和紙文旦那が他の女の妊婦健診に付き添った後 · 第3話設定≡

旦那が他の女の妊婦健診に付き添った後第3話

この話は約1499字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

病院を出るとき、優成の瞳に一瞬だけ恐れの色が走ったのが見えた。

彼は私を追いかけようと足を踏み出しかけたが、その瞬間、真理が突然腹を押さえて苦しげに悲鳴を上げた。

「優成……お腹が……すごく痛いの……」

優成は慌てて彼女の手を握り、心配そうに顔をのぞき込んだ。

「真理、どうしたんだ?」

真理の顔は真っ青だったが、それでもわざとらしく強がった声を出した。

「だ、大丈夫……優成、朱音さんを追いかけてあげて。きっと今、すごく落ち込んでるはずだから」

優成は一瞬迷ったが、すぐに首を振って言った。

「ただ拗ねてるだけだよ。今、君は妊娠しているというのに、彼女は時と場合もわきまえずに、自分に構ってほしいんだな。まずは君と一緒に医者に行く。家に帰ってから、彼女には俺から説明するよ」

そう言って優成は真理を抱きかかえ、そのまま病室へと歩いて行った。

私は一人で家に戻った。

かつては温もりと幸せの象徴だったこの場所も、今では冷たさと孤独しか残っていない。

真理が帰国してから、優成が家に帰って来ることはめっきり減った。

広すぎるこの家にいるのは、もう私一人だけ。

私は壁にかけられた結婚写真を外し、力任せにゴミ箱へと投げ捨てた。

それからスーツケースを開けて荷物をまとめ始める。

荷物を引きずって玄関に出ると、予想外の光景が目に飛び込んできた。

優成が真理を連れて帰ってきたのだ。

彼は私がスーツケースを持っているのに気づくと、罪悪感がよぎったような顔をして弁解した。

「真理の具合が悪くてな、休ませるために連れてきたんだ」

私は鼻で笑った。

「休ませる?ここは休憩所じゃないわ。

具合が悪いなら病院に行けばいいでしょう?ここは妊婦の療養施設じゃないのよ!」

真理の目に一瞬怒りの色が浮かんだが、すぐに哀れっぽい顔を作ってみせた。

「朱音さん……私が嫌いなのは分かるわ。でも、私と優成の関係は本当に何もなくて……私は一人で頼る人もいないから、優成を頼るしかなくて……

子供を産んだらすぐ出て行くから。絶対にお二人の邪魔はしないわ」

その言葉は、明らかに私を挑発していた。

私は冷たい声で告げた。

「真理、あなたの顔なんて見たくない。すぐにここを出て行って」

優成が眉をひそめる。

「朱音、お前どうしてそんな冷たいことを言うんだ?真理は妊娠してるんだぞ。一人で放り出して、行く場所なんてあるのか?

彼女がここにいれば、俺たちも世話できる」

私は深く息を吸い込んだ。

「優成、ここは私の家。私は彼女を住まわせたくない」

優成が迷うように言葉を飲み込みかけたその時、真理が彼の手をつかみ、自分の腹に押しあてた。

「優成……お腹がまた痛い……赤ちゃん、大丈夫かな……?」

優成の顔が一瞬で変わった。

「朱音!お前も女だろ?なんでそんな冷たいんだ!

真理は妊娠してて、身寄りもないんだぞ。お前、なんで少しも同情できないんだ!

嫌なら出て行け!真理の子供に何かあったら困るんだから!」

その姿を見て、私の心は一気に凍りついた。

「……分かったわ。私が出て行く。

今夜が最後。明日には全部引き払うから」

そう言って、玄関に置いたゴミ袋を掴み、大股で家を出た。

真理がゴミ箱に入った結婚写真に目を留め、わざとらしく声を上げる。

「まあ、朱音さん本当に怒ってるみたい……結婚写真まで捨てちゃうなんて」

優成は一瞥して、鼻で笑った。

「いつもの大げさな演技だ。気にするな。

どうせ俺から離れることなんてないさ。しばらくすれば勝手に機嫌直すだろ」

私はゴミ袋を持ったまま、身を切るような冬の夜に立ち尽くした。

冷たい風が骨の髄まで突き刺す。

ゴミ箱の蓋を開け、結婚写真を放り込む。

その瞬間、優成への最後の愛も、完全に消え去った。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第4話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。

R93881
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第4話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。