月のように、風のように第2話
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「詩織さん、はじめまして。私は誠の妻だ。この3年間、海外に留学してたの。やっと帰ってきたわ」
鈴木明子(すずき あきこ)は私に手を差し出した。
一見、親切そうに見えるけど、言葉の端々に『私が本妻よ』アピールが散りばめられてる。
私が誠の暇つぶしのおもちゃでしかなかったことを悟った。彼女が戻ってきた今、おもちゃは捨てられるのだ。
「詩織さん、もうお帰りになるの?もしそうなら嬉しい。今晩からここに引っ越したいので」
明子は私のスーツケースにわざとらしく足を引っかけた。
スーツケースの中から、大量の写真や小物があふれ出た。
明子は小さなシンプルな指輪を拾い上げ、誠に視線を向けた。
「誠、これって、あなたが私に作ってくれた指輪よね?あの時は地味すぎて気に入らなかったから、あなたは別の指輪を作ってくれたね?」
明子は口元を手で押さえるようにして笑っていた。
彼女の右手の薬指に立派な指輪がはめられているのに気づいた。
私の指輪とは違い、彼女の指輪は凝ったデザインで精巧な作りだった。
この指輪は、誠と付き合って初めての誕生日に彼からもらったものだ。ずっと大切にしていて、使うのがもったいなくてドレッサーにしまっておいたのに、まさか、誰かのいらないものだった。
自分がバカみたいで、情けなかった。明子がケラケラ笑っているのが、本当に辛かった。
誠は最初から最後まで一言も発せず、明子を見つめる瞳には、私に向けられたことのない深い愛情と優しさが宿っていた。
「もういい、帰る」
屈辱に震える声で、私は怒鳴った。
スーツケースに荷物を詰め込み、ポケットから家の鍵を取り出してテーブルに置き、玄関へ向かった。
「詩織さん、帰国したばかりなんだけど、一緒に服を買いに行ってくれない?あなた着てる服、私の好きなデザインなの」
明子は私の前に立ち塞がり、嫉妬の目で私の服を見た。
視線を落とすと、このコートは誠とお揃いで買ったものだった。ただ、今日は彼が着ていないだけだ。
「悪いけど、帰る」
明子は私の腕を掴んだまま離さない。そして、潤んだ瞳で私を見つめながら、スーツケースを握りしめていた。
「詩織さん、友達がいないから、あなたに付き合ってほしかったの。
怒らないで。さっきのは冗談よ。ごめん!」
そう言って彼女は急に手を離した。私のスーツケースが彼女の足を轢いた。
「詩織、ひどいじゃないか!」
誠は怒り狂って駆け寄ってきて私を突き飛ばし、しゃがみ込んで明子を抱き上げ、ソファに座らせた。そして、彼女の足を優しく吹いていた。
私の背中はドアに強く打ちつけられ、涙が溢れ出た。
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