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春の終わりに、別れを告げよう第2話

この話は約1647字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

朝六時、千桜は起きて化粧をし、適当にパンを一つ手に取って出勤した。

「社長と結婚するんじゃなかったの?どうしてまだ会社に来てるの?」

「知らなかったの?小林さんが帰国したんだよ!」

「昨日、小林さんがちょっと転んだだけで、社長は婚約パーティーから逃げ出したんだ。やっぱり庶民って玉の輿に乗る運がないな」

そんな冷ややかな嘲笑は、千桜は何度も聞いてきた。

景雄が彼女と結婚すると発表したときには沈黙していたが、今では見物人がさらに増えた。

「またパンか」

景雄の長い指が慣れた手つきで彼女のバッグからパンを取り出し、紙袋を手渡した。

紙袋の中には、湯気の立つあんまんが入っている。

その横には豆乳が添えられている。どれも彼女の好物だ。

夜は初恋相手に付き合い、朝には彼女に朝食を持ってくるなんて、本当に精力的だ。

千桜は景雄を見つめ、彼女が彼の心の中でどんな位置にいるのか理解できずにいた。

「今日の午後、時間ある?」

彼は雲泉レストランに行くと思い、「今から予約を手配する」と言った。

彼女は一瞬驚き、「予約?」と返した。

彼は不思議そうに一瞥し、彼女の意味を理解できない様子だった。

彼女は嘲るように口元を上げた。やはりこの件を覚えているのは彼女自身だけだ。

一年前、彼女は彼の子を妊娠した。その知らせを知ったとき、彼は一晩中喜びで眠れなかった。

しかし当時、会社は上場の重要時期で、彼は彼女の世話にかまける余裕がなかった。

その結果、競合他社が彼女を拉致して、会社の機密を要求した。

二者の対立は長く決着がつかなかった。

彼を困らせないために、彼女は十階建てのビルから飛び降りた。

幸い、稼働していないショベルカーに落ちて命は助かったが、子は失った。

この件以降、普段冷淡な彼の瞳の中に、初めて彼女の姿が映るようになった。

他人が冗談で彼に相手を替えようとすると、初めて顔を険しくした。

「口が利けないなら、黙ってろ。彼女は他の女たちとは違う。誰が彼女に手を出したら、容赦しない」

今日が、二人の子の命日だ。毎年この時期に子の墓を訪れることを約束していた。

「別に何でもないの」

千桜は平静を装って言ったが、景雄は眉をひそめ、何か言おうとした矢先に、スマホが鳴った。

画面を見ると、彼は少し躊躇した後、コートを羽織って立ち上がり、数歩歩いて振り返った。

「ちょっと用事がある。待ってて、後で一緒に行こう」

千桜はさっとその画面を見た。チャット欄の表示名には、割れたハートのマークが付いていた。

彼女は待たず、景雄の後で花屋に行き、予約していた花を受け取ってから、タクシーで北山へ向かった。

北山墓園の最良の場所には、まだ生まれぬ彼らの子が眠っている。

階段に腰を下ろすと、彼女はバッグから手紙を取り出し、燃やし始めた。

その途端、ついに涙をこらえきれなくなった。

「ごめんね、ママはもうここから離れるかもしれないの。

約束を守れなくて、ごめんね。怒らないでくれる?ママはまた絶対会いに来るから」

厚い束の手書きの手紙を燃やすと、清掃員が思わず言った。

「どうしてここで手紙を燃やしていますか」

千桜はすぐに謝り、悲しげな表情を浮かべた。

「この子のパパはもう私たちを見捨てたし、私も別の場所に行くの。

もう二度と戻らないかもしれない。だから、これから数年の手紙を一緒に燃やしたかった」

清掃員はため息をつき、立ち去った。

そして三十分後に戻ってきたら、その細身で美しい女性はすでに姿を消した。

灰のそばには十枚の一万円札が残されていた。

山の下には寺がある。線香を受け取った千桜は、近くに景雄の姿を見つけた。

彼は知佳と並んで座布団に跪き、真剣な表情で祈っていた。

千桜は思わず嘲るように笑った。

自分の子は一キロ離れた山で眠っているのに、彼はここで愛人と縁結びの祈願をしている。

千桜が立ち去ろうとしたとき、ボランティアが呼び止めた。

「佐倉さん、去年お子さんのために灯明を供えましたが、今年はどうしますか?」

元々心ここにあらずだった景雄は、突然振り返り、彼女に向かって急ぎ足で歩いてきた。

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