旦那が他の女の妊婦健診に付き添った後第3話
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病院を出るとき、優成の瞳に一瞬だけ恐れの色が走ったのが見えた。
彼は私を追いかけようと足を踏み出しかけたが、その瞬間、真理が突然腹を押さえて苦しげに悲鳴を上げた。
「優成……お腹が……すごく痛いの……」
優成は慌てて彼女の手を握り、心配そうに顔をのぞき込んだ。
「真理、どうしたんだ?」
真理の顔は真っ青だったが、それでもわざとらしく強がった声を出した。
「だ、大丈夫……優成、朱音さんを追いかけてあげて。きっと今、すごく落ち込んでるはずだから」
優成は一瞬迷ったが、すぐに首を振って言った。
「ただ拗ねてるだけだよ。今、君は妊娠しているというのに、彼女は時と場合もわきまえずに、自分に構ってほしいんだな。まずは君と一緒に医者に行く。家に帰ってから、彼女には俺から説明するよ」
そう言って優成は真理を抱きかかえ、そのまま病室へと歩いて行った。
私は一人で家に戻った。
かつては温もりと幸せの象徴だったこの場所も、今では冷たさと孤独しか残っていない。
真理が帰国してから、優成が家に帰って来ることはめっきり減った。
広すぎるこの家にいるのは、もう私一人だけ。
私は壁にかけられた結婚写真を外し、力任せにゴミ箱へと投げ捨てた。
それからスーツケースを開けて荷物をまとめ始める。
荷物を引きずって玄関に出ると、予想外の光景が目に飛び込んできた。
優成が真理を連れて帰ってきたのだ。
彼は私がスーツケースを持っているのに気づくと、罪悪感がよぎったような顔をして弁解した。
「真理の具合が悪くてな、休ませるために連れてきたんだ」
私は鼻で笑った。
「休ませる?ここは休憩所じゃないわ。
具合が悪いなら病院に行けばいいでしょう?ここは妊婦の療養施設じゃないのよ!」
真理の目に一瞬怒りの色が浮かんだが、すぐに哀れっぽい顔を作ってみせた。
「朱音さん……私が嫌いなのは分かるわ。でも、私と優成の関係は本当に何もなくて……私は一人で頼る人もいないから、優成を頼るしかなくて……
子供を産んだらすぐ出て行くから。絶対にお二人の邪魔はしないわ」
その言葉は、明らかに私を挑発していた。
私は冷たい声で告げた。
「真理、あなたの顔なんて見たくない。すぐにここを出て行って」
優成が眉をひそめる。
「朱音、お前どうしてそんな冷たいことを言うんだ?真理は妊娠してるんだぞ。一人で放り出して、行く場所なんてあるのか?
彼女がここにいれば、俺たちも世話できる」
私は深く息を吸い込んだ。
「優成、ここは私の家。私は彼女を住まわせたくない」
優成が迷うように言葉を飲み込みかけたその時、真理が彼の手をつかみ、自分の腹に押しあてた。
「優成……お腹がまた痛い……赤ちゃん、大丈夫かな……?」
優成の顔が一瞬で変わった。
「朱音!お前も女だろ?なんでそんな冷たいんだ!
真理は妊娠してて、身寄りもないんだぞ。お前、なんで少しも同情できないんだ!
嫌なら出て行け!真理の子供に何かあったら困るんだから!」
その姿を見て、私の心は一気に凍りついた。
「……分かったわ。私が出て行く。
今夜が最後。明日には全部引き払うから」
そう言って、玄関に置いたゴミ袋を掴み、大股で家を出た。
真理がゴミ箱に入った結婚写真に目を留め、わざとらしく声を上げる。
「まあ、朱音さん本当に怒ってるみたい……結婚写真まで捨てちゃうなんて」
優成は一瞥して、鼻で笑った。
「いつもの大げさな演技だ。気にするな。
どうせ俺から離れることなんてないさ。しばらくすれば勝手に機嫌直すだろ」
私はゴミ袋を持ったまま、身を切るような冬の夜に立ち尽くした。
冷たい風が骨の髄まで突き刺す。
ゴミ箱の蓋を開け、結婚写真を放り込む。
その瞬間、優成への最後の愛も、完全に消え去った。
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