攻略失敗で死んだ私と、崩壊する彼ら第1話
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物語の舞台であるこの世界に転生して、システムから4人の攻略対象が割り当てられた。
彼らのうち誰か1人でも恋に落とせば、元の世界で交通事故で死んだ私は生き返ることができる。
けれど、その4人とも私に落ちることはなかった。
彼らが揃いも揃って、この世界の原作ヒロインに惹かれていたからだ。
その結果、4人は口を揃えて私に酷い言葉を投げかけ、死ねと言い放った。
最後は、任務に失敗した絶望で自ら命を絶ってこの世界を去った。
けれど、私の死体を見た彼らは、取り乱して泣き崩れた。
* * *
「任務失敗です。25年の期限が満了したため、任務を終了します」
システムの冷徹な通告が、結婚式場の外で立ち尽くしていた私に響いた。
式場の内側では、菅原翔太(すがわら しょうた)と西村睦月(にしむら むつき)が祭壇でキスを交わしている。
翔太こそが、私が攻略すべき最後のターゲットだった。
そして今、私は彼の攻略にも失敗した。
この世界に転生した際、システムはこう約束した――25年以内に、提示された4人のターゲットのうち1人でも攻略できれば、元の世界へ戻れると。
しかし、25年の月日を経て、結局誰1人として落とすことはできなかった。
神様すらも、私をこの世界に生かしておきたくはないらしい。
私はその場に背を向け、交通量の多い環状線橋へと足を進めた。
システムによれば、任務に失敗した以上、始末をつけろということらしい。
目の前を流れる車を見ながら、脳裏にこの25年間でターゲットたちから浴びせられた冷酷な仕打ちが蘇る。
彼らは誰1人例外なく、睦月のことになると、私に罵声を浴びせてきた。
睦月はこの世界の原作ヒロインだ。
システムは私を責めなかった。攻略対象たちはヒロインである睦月に惹きつけられるよう、プログラミングされているのだから。
真っ青な空を見上げて思う。この世界に脇役として転生しただけで、私の成功は最初からありえないものだったのか?
まあ、もうどうでもいい。いずれにせよ終わりなのだ。
私は目を閉じ、車道へと思いきり体を投げ出した。
次の瞬間、空気を引き裂くような急ブレーキの音が鼓膜を打った。
続けて、男の激怒する声が聞こえてくる。
「瞳(ひとみ)!人様に迷惑をかけたいのか、このバカ女!」
目を開けると、そこには実の兄、後藤竜之介(ごとう りゅうのすけ)が立っていた。
竜之介もまた、システムから与えられたターゲットの1人だった。
システムは、竜之介との親密度を100パーセントまで引き上げれば攻略成功だと告げていた。
しかし結局、彼は睦月に魂を奪われ、彼女を愛してしまった。
睦月が私に誘拐されたなんて嘘を言い、それを竜之介は信じ込み、私を深く恨むようになった。
竜之介は私を引きずって車に押し込むと、郊外の河川敷まで連れ出し、容赦なく平手打ちを食らわせた。
「やるなら公衆の面前でやるな。自殺なのに相手側に賠償金を払わせるつもりか。
死に場所なら用意してやる。早く行けよ!」
殴られた衝撃で頭がぼんやりとし、足元がおぼつかない。
竜之介に自分の弱さを見せようと、自害しようとしたのはこれが初めてではない。
以前は、睦月しか見てない竜之介を死ぬと脅し、説明を聞いてくれると信じていたのだ。決して、本当に死のうとしたのではない。
だからこそ今の彼は、どうせ死ねっこないと高を括っているのだろう。
「お兄さん、どうしてここにいるの?
式場を抜け出してきたの?
私のこと、心配で追ってきたの?」
顔を上げて竜之介を見つめる。声が震え、込み上げる悲しみが喉を焼いた。
さっきまで結婚式場にいたはずの竜之介が。私の姿が見えないと気づいて、居ても立っても居られなくなったのだろうか?
期待を捨てきれない自分が、心のどこかにいた。
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