旦那が他の女の妊婦健診に付き添った後第1話
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私・島田朱音(しまだ あかね)は妊娠六ヶ月。病院で夫・沢田優成(さわだ ゆうせい)と彼の帰国したばかりの幼なじみ・島田朱音(しまだ あかね)に出くわした。
私は妊婦検診の報告書を手にしていたが、目の前では二人が自分たちのこれから生まれる子どものために祝っていた。
真理は不安そうな顔をし、申し訳なさそうに言った。
「優成、わざわざ一緒に検診に来てくれなくても大丈夫よ。私は一人でも平気。もし朱音に知られたら、きっと喧嘩になっちゃうわ。あの人も妊娠中なんだし、感情を揺らすのはお腹の赤ちゃんに良くないもの」
優成は自信満々に、気にも留めない様子で口を開いた。
「朱音は俺と喧嘩なんかしない。いつだって俺の言うことを聞いてくれるし、俺を愛してるんだ。もし本気で喧嘩してきたら、その時は離婚すればいい」
その言葉が胸に突き刺さり、止めようとしても涙が溢れ出た。
私は彼を本当に愛していた。だからこそ、喧嘩することもできず、彼の言葉にいつも従ってきた。
けれど、それは彼の裏切りを知った今も、なおも続けるべき茶番ではなかった。優成が私と子どもを望まないというのなら、私が一人でも育てていく。
涙を拭い取り、五年もの間かけていなかった番号に電話をかけた。
「お父さん……私、家に帰りたい」
「朱音、やっと分かってくれたか。家はいつでもお前を歓迎するよ」
通話を切り、一週間後のスイス行きの航空券を予約した。
あと一週間で、完全に優成の人生から消えてやれる。
なのに――どうして私が見つからなくなった途端、彼は狂ったように後悔したの?
* * *
私・島田朱音(しまだ あかね)は妊娠六ヶ月。健診の結果を取りに病院へ行った時、思いがけず夫の沢田優成(さわだ ゆうせい)に出くわした。
彼は一人の女性を気遣うように付き添って、同じく健診を受けていた。
その女性は、彼の幼馴染――吉沢真理(よしざわ まり)だ。
「優成、奥さんに悪いんじゃない?」真理は少し困ったように微笑んだ。
「大丈夫だよ。彼女が知るわけないし、たとえ知ったとしても何もできない」優成は真理の手をしっかり握った。
「でも、やっぱり奥さんだから……私、傷つけちゃうのが怖い」
「心配するな。彼女には絶対言わない。最近は情緒不安定だし、下手に刺激したら面倒になる。君は妊娠してるんだ、負担をかけるわけにはいかない。もしあいつが騒ぐなら、離婚するまでだ」
その言葉を耳にした瞬間、胸が切り裂かれるように痛んだ。
私は震える指で携帯を取り出し、長い間連絡していなかった父に電話をかけた。
「お父さん……私、家に帰りたい」
声を聞いた父はすぐに喜びを隠せなかった。
「朱音、やっと分かってくれたか。家はいつでもお前を歓迎するよ。
何があっても、父さんも母さんもお前の味方だからな」
電話を切ると、朝のことを思い出した。私は優成に一緒に健診に行こうと頼んだが、彼は「用事がある」と断った。
実際は、真理に付き添うためだったのだ。
私は六ヶ月の間、一度も彼と健診に行ったことがない。代わりに優成は真理のそばにいて、彼女が帰国して以来、ほとんど毎日のように会っていた。彼女の呼び出しならどんな時でも駆けつけた。
以前、私は優成に言った。
「もし他に好きな人ができたなら、離婚してもいい」と。
けれど彼はこう返した。
「真理は婚約破棄されて帰国したばかりで、しかも妊娠中なんだ。幼馴染の友達として支えるのは当然だろう。
長年の付き合いがあるんだ。俺には責任がある!」
その言葉に私は驚愕して問いただした。
「友達?どんな友達が毎日連絡し合って、呼べば飛んでいくの?」
「朱音、お前は少し度が過ぎる!真理はいま本当に辛い時なんだぞ!支えて何が悪い!
こんなつまらないことでいちいち騒ぐな!」
私は信じようとした。真理の子どもは彼のものではないと。帰国した時、すでに妊娠していたから。
真理の子の父親は誰なのかと、何度かそれとなく聞いたのに、優成は答えをはぐらかし、怒鳴りつけ、二度とそういうことを訊くなと迫った。
けれど後になれば、繰り返し私に説明し、真理との関係はただの友人だと訴えた。
「勘違いするな、俺が愛してるのはお前だけだ」――その真剣な顔を見て、私は納得してしまったのだ。
だが今、目の前で手を取り合う二人を見て、真理のお腹の子は優成のものなのだと悟った。
私はただの隠れ蓑に過ぎなかった。
「もし朱音が言うことを聞かないなら離婚だ」そう優成が口にした瞬間、真理の瞳に一瞬、勝ち誇ったような光が宿った。
「駄目、私のせいでご夫婦の仲を壊したくないの……」と、真理は涙声で自分を責めた。
「婚約者に捨てられたなんて全部私が悪いのよ……私、一人で生きていけない。優成が助けてくれなかったら、とっくに潰れてた」
そう言って泣き崩れ、まるで弱いヒロインを演じるように優成の胸にすがる。
優成は彼女の背を撫でながら言った。
「心配するな。何があっても俺は君を支える。子どもの頃、君がいてくれなかったら……」
声が次第にかすれ、だが改めて彼は力強く誓った。
「君を助けるのは当然のことだ。朱音は俺の妻だから理解するべきだ。たとえ知ったところで構わない。俺はいつだって君の味方だ」
目の前で寄り添う二人を見つめながら、胸は鋭く突き刺され、涙が止めどなく溢れた。
そして心の中で繰り返した。
――あと二週間で、私はここでの生活を永遠に終わらせる。
もう一週間もすれば、ビザの手続きも完了する。
そうすれば、彼らの世界から完全に離れられるのだ。
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