?」

私はぽかんとした。

「誰がそんなこと言ったの?」

「あなたのお父さんよ。朔くん、マンションを買ったんでしょ?キッチンの内装も、あなたの好みを聞いてくれたって話だけど」

私は何も言えなかった。だって結局、キッチンは私の希望通りにはならなかったから。

翌日は休日で、朔から新しい家へ建材を見に来るように言われた。

新居に着くと、すでに寧々がいた。作業用のパンツをはき、何枚もの色見本を手にしている。その隣には朔が立ち、二人でキッチンの壁を眺めていた。

寧々は私に気づくと、すぐに手を振った。

「綾菜!今ね、朔と話してたんだけど、キッチンの壁を取っ払って、オープンキッチンにするのはどうかなって」

私は朔の方を見た。

「キッチンは独立型のままにするって言ってなかった?」

家を買うとき、私が出した希望はたった一つ。

仕事では毎日バターや生クリームを扱っているけれど、家では食べ慣れた家庭料理を作るのが好きだから、リビングに油や料理のにおいが広がらない独立型のキッチンがいいということ。

朔もその希望を聞き入れてくれたはずなのに、今は図面を見ながら眉を寄せている。

「寧々の言うことも一理あるんだ。広い家じゃないし、壁をなくしたほうが開放感が出るだろ」

寧々は笑顔で私の腕を引っ張った。

「見た目もおしゃれになるし、アイランドキッチンなら綾菜もお菓子を作りやすいでしょ?型を収納できる棚も、壁一面に作ってあげるから」

彼女を見つめているうちに、なんだか無性におかしくなってきた。

ここは私と朔が住むはずの家なのに、タイルから照明、棚の取っ手に至るまで、彼女の方が私よりずっと詳しく把握している。

私は彼女の手から、自分の腕をすっと引き抜いた。

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