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攻略失敗後、死を望んだ私に攻略対象が狂い出す第1話

この話は約1868字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

死んだはずの私、西園寺莉緒(さいおんじ りお)は、攻略ゲームの世界に入り込んだ。

元の世界へ戻って生き返る条件は、システムが用意した三人の男のうち、誰か一人を攻略すること。

私は彼らに合わせて攻略シナリオを組み、何度も距離を縮めようとした。

けれど彼らが選んだのは、私ではない。

この世界で誰からも愛されるヒロインだった。

疑われ、罵られ、消えてしまえばいいとでも言うような目を向けられ続けた私は、ついに攻略に失敗する。

そして、システムによって抹消された。

彼らの望みどおりに。

けれど私が本当に死んだ途端、彼らはそろって後悔し始める。

神にすがってでも、私を取り戻そうとするほどに。

* * *

【マスター、システム判定によりミッション失敗が確認されました。攻略に失敗したため、これより抹消処理を実行します】

システムの声で、物陰から結婚式を盗み見ていた私――西園寺莉緒(さいおんじ りお)は我に返った。

礼拝堂の中では、一条遥真(いちじょう はるま)と七瀬眞白(ななせ ましろ)が見つめ合って笑い、参列者たちの祝福の拍手に包まれながら口づけを交わしていた。

これが、システムが私に用意してくれた最後のチャンスだった。

けれど今となっては、それも失敗に終わったらしい。

かつて私は、三歳児の体に入り込み、システムと契約を交わした。二十年以内に三人の攻略対象のうち誰か一人でも攻略できれば、元の世界へ戻れるという契約だった。

けれど、二十年が過ぎた今、攻略できた相手は一人もいない。

もしかすると、これがいちばんいい結末なのかもしれない。

私はその場を離れ、大通りにかかる歩道橋へ向かった。

システムの話では、攻略ミッションに失敗した場合、まず上位システムへ状況を報告し、それから私を抹消するらしい。

橋の下を流れていく車を見下ろしていると、この二十年のあいだ、三人の攻略対象が私に向けてきた冷たい目ばかりが思い出された。

彼らは皆、同じ一人の女――眞白のために、私へ容赦ない言葉を浴びせた。

彼女は、この攻略世界で誰からも愛されるヒロインだ。

彼女にはヒロイン補正があるから、攻略対象たちはどうしても彼女に惹かれてしまうのだと、システムは私を慰めていた。

私は曇り空を見上げた。

私はこの世界に迷い込んだ異物で、ヒロインを引き立てるための悪役令嬢。だから、こんな結末を迎えるしかなかったのだろうか。

もういい。

ここまで来て考えたところで、何も変わらない。

どうせ私は死ぬのだから。

私はふらふらと車道へ出た。

誰にも気づかれないまま抹消されるくらいなら、いっそ無惨な死体を彼らに見せつけてやりたい。

どれほど私を嫌っていても、最後くらいは、私を葬るしかなくなるはずだ。

次の瞬間、耳をつんざくようなブレーキ音が響いた。

聞き慣れた荒々しい声が飛んでくる。

「莉緒、死ぬなら人目のないところで勝手に死ね。こんな場所で醜態をさらすな」

顔を上げると、そこにいたのは西園寺蓮也(さいおんじ れんや)だった。

この世界で、私の異父兄にあたる人だ。

彼は、私に残されたたった一人の身内だった。

この世界で頼れる相手のいなかった私に、彼だけは何かと手を差し伸べてくれた。だから私は、蓮也だけは味方だと信じていた。この世界でたった一人、私を家族として扱ってくれる人なのだと。

けれど、いつの間にか彼の目に映るのは眞白だけになっていた。

眞白が「莉緒にいじめられていた」と一言こぼしただけで、蓮也は何も確かめずに信じ込んだ。その日から、私を見る彼の目は変わった。

蓮也は私を車に押し込むと、人通りのない道端で乱暴に引きずり下ろし、迷いもなく頬を打った。

「死にたいなら、誰もいないところで死ね。死んだあとまで他人に迷惑をかけるな。

場所なら選んでやった。死ぬ気があるなら、今ここで死ね。俺の時間を無駄にするな」

頬を打たれた衝撃で、耳の奥がきんと鳴った。膝から力が抜けかけたが、私はどうにか倒れずにこらえた。

蓮也の前で死のうとしたのは、これが初めてではなかった。

あの頃の私は、本気で死にたかったわけじゃない。眞白しか見えなくなった蓮也に、まだ私の声が届くのか知りたかった。ただ、それだけだった。

だから彼には、今回も同じに見えているのだろう。

私はどうせ、死ねない女なのだと。

「兄さん、どうしてここに?

さっきまで、眞白の結婚式にいたんじゃないの?

私を、心配してくれたの?」

私は蓮也を見上げた。

もう期待なんてしたくなかった。

それでも、式場にいたはずの彼がここにいる理由を、そう受け取りたかった。

何度突き放されても、私はまだ、蓮也だけは信じていたかった。

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