死んだはずの夫が浮気した第2話
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中島葵の誕生パーティー、兼ねての婚約披露宴は、中島グループ傘下のセブンスターホテルで行われた。街の名だたる名士が集う華やかな会場だった。
招待状のない私は、中に入ることすらできなかった。
ホテルの前で昼から夜まで立ち続けた。冷たい風がコートを貫き、手足はかじかんで感覚がなくなっていた。
夜九時、パーティーも終盤を迎え、賓客たちが帰り始める頃になってようやく、雑踏の中に、あの忘れられない姿を見つけた。
岳はオーダーメイドのスーツに身を包み、背筋をぴんと伸ばし、髪もきちんと整えられている。
葵が彼の腕をしっかりと抱き、嬉しそうに笑っていた。
彼らが賓客に挨拶を交わす様子は、上流階級特有の余裕と気品に満ちていた。
これはもう、白いシャツを着て台所に立ち、私のために料理を作ってくれていた岳ではなかった。
私の岳は、笑うと目尻に優しい皺が寄り、「詩織」と穏やかに呼んでくれた。
今、葵が「辰雄さん」と呼ぶこの人は、別人だ。
高橋辰雄(たかはし たつお)。
名前さえ変えてしまった。
警備員の隙を突いて、私は走り寄り、彼の腕を掴んだ。
「岳」
私の声は大きくはなかったが、喧噪の中に鋭く響いた。
周囲の視線が一斉に私たちに注がれた。
彼が振り向いた。私を見るその顔には微動だにせず、目は他人を見るように冷たかった。
「人違いですか?」
葵が嫌そうに眉をひそめ、ウェットティッシュで私が触れた彼の袖口を拭い始めた。
「あなた何者?警備員!こっち来てよ!」
私は彼をじっと見つめ、顔のわずかな変化を必死で探った。
「私を見てよ、岳。本当に私のこと分からないの?
詩織よ!私たちの家も、娘のことも、全部忘れたの!?」
私はほとんど叫びながら、全身の力を込めて訴えた。
彼の瞳が、ほんの一瞬、かすかに動いたように見えた。
だが、それだけだった。
彼はすぐに平静な表情に戻り、口元にはむしろ軽蔑の笑みさえ浮かべた。
「詩織?知らないな……もし俺には娘がいるなら」
彼は傍らの葵を見やり、声をわざと柔らかくした。「きっと葵との子どもだね」
頭の中で、何かが砕ける音がした。
警備員が駆け寄り、乱暴に私の腕を掴んで引き離そうとする。私は引きずられるように後ずさりしたが、視線だけは彼から離さなかった。
葵が爪先立ちになって、彼の唇に誇らしげなキスをした。
彼は拒絶しなかった。
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