果たされない挙式第3話
この話は約1321字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
その夜、初姫のSNSを見ていたら、新しい投稿が目に入った。
ライブフォトには、キャンドルに照らされたステーキがおしゃれに盛り付けられていて、雰囲気たっぷりだ。
キャプション【ステーキが硬くて切れなくて困ってたら、先輩が助けてくれました】
中から、確かに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
間違いない、あれは蓮の声だ。
すぐに、初姫はもう一つ投稿をした。
ネイルを施した指でグラス瓶入りのキャンディを抱え、感嘆の声をあげている様子が捉えられている。
キャプション【わぁ、先輩からのプレゼント、ありがとう!】
このキャンディのブランドは、かつて値段を見て諦めたあの高級なものだとわかった。
何年か前の私の誕生日のことだ。
蓮と街を歩いていた時、ふとあのキャンディが目に入ったが、値段を見て諦めたのを覚えている。
その時、蓮は私の顔を両手で包み、いつか必ず買ってあげると誓ったように言った。
なのに今、その約束は別の女の子のもとで果たされている。
私はその投稿を繰り返し再生した。
トイレから出てきた蓮は、ライブフォトから流れる声に気づくと、顔色を曇らせた。
彼は私の携帯を奪い取り、枕元に放り投げた。
「今日お前の態度で初姫が怖がったから、謝りも兼ねて食事に誘っただけだ。
キャンディなんて大したものじゃない。本来はお前に買うつもりだったが、ダイエット中だと言っていたから、買っても無駄だと思ってな」
ダイエット?
そんなことを言った覚えはない。
だが、私は騒ぎもせず、問い詰めもせずに、携帯をベッドサイドテーブルに置いて充電を始めた。
そして笑って言った。
「別にいいよ。元々このキャンディは好きじゃなかったし。気を使ってくれてありがとうね。もし食べてたら、今日は確実に七八キロ太ってたとこだったわ」
蓮はこの言葉にどこか違和感を覚えたようだが、私の表情からは何も読み取れない。
最後に、彼はベッドに片膝をつき、私の肩を抱いた。
「遥、長い間デートしてないが、明後日、食事と映画に行かないか?
古い服捨てたって言ってたよな?新しいのを買ってやる。
それと結婚の件も、前から話してたよな?俺が忙しすぎて……今度こそ指輪を買ってやる。いいか?」
結婚なんて、五年前から言い続けてきた空虚な約束だ。私の心の中ではもう笑い話でしかない。
実家に帰るまであと四日間。
これ以上蓮と関わり合いになるつもりはない。
はっきりとは承諾せず、「時間ができたらね」と曖昧に返した。
蓮は言い淀んだ。
私はさっとベッドに入り、布団をかぶって、照明を消した。
「寝よう、もう遅いから」
家の中の物が少しずつ消えていっている。
蓮もついにその違和感に気づいたようだ。
彼は化粧台の上ががらんと何もないのを見て、慌てたような表情を浮かべた。
「遥、お前の物はどこに行った?」
私は淡々と説明した。「もうすぐバーゲンシーズンだし、新しいのを買うために場所を空けてるの」
蓮はまたそれを信じた。
彼は私の隣に横になり、私の布団に入ろうとしてきた。
「遥、明日デートしよう。レストランを予約するから、その後迎えに来る」
彼の行動にますます居心地の悪さを感じ、私は少しだけ横にずれた。
「わかった」
「だから、くっついてこないで。それ以上寄ってきたら、私が落ちちゃうから」
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