母の命で娘を取り戻した第2話
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綿音はとてもおとなしく、気も小さい。紅香と俺が許可しない限り、見知らぬ場所へ自分から行くはずがない。
しかし、防犯カメラには、彼女が何か馴染みのあるものを見つけたかのように手を振り、笑顔でカメラの視界から走り去る様子が映っていた。
知り合いを探し回ったが手がかりはなく、警察に通報しようとしたところ、マンションの管理人から一通の手紙が渡された。
その手紙には、こう書かれていた。
【死体を見たいなら、警察に通報してみろ】
その夜、管理人からビデオも手渡された。
背景は廃墟となったコンクリートビルだった。
綿音は角に縮こまり、服は汚れ、手足はガムテープで縛られ、口には布が詰め込まれている。それ以上の詳細は映っていない。
犯人は姿を見せず、声を変えた冷酷で不気味な声で要求を伝えた。
二千万円。
そして命の交換。
二千万円は何とかかき集めることができる。
いや、四千万円でも、八千万円でも、家財を売り払い、借金を重ね、高利貸しにまで手を出してでも用意するだろう。
だが、この命はどうすれば――
警察に通報するしかない。
たった三つのボタンを押すだけなのに、冷や汗が全身を伝い流れた。指先には見えない大きな重圧がのしかかり、発信ボタンの上で固まったまま動けなかった。
そのとき、スマホの画面が先に変わった。
「不明」と表示された。
心臓が一瞬で跳ね上がり、爆発しそうなほど恐怖が押し寄せた。震える指で画面をスワイプし、電話を取った。
耳に当てると、向こう側は死のように静まり返っていた。
自分の荒い息遣いだけが、まるで壊れた風箱のように耳に響き渡っていた。
瞬時に理解した。
これは犯人だ。
俺たちを監視している。俺が通報しようとしていることを察知し、警告の電話をかけてきたのだ。
心の天秤が一気に傾き、後悔の念が押し寄せた。
もし綿音に何かあったら......
彼女はその場にひざまずき、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必死で何を言っているのか分からない言葉を繰り返して懇願していた。
彼女はその場にひざまずき、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、訳のわからない言葉で懇願していた。
「警察には通報しません!絶対に通報しませんから!
お願いだから綿音を傷つけないで。あの子はまだ小さいの......
人を殺したいなら、私を殺して!私を殺していいから、娘だけは助けてください!」
俺が近寄ったとき、彼女は茫然としながら電話を置いていた。
電話はすでに切れていた。
俺は彼女を抱きしめ、自分の低く掠れた声が耳に届いた。
「分かった。母さんに頼むよ......
綿音は無事に戻ってくる......」
そうだ。
綿音に何かが起きるわけにはいかない。
それに、母さんはきっと分かってくれる。
母さんは俺のことを世界で一番愛してくれているのだから。
昔、俺には兄がいた。十歳の時、目を離した隙に川で溺れ死んだ。引き上げられた兄は、膨れ上がった異様な姿になっていた。
母さんは三日間、何も食べず、何も飲まず、部屋に閉じこもった。何度も毒薬を飲もうとした。
その時、俺は部屋の外で泣き叫びながら母さんを呼んだ。喉から血が出るほど呼び続け、ようやく母さんを死の淵から引き戻した。
それ以来、母さんは兄に注いでいた愛情を百倍、千倍にもして俺に注いでくれた。
俺を宝物のように大事にしてくれた。
事細かに、あらゆる面で。
そのため、俺にとって兄が亡くなった悲しみはごく短期間で終わった。それよりも、母さんの愛情を独り占めできる喜びの方が大きかった。
しかし、思春期に入ると、その細やかすぎる愛情は檻のように俺を締め付け、息苦しくなっていった。
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