涙の果てに、幸せは訪れる第3話
この話は約1417字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
夜、またあの恐ろしい夢を見て飛び起きた。全身に冷や汗をかき、涙が止まらなかった。
――あの頃の、生きているのが地獄だった日々。
私が人さらいに売られた先は、山奥の寂れた集落だった。そこで年老いた男に買われ、幼い花嫁として押しつけられた。役目は、その家の頭の弱い息子の世話をすることだった。
その日から、夜明け前に起きて大きなたらい一杯の洗濯物をこなし、豚に餌をやり、畑に出て、戻れば彼に食事を与える。
彼らはやがて、私とその息子を鎖で繋いだ。
昼間は彼に付き添い、村の子どもたちに笑われ、石を投げられても、彼を守らなければならなかった。
もし彼が傷を負えば、その倍の罰が私に返ってきた。
夜は、床で丸くなって眠った。
半年が過ぎた頃。一緒に食べ、一緒に眠るうちに、わずかに情が芽生えた。
そこで、私は彼を騙して鎖を外させ、逃げ出したのだ。
だが、集落の出口に着く前に捕まった。
待っていたのは竹の棒での制裁。二本折れるまで殴られ、全身が血まみれになり、足の骨も折られた。
それでも「息子の世話をさせるため」だけに、治療は受けさせられた。
それで終わりではなかった。私は納屋の隅に鎖で繋がれ、三日間、水も食事も与えられなかった。
飢えで目の前が霞み、家畜の餌ですら羨ましく見えた。
だが私は隅に縛られていたから、一歩も動けず、餌にさえ手を伸ばせなかった。
三日後、彼の兄が現れ、茶碗一杯のご飯を持ってきた。
だがそれは腐り、表面に緑のカビが生え、糸を引くほどになった。
鼻を突く悪臭に、吐き気が込み上げた。
「食えないなら、また三日間餓えとけ」
そう言って顔を押しつけられ、私は涙を流しながら無理やり飲み込んだ。生きたかった。どんなに惨めでも、生きるしかなかった。
彼はそれを見ると興奮して笑い、駆け出していった。
「ははは!俺の勝ちだ!あの馬鹿の嫁は、犬でも食わない腐った飯を平気で食ったぞ!」
勝ち誇る声が遠ざかるのを聞きながら、私はすぐに全部吐いた。
それ以来、私は重い胃の病に苦しむようになった。
仁と出会ってから、彼は私の胃の病気を知り、毎朝早く起きて胃にやさしいお粥を煮ては、玄関先まで運んでくれた。
友人たちは口を揃えて言った。「最高の彼氏じゃない。あんなに愛されて、羨ましい」
けれど私は知らなかった。彼と亜由美の間に、かつて関わりがあったなんて。もし知っていたら、決して彼と付き合うことはなかった。
両親も、兄も、みんな亜由美に奪われた――そんな悪夢を味わった私は、もう二度と、大切な人が亜由美と関わるのを見たくなかったのだ。
けれど妊娠五ヶ月の頃。亜由美が海外から帰国し、すべてが崩れた。二人は初恋同士だったのだ。
その日、仁は初めて取り乱した。赤ちゃんのために何ヶ月も禁煙していたのに、ベランダで一晩中煙草を吸い続けていた。
その姿を見た瞬間、私は悟るべきだった。亜由美の前では、私は必ず負けるのだと。
翌朝、徹夜で目を赤くした仁が、台所で粥を作っていた。私を見ると、笑顔でお粥を差し出してきた。
「紗奈、胃に優しいように作ったから、ちゃんと食べろよ」
一瞬、胸の奥が温かくなった。だが次の瞬間、彼の手に保温容器があるのを見て、血の気が引いた。
仁は慌てて背中に隠した。
「違うんだ、誤解するな。母さんが頼んできたんだ。亜由美が食欲なくて、作ってやれって」
私は乾いた笑みを浮かべた。
「仁……その粥を作っているとき、あなたは誰を思っていたの?妊娠中の妻?それとも、自殺しかねない元カノ?」
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