春になったらまた会おうね第1話
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七歳にも満たない頃、私・千尋(ちひろ)は三度も瀕死の境を経験した。
両親は私を救うため、魂を鎮めようと檜の棺を探し求めた。
避妊手術まで済ませていたのに、私の治療に使う臍帯血を得るために、妹を産んだ。
妹は天真爛漫で愛らしく、棺を指さして尋ねた。「お姉ちゃん、あの黒い箱はなあに?」
私は答えた。「あれは、私を入れるための箱よ」
パパとママは私を抱き締め、大声で泣きじゃくりながら、「絶対に治してみせるから」と何度も繰り返した。
けれどその日、妹がはしゃぎすぎて、その棺の角に頭をぶつけてしまったのだ。
その瞬間、ママは突然崩れ落ち、頭を抱えて地面にうずくまり、嗚咽を漏らした。
「両親を苦しめるだけじゃ足りないの?今度は妹まで巻き込むつもり?
もう本当にうんざりよ!どうして死んでくれないの!」
パパは泣きじゃくる妹を抱き上げてあやし、「遊園地に行こうか」と優しい口調で言った。
ドアが勢いよく閉まる音を聞きながら、私はゆっくりと棺の中に横たわり、そっと目を閉じた。
「パパ、ママ、おやすみなさい」
* * *
七歳にも満たない頃、私・千尋(ちひろ)は三度も瀕死の境を経験した。
両親は私を救うため、魂を鎮めようと檜の棺を探し求めた。
避妊手術まで済ませていたのに、私の治療に使う臍帯血を得るために、妹を産んだ。
妹は天真爛漫で愛らしく、棺を指さして尋ねた。「お姉ちゃん、あの黒い箱はなあに?」
私は答えた。「あれは、私を入れるための箱よ」
パパとママは私を抱き締め、大声で泣きじゃくりながら、「絶対に治してみせるから」と何度も繰り返した。
けれどその日、妹がはしゃぎすぎて、その棺の角に頭をぶつけてしまったのだ。
その瞬間、ママは突然崩れ落ち、頭を抱えて地面にうずくまり、嗚咽を漏らした。
「両親を苦しめるだけじゃ足りないの?今度は妹まで巻き込むつもり?
もう本当にうんざりよ!どうして死んでくれないの!」
パパは泣きじゃくる妹を抱き上げてあやし、「遊園地に行こうか」と優しい口調で言った。
ドアが勢いよく閉まる音を聞きながら、私はゆっくりと棺の中に横たわり、そっと目を閉じた。
いや待って、蓋を閉めないと。
……この蓋、ずいぶん重いね。
蓋を閉めながら、思わずそう呟いてしまった。
聞くところによれば、これはパパがある陰陽師に莫大なお金を払い、あらゆる顔役をはたらかせ、ようやく譲り受けた檜で、特注して作らせたものらしい。
出来上がった時に、その陰陽師の方も立ち会ったが、私の姿を見ると、彼らはなぜかため息をつき、背を向けて帰っていった。
私はパパの服の裾を引っ張り、無邪気に尋ねた。
「パパ、私ってそんなに怖い顔してるの?どうして私を見ると逃げちゃうの?」
あの時、パパは確かに言ってくれた――「そんなことないよ、千尋は世界一きれいだよ」って。
ああ、もしパパが昔のように突然現れて、この蓋を閉めてくれたらいいな。
大人びた口調で私はため息をついた。やっぱりやめよう。
パパもママも、もう十分疲れてる。
ようやく妹を連れて遊びに行ける大事な時間なんだから、邪魔はしないでおこう。
遊園地って楽しいのかな。テレビで見るのと同じなんだろうか。
ピンク色の木馬に、大きなお城。
ママは約束してくれた。病気が治ったら、お姫様のドレスを着てお城の前で写真を撮ろうって。
「うちの千尋は、きっと誰よりも輝いてるわ!」
その言葉を思い浮かべるたび、頭の中では何度も夢を描き、自然と微笑みがこぼれた。
意識がゆっくりと遠のいていく。少し眠ろう。
妹が帰ってきたら、遊園地がどんなところだったか聞いてみよう。
今度こそ、パパとママにお願いして、一緒に連れて行ってもらおう。少し眠ろう。眠れば、きっと病気もよくなる。
真っ白な病室のベッドに何度も横たわっていたあの頃、ママはいつもそう言って私を慰めてくれた。眠って目を覚ませば、すべてが良くなるのだと。
「パパ、ママ、おやすみなさい」
あの子ったら、めちゃくちゃ腕白なんだから!絶対に「おやすみ」なんて言ってやらないもん。
次に目を開けたとき、私は空に浮かんでいた。不思議に思ってあたりを見回すと、そこは私の家だ。
壁には、私の写真が飾られている。生まれたときから七歳になるまでのもの。
どの写真の中の私も笑っている。
あの頃、妹はようやく言葉を覚えはじめたばかりで、私の写真を指さしては「あー、あー」と声をあげていた。
ママはそんな妹を腕に抱きながら、一枚一枚の写真を指して教えていた。
「これはね、お姉ちゃんが生まれたばかりのときよ。小さな子猫みたいで、泣くことさえできなかったの。
お姉ちゃんが初めて手術を受けたときはね、パパもママも足が震えるほど怖かったのよ。
園子、これからはお姉ちゃんを守ってあげるのよ、いいわね?」
私はぐったりと揺り椅子に横たわり、口を尖らせて言った。「ママ、私が姉だよ!
姉は妹を守るものなの!」
両親は思わず笑みを漏らしたが、瞳には理解できない何かが浮かんでいた。
後になってあれが何だったか、やっと分かった。あれは哀愁というものだった。
私は写真の壁の前へと漂い、そっと手を伸ばした。すると、その手が写真をすり抜けてしまった。
えっ?
私の手……透き通ってる?
戸惑いに包まれていると、突然、ドアの外からピッピッと電子音が響いた。
パパとママが帰ってきたのだ。
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