未来からの手紙、消えた悲劇第3話
この話は約1732字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
同じ女の子として、美希に対して悪意があったわけではない。彼女の境遇には同情している。
けれど、私は負けたくない。
あの日、放課後のチャイムが鳴ると同時に、私は予感めいたものを感じて、卓に早く帰ろうと急かした。
教室に残っているのは、私たち三人だけ。私と卓と美希。
私と卓が教室の入り口まで来たとき、突然、美希が彼を呼び止めた。
「ま……待ってください」
卓が振り返った。「どうしたんだい、泉田さん?」
美希は守ってあげたくなるような哀れな表情をしており、もつれたように柔らかい前髪が、顔の輪郭を柔らかくぼかし、奥ゆかしい目元をのぞかせている。
彼女は申請書を握りしめ、緊張した様子で言った。「い、委員長。いくつか分からないところがあって、教えてくれますか?」
卓はすぐにその依頼を引き受けた。
「萌々香、先に帰っていていい。泉田さん、困ってるみたいだから。困った時はお互い様だろう?」
「卓……」胸がざわつき、私は止めようとした。
けれど、彼は私の言葉を待たずに美希と教室へ戻り、机を並べて座って小声で話し始めた。
――明日じゃいけない理由が、どこにあるというの?
私は納得のいかない思いで卓を見つめた。
彼が私を一人で帰らせるのは、これが初めてだ。
いつの間にか、あの女が再び宙に姿を現した。
「ほら、彼女が来たよ。
これから毎日、あなたと卓との絆が試されることになる。
諦めなさい。あなたは彼女には勝てないわ」
私は歯を食いしばり、低く罵った。
「消えて。これは彼が学級委員としての役割を果たしてるだけよ。
彼はただ優しすぎるだけ。誰にでも親切にできるというのは、私の目に狂いがなかった証拠よ」
「好きにすればいいわ」
女は冷ややかに口角を上げると、空気の中へと消えていった。
……
たった一枚の申請書を書くのに、彼らは一週間もかけた。
卓は毎日放課後に残って美希を手伝い、二人は楽しそうに話したり笑ったりしている。
美希には芯の強さがあり、まるで泥中の蓮のようだ。
卓は彼女に惹かれていき、何度も私の前で彼女の名前を口にするようになった。
「美希を見てると、世の中にはこんなに苦労してる女の子がいるんだって初めて気づかされる」
私が最近公開された映画の話をしても、土日に開催される画展の話をしても、彼の反応はいつも薄い。
「萌々香、そういう話は現実離れしてる。僕たちはもっと現実の苦しみに目を向けるべきだ。
美希はご飯も満足に食べられず、生活のために必死なんだ。画展なんて見に行く余裕があると思うかい?」
事あるごとに、彼は強引に話題を「美希がいかに可哀想で、いかに苦労しているか」という内容にすり替えた。
まるで、私の豊かさが一つの罪であるかのように。美希の苦難に寄り添わない私を、冷酷で世間知らずだと言わんばかりだ。
私は自分自身を疑い始めた。
――本当に私がお嬢様育ちで、わがままなだけなのだろうか?本当はもっと美希のことを気遣うべきなのだろうか?
深夜、布団の中で人知れず涙を拭っていると、あの女が枕元に浮かんでいる。
「萌々香、もう彼を庇うのはやめなさい。
彼はあなたを洗脳し、モラハラを行い、べき論で縛りつけてるのよ。
あなたのプライドを少しずつ削り取り、『自分は彼の気高さにふさわしくない』と思い込ませようとしてるのよ」
私は耳を強く塞ぎ、彼女を見ることさえ拒んだ。
「信じない!卓はそんな人じゃない!
十何年も一緒に過ごしてきた私たちの絆が、たった半月前に現れた女に負けるはずがないわ!」
彼女が間違っていることを証明してみせる。
私だけを見つめていた卓を、必ず取り戻してみせる。
土日に学校の行事で郊外へ登山に行くことになった。
私はわざわざ早起きして、卓の大好物であるサンドイッチを丹精込めて作った。
美希さえいなければ、私たちはきっと元の関係に戻れるはずだと、私は思った。
けれど集合場所に着いた瞬間、心は凍りついた。美希もそこにいるのだ。
卓は彼女の前にしゃがみ込み、ほどけた靴紐をごく自然な動作で結び直してあげている。
あまりにも親密で、あまりにも当たり前のように。
私は深呼吸をして、無理やり笑顔を作りながら歩み寄った。
「卓、朝ごはんは食べた?手作りのサンドイッチを持ってきたよ」
卓は立ち上がり、手の汚れを無造作に払った。
「あ、まだだ」
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R68343- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。