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消去するモレッティ夫人第1話

この話は約2499字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

シカゴ・アウトフィットのドン――ダンテ・モレッティと結婚して五年。裏社会の人は誰もが知っていた。ダンテが私を、自分の命より重く扱っているということを。

彼は一族の紋章のすぐ下に、私のためにヴァイオリンのタトゥーを彫ってくれた。「消えない忠誠の印だ」って。

……その消えないはずだった印は、彼の愛人から届いた一枚の写真で、あっさり砕けた。

バーテンダーが、ダンテの腕の中で裸のまま、だらしなく横たわっていた。肌には、行為中に乱暴に扱われたような青痣が点々と残っている。

そして彼女は――私のために彫られたヴァイオリンのタトゥーのすぐ横に、勝ち誇ったように自分の名前を書き込んでいた。ダンテは、それを許したのだ。

「ダンテね、私の中にいる時だけ男になれるんだって。ねえ、アレッシア。あんた相手じゃもう勃たないんでしょ?そろそろその席、譲ったら?」

私は返事をしなかった。代わりに一本だけ、ある人に電話をかける。

「新しい身分が欲しい。それと、海外行きの航空券」

* * *

夫の愛人からの挑発は、二か月前に始まった。ベッドの上で絡み合っている写真。彼女の身体に溺れてる、とでも言いたげな生々しい文章。不倫している事実を、毎回これでもかと突きつけてくる。

私はダンテを問い詰めなかった。黙って新しい身分の手配を進めた。そして自分で期限を切る――あと七日。

シカゴ西部の廃倉庫。点滅する電球が、薄い黄色の光を落としていた。

私は分厚い札束をテーブルの向こうへ滑らせ、フラットキャップの男に突き出す。

「新しい身分が必要なの。名前はアヴァ」

だだっ広い空間に、私の声が響き渡る。

男は札を慣れた手つきで弾くように数え、ぱさぱさと乾いた音を立てる。「パスポート、免許証、全部ってことか?」

「全部よ」私は膝の上の革のバッグを握ったまま、短く頷いた。「クレジット履歴付きの口座も」

「倍だな」男が顔を上げる。薄暗い光の中で金歯がきらりと光った。

私は迷わず、もう一束を差し出した。男はそれをジャケットに押し込み、身を乗り出して声を落とす。

「一週間だ……だが忠告しとく。新しいIDを使った瞬間、過去のお前は死んだことになる」低い声が、空気を冷たくした。「モレッティ家の者は、この国のどこにでも潜伏している。痕跡を一つでも残せば、必ず辿り着く」

私は立ち上がり、ヒールでコンクリートを鋭く鳴らした。

「分かってる」

決意はもう、鋼みたいに固まっていた。

……

二十分後。私はプライベートのタトゥーサロンのベッドに横たわっていた。

除去レーザーの甲高い音が、胸の奥の鈍い痛みに不釣り合いなほど響く。鎖骨の鷲の紋章が、少しずつ、確実に消えていく。

熱した鉄棒を何度も押し当てられるように痛い。それでも私は歯を食いしばって、声を出さなかった。

五年間の記憶と、ダンテへの愛情が――ただインクと共に焼け失せていく気がした、それだけだった。

……

夜十一時。リンカーン・パークの屋敷へ戻った。八百万ドルのヴィクトリア朝の大邸宅。結婚祝いに贈られたはずの場所は、今の私には金ピカの檻でしかなかった。

テレビをつけると、シカゴ・トリビューンの「マン・オブ・ザ・イヤー」インタビューの再放送が流れている。

画面の中のダンテは、完璧に整えた黒髪をオールバックにし、深い茶色の瞳でカメラをまっすぐ射抜いていた。生まれつき支配者側の空気が、映像越しでも滲んでいる。

記者が尋ねる。「あなたにとって忠誠とは?」

ダンテはゆっくり、シャツのいちばん上のボタンを外して胸の紋章を見せた。翼を広げた鷹。爪には薔薇と短剣。

「忠誠とはこれだ」低く、引き込むような声。彼は心臓の上のインクを指す。「……それと、これ」

カメラが近寄ると、私ははっきり見えた。紋章のすぐ下に彫られた、繊細なヴァイオリン――私のために入れたものだ。

「妻のアレッシアは才能ある音楽家だ」ダンテは口元に笑みを浮かべ、プラチナの結婚指輪の光る手を軽く上げる。「彼女は俺のために、世界的ヴァイオリニストになる夢を手放した。その犠牲をここに刻んだ。絶対に消えないようにな」

私は鎖骨のガーゼに指を滑らせた。皮膚はまだじくじくして、触れるだけでも痛い。

消えないように?その言葉に、あの写真の記憶が容赦なくぶつかってくる。

……

二か月前。知らない番号から届いたメッセージ。携帯が震え、画像が表示された瞬間――世界が割れた。

写真の中で、金髪のバーテンダー――ダンテの腕の中にいる裸のジェナが写っていた。首筋には新しく付けられたであろうキスマーク。そして肌には熱がこもっていた痕。終わった直後だと、嫌でも分かった。

彼女は長い指で誇らしげにダンテの胸をさしている。私のヴァイオリンの隣。雑にマーカーで描かれた新しい落書き。

「ジェナ」汚い筆記体だった。

ただのマーカー。洗えば落ちる。それでも――ダンテがそれを許したという事実は、刃物みたいに私の心を切り裂いた。

数十枚の写真が続いた。別荘。私たちのお気に入りのレストラン。私の誕生日の日さえ、私が「マフィアファミリーの事業」を進めていたと思っていた時間に、彼は書斎の壁へ別の女を押しつけていた。

そして、あのメッセージ。

【ダンテね、私の中にいる時だけ男になれるんだって。ねえ、アレッシア。あんたじゃもう勃たないんでしょ?そろそろその席、譲ったら?】

……

鍵が回る音がして、私は現在に引き戻された。

ダンテが帰ってきた。大理石の床に足音が響き、こちらへ近づいてくる。

匂いで分かった。安っぽい香水。私が買ったトムフォードじゃない。甘ったるくてフローラル系の、鼻につくほど吐き気のする匂い。そこにタバコとウォッカの臭いまで混ざっている。

白いシャツは少し乱れ、ネクタイも緩い。首には、はっきり歯形が残っていた。

「アレッシア?まだ起きてたのか」

いつもみたいに抱きしめようとして、彼が手を伸ばす。胃の奥から嫌悪がせり上がった。

私は手を上げて、彼を止めた。

ダンテは怪訝そうに眉を寄せる。次の瞬間、視線が私の鎖骨へ落ちた。白いガーゼ――モレッティの紋章があった場所。

「アレッシア」

声が落ちる。低く、危険な温度を帯びていく。

「……タトゥーはどうした?」

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