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消えた温もり、戻らぬ日々第3話

この話は約2621字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

梨央の口調は穏やかだった。「食べた人が片付けるのよ。これからはあなたたちの世話はしない。自分のことは自分で責任を持ってちょうだい」

時哉は眉間に深いしわを寄せ、非難するような目を向けた。「君は仕事をしていない。専業主婦としての本分は家族の面倒を見ることだ」

悠樹はすでに怒りで叫び出していた。「自分で片付ければいいだろ!ママは仕事もしてないくせに怠け者だ!パパはもうすぐママと別れて、結衣さんと一緒になるんだ!」

拓海も賛成した。「そうだよ!結衣さんは綺麗で優しくてダンスもできるんだ。彼女が僕たちの新しいママになったら、あなたは誰にも相手にされなくなる。あなたがおばあさんになっても、僕たちはお見舞いにも行かないし、面倒も見てやらないからな!」

二人は捨て台詞を吐くと、怒って階下へ駆け下りていった。するとすぐに皿の割れる音と悲鳴が聞こえてきた。

梨央は眉ひとつ動かさず、その表情は凍りついたかのように冷ややかだった。

時哉は梨央を淡々と一瞥した。その目は理不尽に駄々をこねる他人を見るかのようだ。

「梨央、君は母親であり、妻なんだ。子供じゃない」

そう言うと、時哉は着替えを手に取り、踵を返した。「プロジェクトが立て込んでるんだ。二、三日は戻らない」

梨央は時哉が去っていく背中を見つめ、階下の騒音を聞きながらも、ついにこらえきれず、涙が溢れてきた。

ドア枠を掴むその指が白くなるほど力を込めたが、最後は力任せにドアを叩きつけた。

本分ですって? 笑わせないで。

母親だの妻だの、もうどうでもいい。これからは、私は私自身でしかないのだから!

翌朝、梨央は市役所へ行き、離婚届を提出した。

「書類に不備はありませんね。一週間後に、離婚届受理証明書を受け取りに来てください」

梨央は笑顔でお礼を言うと、そのまま空港へ向かい、ここを出る航空券を購入した。

その日から、梨央は家事を一切やめた。

朝の五時に起きて、豪華な朝食を作ることはもうなかった。

これに対して、悠樹と拓海は大喜びで、自分たちのお小遣いを握りしめて意気揚々と家を飛び出していった。

「誰がママの作ったものなんて食べたいかよ。とっくに飽きてたんだ!」

梨央はもう、二人に宿題をするよう促すことも、彼らの服を洗濯することも、おもちゃを片付けることもしなかった。

家はあっという間に散らかり放題になった。汚れた服が山積みになり、床はおもちゃだらけ。学校の先生からは子供たちの学習態度について、ひっきりなしに電話がかかってきた。

梨央は電話線を抜いた。

三日後、梨央と連絡が取れない学校の先生は時哉の研究室に電話をかけた。

時哉は悠樹と拓海を連れて帰宅し、ロッキングチェアに丸まって本を読んでいる梨央を見て、かつてないほど険しい表情になった。

「悠樹と拓海が腐ったものを食べて胃腸炎になった。君は母親として何をしているんだ?

洗濯もせず、食事も作らず、最低限の生活環境すら保障できないとは。梨央、一体何のつもりだ?」

梨央は静かに本を閉じた。「何のつもりでもないわ。この前言った通りよ。自分のことは自分でして、って」

「彼らはまだ十歳だぞ!」時哉は眉をひそめ、冷たく責めるような目で梨央を見た。

「もう十歳よ。三歳じゃない。自分の身の回りのことはできるわ」

梨央は前世のことを思い出した。介護医療院に入る前、梨央は毎日、まだ暗いうちから起きていた。

相良家の三人の男たちは、朝食の好みもそれぞれ違う。朝食を準備するだけで、少なくとも一時間はかかっていた。

家事はいつも梨央が引き受け、家は常に清潔で整然としていた。

だが、その見返りは何だった?

見返りは彼らから無視され軽蔑されることだった。そして、交通事故で足が不自由になると介護医療院に一方的に放り込まれ、孤独な最期を迎えるという結末だった。

悠樹が目に涙をためて怒鳴った。「ママ、ひどいよ!ママは母親失格だ!」

「そうだ!」拓海が時哉にまとわりついた。「パパ、結衣さんにママになってほしい!彼女なら、きっと世界で一番のママになるよ!」

時哉は応じなかった。彼の視線は梨央に固定されたまま、彼女が折れるのを待っているかのようだ。

梨央はただ唇の端を上げて微笑んだ。「じゃあ、彼女にママになってもらえばいいじゃない。私は構わないわ」

空気が一瞬にして凍りついた。

時哉の顔が険しくなった。「梨央、自分が何を言っているのか、わかっているのか?」

「わかってるわ」梨央は深く息を吸い込み、離婚のことを切り出そうとした。その時、玄関のドアをノックする音が響いた。

結衣の泣きそうな声がした。「時哉、いる?」

三人の男たちは一斉に表情を変え、足早に玄関へ向かった。

結衣は家に入るなり、時哉の胸に飛び込み、悲痛に泣きじゃくった。「時哉、母が亡くなる前に残してくれたブレスレットが見つからないの。ここ数日行ったところは全部探したんだけど、まだ探していないのは梨央さんの部屋だけで……」

梨央は眉をひそめた。「私の部屋?」

結衣は頷いた。「あの日、お手洗いをお借りした時、それを外したの。ちょっと見させてもらえないかしら……」

「早く行こう、早く行こう!」悠樹と拓海が我先にと結衣の手を引いた。「結衣さん、泣かないで。僕たちが見つけてあげる。絶対見つかるよ!」

二人は真っ先に部屋に飛び込み、あちこちを引っ掻き回し始めた。あっという間に、部屋はめちゃくちゃに荒らされていった。

時哉はただ見ているだけで、止める気配はなかった。

「やめて!」結衣が三つ目の写真立てを壊した時、梨央はついに耐えきれず、割って入った。

結衣が怯えたような表情で振り返った。「ご、ごめんなさい、梨央さん。わざとじゃなくて、私、ただ焦っていて……」

悠樹が宝物を守る小動物のように結衣の前に立ちはだかった。「結衣さんをいじめるな!」

梨央はふとある光景を思い出した。

三歳の悠樹と拓海が我先に梨央の膝に這い上がり、その胸に顔をうずめて大声で叫んでいた。「大きくなったら、僕たちがずっとママを守るんだ!」

拓海も結衣の前に立った。「ママ、何かやましいことがあるから、結衣さんに探させないんだろ!」

梨央は喉が詰まった。

梨央は拳を握りしめ、その声は怒りと屈辱に張り詰めていた。「あなたたちは私が盗んだと思ってるの?」

「あった!」

結衣が引き出しの中から、ブレスレットを取り出した。嬉しさのあまり泣き出していた。「これよ!」

梨央は悠樹と拓海に強く突き飛ばされ、よろめいた。

「ママは泥棒だ!」

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