未来からの手紙、消えた悲劇第2話
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あれが偽りであることを証明するために。
卓が変わらないことを証明するために。
放課後、私はわざとグラウンドの階段に座り、足を揺らしながら彼に甘えてみた。
「卓、隣町にあるお店のたこ焼きが食べたい」
隣町は学校から通りを三つ隔てた先にあり、あのお店にはいつも長蛇の列ができている。
けれど、卓は文句ひとつ言わず、自分のカバンを私に預けると、愛おしそうに私の頭を撫でた。
「ここで座って待ってろ。すぐに買ってきてやるからな!最高のやつを食べさせてやる」
彼は飛ぶような速さで駆け出していった。風になびく制服の裾と、そのひたむきな背中を見つめていると、目頭が熱くなった。
40分後、卓は汗だくで戻ってきた。
紙箱を大事そうに抱え、中から一つ取り出すと、丁寧に私の口元に差し出した。
「ほら、食べて。冷めないようにずっと懐に入れて持ってきたんだ」
たこ焼きの皮がパリッと香ばしく焼き上がり、湯気が立ち上っている。
彼は私の褒め言葉を待つかのように、少し照れくさそうに笑った。
口に含んだたこ焼きの美味しさが、じわりと広がっていった。
胸の奥で支えていた不安が、ようやく少しだけ和らいだ。
私は顔を背け、宙に浮かぶ「私」に向かって勝ち誇ったように言った。
「見た?彼は私のために三つも通りを越えて走ってくれたのよ。
私が食べたいと言えば、彼は一度も面倒くさがったことがないし、わがままだなんて思ったこともないわ」
女は黙って私を見つめていたが、やがて小さくため息をついた。
「萌々香、当時のあなたも、そうやって自分に言い聞かせてたのよ。
その後、彼があなたの誕生日会を放り出して、狂ったように泉田を探しに行った時でさえ、あなたは自分に言い聞かせ続けてた。『彼はただ人を助けたいだけで、根は優しい人なんだ』って」
私は苛立ちを感じながら、彼女の言葉を遮った。
「黙って。あなたは今の私の幸せに嫉妬してるだけよ。
卓は言ったわ。一生、私だけを大切にするって。彼は誓ったのよ」
女は私の目の前まで降りてきた。
「それなら、賭けをしましょう。期間は一ヶ月。
もしこの一ヶ月の間に、彼の心がわずかでも揺らいだなら、あなたは私の言う通りに彼と別れなさい」
私は手に持っていた楊枝を、ゴミ箱に叩きつけるように捨てた。
「いいわ、受けて立つ!その代わり、あなたが負けたらさっさと消えて。二度と不吉なことを言わないで!」
翌日、担任の先生がある女子生徒を連れて教室に入ってきた。
「転校生の泉田美希さんです。みんな、仲良くしてくださいね」
教壇に立つ美希はうつむき、緊張した様子で指先をもじもじと動かしている。
色あせて着古された制服に、靴の縁は剥がれかけている。その姿からは、貧しさと戸惑いが伝わってきた。
学級委員を務める卓は、クラス全員の状況を把握している。
彼は担任の先生から、美希の家が貧しく、多額の借金を抱えていることを聞かされた。さらに、彼女の学費を工面するために、父親が借金取りに暴行されかけたことまで。
事情を知った卓は、彼女のために学校の奨学金を申請することを決意した。
「萌々香、あの子がどれほど苦労してるか、想像もつかない。
女の子一人であんなに重いものを背負うなんて、辛すぎる。
学級委員として知ってしまった以上、見過ごすわけにはいかないだろう?助けられるなら助けるべきだ。そう思うだろ?」
放課後、卓は美希の机に奨学金の申請書を置いた。彼女のプライドを傷つけないよう、あえて休み時間で人が少ないタイミングを選んで。
「泉田さん、これに必要なことを記入して。わからないことがあれば、いつでも僕に聞いてくれ」
二列離れた席から、美希が顔を真っ赤にしているのが見えた。
彼女は蚊の鳴くような声で答えた。「ありがとうございます……委員長」
卓は爽やかに笑った。「いいんだ。僕の役割だから」
その日一日、美希は机にかじりつくようにして申請書を書き、時折、私たちの席をそっと振り返っている。
わかっている。彼女は卓を見ているのだ。
卓がその視線に気づいて目を向けると、彼女は慌てて顔を伏せ、耳たぶまで真っ赤に染まった。
卓はそれを見て、ふっと微笑んだ。
「ほら、助けの手を差し伸べることには意味があるんだ。泉田さんも来た日よりずっと明るくなった。少なくとも、人の目を見られるようになったから」
私は唇を噛み締め、何も言わなかった。
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