真実を知った夫は、愛する女を捨てて私のために復讐した第3話
この話は約1434字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
玲奈の事件は一刻を争う状況で、礼司は彼女のために奔走していた。
だがどれだけ捜しても、私の行方は一向につかめない。
オフィスでは、秘書が書類を抱えたまま、怯えた様子で報告していた。
「被害者遺族側が、急に新しい弁護士をつけました。かなり強硬な姿勢です。相手は決定的な証拠を握っているようで……玲奈さんにはかなり不利な状況です」
「弁護士?」
礼司は鼻で笑った。
「どんな弁護士だろうが、金でどうにでもなる。会う約束を取りつけろ。俺が直接話す」
勝利を確信しているかのような顔で、礼司はカフェへ向かった。
だが向かいの席に座っている男を見た瞬間、その顔色が変わった。
「悠人?なんでお前がここにいるんだ!」
私も少し驚いた。
一ノ瀬悠人(いちのせ ゆうと)は、大学時代の同級生だった。当時、彼は長いこと私に想いを寄せてくれていた。
何度も告白されたが、あの頃の私の心には礼司しかいなかったから、そのたびに断っていた。
もちろんそのことは礼司も知っている。だから昔から、悠人に対してどこか敵意を抱いていた。
一方の悠人は、礼司が来ることを最初から分かっていたらしい。
ゆっくりとコーヒーをかき混ぜながら顔を上げると、口元に皮肉な笑みを浮かべた。
「どうした。そんなに意外か?」
礼司の表情が一気に冷えた。
「いつ帰国した?」
「昨日。この事件にお前が関わってるって聞いて、すぐ飛行機を取った」
悠人はスプーンを置き、鋭い眼差しを礼司へ向けた。
礼司も怯むことなく睨み返す。
「どういう意味だ?」
悠人はかすかに笑った。
「別に。ただ、この裁判だけは絶対に負けるわけにはいかないと思ってるだけだ」
「悠人!何年経っても、まだ俺に嫌がらせするつもりか!」
「嫌がらせ?」
悠人は落ち着いたまま椅子の背にもたれ、首を横に振った。
「勘違いするな。俺はただ、あの二人のために正義を取り戻したいだけだ」
焦っていたせいか、礼司は、悠人が「あの二人」と言ったことにまるで気づかなかった。
礼司は冷笑すると、指先が相手の鼻先に届きそうなほど詰め寄った。
「正義の味方ぶるなよ。どうせ俺に復讐したいだけだろ!」
そう言った直後、何かとんでもないことに気づいたように目を見開く。
「まさか、お前がここまで俺の邪魔をするのって……あのガキがお前の子だからじゃないだろうな?俺を潰して、そのあと美羽と一緒になるつもりか!」
悠人は固まった。しばらく礼司を見つめたまま、何も言わない。
その目に浮かんでいた驚きは、やがて哀れみへと変わり、最後にはあまりの馬鹿馬鹿しさに笑いすら滲んだ。
「礼司……お前、本当にあの子が誰の子か知らないのか?」
礼司は眉をひそめた。
「何の話だ?」
悠人は答えなかった。ただ、すっと立ち上がる。そして去り際に、一言だけ吐き捨てた。
「美羽も、よくお前みたいな男と結婚したな」
そう言い残すと、振り返ることなく店を出ていった。
礼司はその場に立ち尽くしたまま、顔を真っ赤にして悪態をついていた。
「何を気取ってるんだ。誰にも相手にされないくせに。何年も結婚してないのだって、ずっと人の妻に未練があるからだろ!」
私はそばに漂いながら、遠ざかっていく悠人の背中を見た。それから、怒りで歪んだ礼司の顔へ目を向ける。そしてふと思った。
本当にその通りだ。私はどうしてこんな男と結婚したのだろう。
昔は、礼司こそ世界で一番優しい人だと思っていた。
だが実際の彼は、一人の女のために平気で嘘を重ねるし、良心も、道徳も、人として守るべき一線さえも、すべて捨てられる男だった。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
S53729- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。