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手放した光は二度と戻らない第2話

この話は約2336字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

二人が言い争っていると、蒼真の取り巻きたちが傍らで囃し立てた。

「俺に言わせりゃ、陽葵なんて女は、結局金が目当てなんだろ」

「そうそう、金が欲しいならはっきり言えよ。回りくどい真似して楽しいか?」

その言葉に合点がいったのか、蒼真の瞳に嘲りの色が浮かんだ。

「分かったぞ。お前がずっとサインを渋っているのは、金が欲しいからだな!言ってみろ、いくら欲しいんだ!」

その侮蔑に満ちた口調は、見えない平手打ちとなって陽葵の頬を張った。

蒼真はポケットから財布を取り出すと、キャッシュカードを陽葵の顔に向かって投げつけた。「この中に2000万円入ってる。これで十分だろう!」

弾かれたカードが床へと滑り落ちる。まるで陽葵の自尊心そのもののように、蒼真の靴の下で無残に踏みにじられていた。

「蒼真、どこにいるの?怖いよ……」

診察室から栞奈の叫び声が聞こえると、蒼真は一目散に駆け込んでいった。

周囲からどっと嘲笑が湧き起こった。

「陽葵、見たか。蒼真が一番愛してるのは栞奈だけだ。さっさと金をもらって消え失せろ!」

陽葵はそのカードを拾おうともせず、逃げるようにその場を立ち去った。

彼女の手は、二度と絵筆を握れない。あの「少女の秘めた想い」は、彼女が賞を獲れるかもしれない唯一の作品だった。

しかし3日も経たないうちに、陽葵は再び無情な現実に打ちのめされることになる。

幼い頃から彼女を育ててくれた孤児院の院長、佐藤佳代(さとう かよ)が病に倒れ、心臓移植手術に最低でも1億円が必要になったのだ。

病院に運ばれて検査を受けた結果、佳代の心臓病はすでにかなり進行しており、ここ数日の間に移植手術を行わなければ、いつ命を落としてもおかしくない状態だと陽葵は知らされた。

すっかり白髪交じりになった髪でベッドに横たわる佳代は、弱々しい声で呟いた。「人の寿命ばかりはどうにもならないものよ。陽葵ちゃん、そんなに悲しまないでおくれ」

陽葵は佳代の手を握りしめ、必死に首を横に振った。「だめ、佳代さんは絶対に大丈夫。佳代さんはとてもいい人だから、絶対に長生きするのよ」

佳代は慈しむように陽葵の頭を撫でた。「陽葵ちゃん、私が一番気がかりなのはあなたのことなの。でも最近、あるご婦人が私を訪ねてきてね。彼女、あなたと全く同じネックレスを持っていたのよ。もしかしたら……」

陽葵は涙を浮かべて首を振った。「佳代さん、もう私のことで心配しないで。たとえ一生家族が見つからなくても、佳代さんがそばにいてくれれば、それだけで十分なの」

「この子は、何を馬鹿なことを言ってるの」

陽葵はそっと涙を拭って病室を出ると、裕子にお金を借りようと電話をかけた。

しかし使用人によれば、裕子は友人と海外へバカンスに出かけており、いつ帰ってくるか分からないという。

陽葵にはどうすることもできず、蒼真を訪ねるしかなかった。

蒼真は不在で、代わりに栞奈がいた。

交通事故に遭って以来、蒼真は彼女を邸宅に迎え入れて世話をしており、ここの使用人たちも彼女に対して恭しく接し、まるで彼女こそがこの家の主人であるかのようだった。

「蒼真をお探し?彼なら私のために新鮮な鯛を買いに行ってくれたわ。骨の回復にはカルシウムが一番だからって、わざわざ自分で一から丁寧にあら汁を作ってくれるって張り切っちゃって」

「じゃあ、ここで彼を待つわ」陽葵は諦めきれなかった。

栞奈は鼻で笑った。「陽葵、蒼真にまとわりついて楽しい?彼はあなたのことが嫌いだって、顔を見るだけで鬱陶しいって私に言ってたわよ。紙切れ一枚の婚姻届で彼を縛り付けられるとでも思ってるの?彼は一生あなたには指一本触れないって約束してくれたわ」

陽葵は驚愕した。蒼真が夫婦間のそんなことまで栞奈に話しているとは思わず、恥ずかしさと怒りが込み上げた。

栞奈は彼女のそんな様子を見て、さらに得意げになった。

「蒼真が教えてくれたのはそれだけじゃないわ。彼があなたを罵った言葉の数々、一言一句まで私に話してくれたの。これで彼がどれだけあなたを嫌っているか、よく分かったでしょう?」

陽葵は深く息を吸い込んだ。「じゃあ、あの2年間、誰が彼を看病していたか、あなたは蒼真に言う勇気はあるの?」

栞奈はあざ笑うように肩をすくめてみせた。「あなたと彼のお母さんが、もう彼に話したんでしょう?彼が信じないのに、私にどうしろって言うの?陽葵、認めなさいよ。あなたはただの身代わりで、一生私には勝てないのよ」

陽葵は夜の8時まで待ち続け、ようやく蒼真が足早に帰ってきた。

外は風が吹き荒れ、陽葵は寒さで震えていた。彼女が前に出て蒼真に事情を説明しようとしたその時、栞奈が走り出てきて、哀願するように彼女の腕にすがりついた。

「陽葵、私のネックレスを返して!あれは私が生まれた時にお母さんがプレゼントしてくれたものなの。お願いだから、返してちょうだい!」

陽葵は訳が分からず当惑した。「何のネックレス?あなたが何を言っているのか全く分からないわ」

「今日私がつけていた三日月のネックレスよ!さっきあなたに会った後になくなっちゃったの」

蒼真は陽葵の腕を荒々しく掴んだ。「数日見ないうちに、泥棒の真似事まで覚えたのか?」

「盗んでなんていないわ」

「じゃあ何をしに来たんだ?」

「私……」陽葵は少し言葉を濁した。「お金を借りに来たの。私がコンクールを辞退すれば、お金をくれるって言ったでしょう?辞退するわ。もし私をまだ邪魔だと思うなら、今すぐあなたと離婚してもいい。私はただ1億円が必要なだけよ」

今は何よりも佳代の命が重要だった。

蒼真は複雑な表情を浮かべた。「ただ1億円だと?ずいぶんと大口を叩くようになったじゃないか、陽葵。いつから1億円すら端金のように見下すようになったんだ?」

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