攻略失敗で死んだ私と、崩壊する彼ら第3話
この話は約1244字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
目立つのは避けたかったから。
そうそう、驚かれないように遺書も残した。
【大丈夫だよ。私はもう、夜空の星になったから】
意識がどんどん遠のいていく。
死の間際、ここでの思い出が走馬灯のように駆け巡る。
どんなに努力しても、すべて睦月に奪われてしまう。
みんな睦月が好きで、私のことは嫌いなんだ。
もう終わりだと思ったその時、誰かが私を抱きかかえた。
新鮮な空気を吸い込み、必死で肺に酸素を取り込む。
「瞳、君は正気か!」
目の前にいるのは、8歳年上のかつての主治医、河野大輔(こうの だいすけ)だ。
大輔もまた、私の攻略対象。
鬱病の診断を受けて、私が通っていたのが大輔の病院だった。
当時、攻略対象として提示されたのも彼だ。
だから私は、時間とお金をかけて大輔のために尽くした。
一緒に食事をして、絵を描いて、遊園地にも行った。
あろうことか、大切にしていた彼の祖母にも会わせてくれた。
大輔いわく、河野家の本邸に足を踏み入れた初めての女性が私だった。
そして、大輔からの好感度はますます上がっていった。
今回こそは成功すると思っていたのに。
そこへ、また睦月が現れた。
睦月は大輔に泣きついてこう言った。「河野先生、瞳が雇った人にレイプされたの。眠りについても、その光景が夢に出てきて……もう死にたい」
それを聞いた大輔は、あろうことか私の目の前で睦月を抱きしめた。
「大丈夫、僕がいるよ」
その日の帰り、大輔は血走った目で私に怒鳴り散らした。出ていけ、鬱病なんて同情を買うための嘘だ、吐き気がする、と。
こうして、攻略は失敗した。
おかしくて笑ってしまう。1日に二回も自死しようとして、二回とも過去の攻略対象に鉢合わせるなんて。
この世界は、どれだけ狭いんだろう?
「今日は、睦月の結婚式に行かなくてよかったの?」
私は無感情に、うつろな目で大輔を見上げた。
知的な顔立ち、優しい声。女性にどこまでも優しく接する人だった。
だからこそ大輔は、どん底にいた私を救い上げられたのに。
その一方で、自らの手で私を真っ暗な淵へ突き落としたのも彼だった。
「少し機嫌が悪くて、気晴らしに来ただけだ」
大輔は眉をひそめ、苛立ちを隠そうともしない。
そうだった、大輔も睦月のことが好きだった。
睦月のために海外留学のチャンスすら蹴ったくらいだ。
そんな睦月が今日結婚するから、機嫌が悪いんだろう。
「君こそ、なぜここで死のうとした?
僕がいるから、かまってほしくてそんな真似をしたのか?
瞳、いつまで鬱病のフリをしてるんだ?手を変えたらどうだ?」
罵声を浴びても、心は動かない。
そんな言葉、飽きるほど言われてきたから。
大輔はずっと、私の病気が芝居だと思い込んでいる。
私は本当に鬱なのに、なぜ分かってくれないんだろう?
愛されない人間は、何をしても批判されるということなのだろうか?
私は言葉を返さず立ち上がり、次なる死に方を考えながらその場を去ろうとした。
しかし、死に場所を探す私のあまりの無様な姿に、少し焦りを感じたのかもしれない。
大輔は慌てて私を抱き止め、彼の家へと連れ帰った。
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