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暁を失えど黄昏はまだ間に合う第3話

この話は約1220字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

電話を切った後、私はがらんとした部屋で呆然と座っていた。

雅紀は一晩中帰ってこなかった。私も一睡もできなかった。この十年の恋もとうとう終わらせる時が来たのだ。

翌朝、私は新居へ向かった。

今住んでいる家の他に、雅紀は結婚後に住む新居も用意していた。内装工事はとっくに終わり、私と雅紀の多くの物も運び込まれていた。

もともとは結婚式の後に引っ越す予定だったが、今となってはその必要もなくなったようだ。

鍵を持ってドアを開けると、中から聞き覚えのある甘えた声が聞こえてきた。

「卵は嫌い。食べたくない」

「いい子だから。妊娠してるんだから、栄養をつけないと」

少し離れた食卓で、雅紀が優しい口調で莉奈に朝食を食べるよう促していた。

私が入ってきたのに気づき、二人は固まった。

「詩帆さん、どうしてここにいるの?朝ごはん食べた?よかったら一緒にどう?雅紀、すっごく料理上手なんだよ」

莉奈はにこやかに笑った。

食卓に並んだ朝食に目をやる。随分と豪華なものだ。

十年付き合ってきて、雅紀は料理が嫌いだと言い、一度もキッチンに立ったことがなかった。私が病気の時に持ってきてくれたお粥でさえ、出前だった。

今となってはっきり分かる。ただ、私のためにキッチンに立ちたくなかっただけなのだ。

私は手を振って断り、黙々と自分の荷物をまとめ始めた。しかし莉奈は私が彼女を追い出そうとしていると勘違いしたようだ。

「詩帆さん、誤かいしないで。私と雅紀もうすぐ結婚式を挙げるでしょ?だから先に住み始めて、準備を進めようと思ったの。

詩帆さんが嫌なら、私、すぐに出て行くから。

全部私のせいだから。詩帆さん、雅紀のこと怒らないであげて……」

私は冷たい顔で返事をしなかった。莉奈のその芝居にはもう飽き飽きしていた。けれど、世の中にはそれにまんまと騙される男がいる。

気まずい空気が流れたのを見て、雅紀が口を開いた。

「俺が莉奈にここに住むように言ったんだ。もうすぐ結婚式だし、ここが莉奈の新居でもある。

白鳥詩帆(しらとり しほ)、君はもう納得したんじゃなかったのか?どうしてまた理不尽なことをするのか?」

私は呆れて笑ってしまった。

雅紀の言う通りだ。この二人こそが法的に認められた夫婦で、ここが彼らの新居なのだ。

まさか十年も愛し合った結果、自分が不倫相手になるなんて。

「安心して。莉奈を追い出しに来たわけじゃないから。

あなたたち、結婚式を挙げるんでしょう?私の荷物が新居にあるのはさすがにまずいじゃない。今日はそれを取りに来ただけよ」

その言葉を聞いて、雅紀は少し気まずそうだった。

私がこれほど協力的だと、かえって自分の器の小ささが際立ってしまうようだ。

「全部持っていく必要はない。まとめて片付けておけばいい。また運ぶのも面倒だろう」

「そうだよ、詩帆さん。まとめて片付けておけばいいの。手伝うよ」

莉奈もそう相槌を打ちながら、手伝おうと近づいてきた。

断ろうとした瞬間、莉奈が悪戯っぽく微笑むのが見えた。

「あっ……」

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