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捨てられ記者の正体は、最強グループ令嬢第2話

この話は約2208字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

凛花が、これ見よがしに颯太の腕にしなだれかかりながら近づいてきた。

町田は情けなさそうな目で私を見た。「一ノ瀬さんはハナからお前なんか遊びだったんだよ。車まで傷つけて、これで完全にジ・エンドだな」

私は答えず、ただ近づいてくる颯太を見つめた。

今回の「忙しい」をどう説明するのか、聞いてやりたかった。

凛花が先に口を開いた。「何?颯太さんを捕まえられなくて、嫉妬で狂ったの?可哀想に。私の顔を立てて、私が『彼氏』にお願いして、次こそはあなたの取材も受けてあげるよう口利きしてあげましょうか?」

私は颯太を見つめ、噛みしめるように問い詰めた。「……彼氏?」

沈黙していた颯太が動いた。私を脇に引き寄せ、声を潜めた。「よせ。凛花を困らせんな。今回の取材、彼女にとって大事なんだ」

胸の奥が、焼け付くように痛む。

凛花にとって大事?なら、私にとっては?

私は縋るように彼の腕を掴み、掠れた声で聞いた。「……じゃあ、私は?」

颯太は一瞬だけ呆然としたが、すぐになだめるように私の手を軽く握った。少しだけ声を和らげた。「楓、次にしてもらえないか?」

「でも、約束したじゃない」

私が頑なに彼を見つめると、颯太の顔から温度が消えた。

彼はゆっくりと私の手を振り解き、一歩後ろへ下がった。「大人しくしろ。騒ぐな」

泣きそうになった私放置して、彼は凛花の手を引いてエレベーターへ向かおうとした。

けれど、凛花はそれでは終わらせないつもりだった。

凛花は颯太の手を振りほどいて振り返ると、さらに挑発を重ねてきた。「浅川さん、同僚のよしみで今回は大目に見てあげる。でも、ここで膝をついて謝って。自分は最低な女で、一生私の踏み台だって認めれば、車の修理代は請求しないであげるわよ」

私はツンとする鼻の奥をこらえ、颯太を見つめた。「あなたはどうなの……あなたも、私が謝るべきだと思ってる?」

私が涙ながらに見つめると、彼は一瞬たじろぎ、口を開こうとした。

しかし、凛花が不満そうに彼の袖を揺すった。

それで、颯太はこう言った。「今回は確かに君が悪い。さっさと謝れ。後のことは俺が何とかするから」

その堂々とした物言いに、胸をかきむしられるような痛みが走った。

私はもう片方のヒールを脱ぎ捨て、思い切りフロントガラスに叩きつけた。「私との約束を破って、彼女の取材を受け、彼氏面までして……挙げ句の果てに、私が悪いって言うの?私の何が、そんなに間違ってるっていうのよ!」

颯太は面倒そうに眉根を寄せ、額に手をやった。「凛花は君とは違うんだ。コネもバックもない。夜遅くまで働き詰めで、このチャンスが必要なんだ。君が先輩なんだから、譲るのが当たり前じゃないか?」

幻聴かと思った。けれど、胸の痛みだけはあまりにもリアルだ。

彼の言葉の端々に凛花への憐れみが滲んでいた。でも、この業界でそうやって苦労してこなかった人間なんていない。

彼と過ごす時間を作るために、私はどれだけの夜を原稿に費やし、徹夜を重ねてきたか。

彼はそれを知っていたはずなのに、私を憐れむ言葉ひとつかけなかった。

今までは、彼が仕事人間で不器用だからだと思っていた。

今になってようやく分かった。

気づいていないんじゃない。彼はただ、その優しさをすべて他の女に与えていただけだったのだ。

しかし彼は忘れていた。私と凛花は同じ年にテレビ局に入ったのだ。

彼女にはプロデューサーの叔父がいる。笑えることに、颯太は本物のお嬢様をただの社畜のように扱っていた。

私が言い返そうとした時、局長がたまたま近くを通りかかり、声を聞いてやって来た。「看板記者が二人揃って正門で喧嘩とは、何の真似だね?」

そう言い、視線を颯太に向けると、すぐに態度を一変させ、へつらう笑みを浮かべた。「おや、一ノ瀬社長!よくお越しくださいました。さあ、中へ!」

凛花はここぞとばかりに私を指差した。「局長!浅川さんが、颯太さんを独占できないからって逆上して、車を傷つけたんです!それに、颯太さんは私の彼氏なのに、この女、みんなの前で難癖つけてきて……っ!」

甲高い声に引き寄せられるように、同僚たちが次々と集まってきた。私に向ける彼らの視線は、嘲笑に満ちている。

「浅川さんって本当にバカね。一ノ瀬社長と白石さんが付き合ってるんだから、味方するわけないじゃない」

「勝てないからって、人前で醜態をさらすなんて、最低!今までの実績も、どうせ枕営業なんじゃない?今回は本命の彼女がいたから失敗したんでしょ」

「八年も付き合ってる彼氏が公開を拒んでる理由がわかったわ。汚いと思われてるのよ!」

心ない罵詈雑言が、刃のように私を突き刺した。

颯太は一瞬だけ私に視線を向けたが、すぐに唇を噛み、凛花をかばうように彼女の前に立った。

その沈黙と守るような仕草が、周囲の罵声を「真実」として確定させてしまった。

私は歯を食いしばり、全身の震えを必死に抑えた。

凛花はそれを見て、ますます得意になった。白々しく寛大な態度を装って、「もういいです。同僚なんですし、誰だって過ちはあるんです。私は気にしません!」と言い放った。

局長は満足げに頷き、私を急かした。「見たかね!浅川君も白石君を見習いたまえ。実力がないからって、卑劣な手段に走るんじゃない!」

恋愛は諦めてもいいが、プロとしてのプライドを汚されることだけは許せない。

私は深く息を吐き出し、颯太を見据えた。「颯太。自分の口で言いなさい。あなたは、一体誰の彼氏なの?」

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