愛人優先で愛娘を死なせた爆弾専門家の夫第3話
この話は約1565字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
私は絶望でスマホを見つめ、何度も何度もごめんなさいと繰り返す。
「結衣、お母さんが役立たずばかりで……」
それも私が人を見る目がなく、愛する相手を間違えたせいで、結衣に責任感のある父親を見つけてあげられなかったからだ。
私の心の中の張り詰めていた糸が、完全にぷつりと切れる。
……
結衣の骨壷を抱いた時、声が枯れるほど泣き叫ぶものだと思っていた。
しかし、そうはならなかった。
私はただ、呆然と大通りを歩いている。
家の前に着いた途端、カメラやマイクを持った大勢の記者たちにぐるりと取り囲まれる。
私は訳が分からないまま凛斗を見る。
「被害者の家族として、星野さんに直々礼を言うべきなのでは?」
「もし星野さんが時間を稼いでくれっていなければ、娘さんはとっくに爆発で亡くなったんじゃないですか」
絶え間ないフラッシュの中で、私は正気を失ったように凄惨に笑い続ける。
凛斗に引きずられるようにしてカメラの前に立たされ、私はようやく自分の声を取り戻す。
「結衣はもう死んだわ。誰に助けてもらう必要もなくて」
それを聞いて、凛斗の顔に不機嫌な色が広がる。
「琴音、お前は一体何のでたらめを言ってるんだ?
陽菜の顔に泥を塗るのに、娘が死んだなんて嘘をつくのか?
それでも母親か」
言い終わるや否や、凛斗は怒りに任せて腕を大きく振り払い、骨壺を地面に叩き落とす。
耳の奥で、再び激しい耳鳴りがする。
私はどさりと地面に跪き、泥混じりの遺灰を両手でかき集める。
結衣は生前、あんなにきれい好きだったのに。
頭上からは、凛斗が感謝を述べる声と、有頂天になった陽菜の甲高い笑い声が聞こえてくる。
「今回の任務に星野さんがいなければ、結衣が助かることはありませんでした。
彼女がこの業界でさらに飛躍することを願っています。
俺も根気よく指導し、後継者として立派な専門家に育て上げるつもりです」
結衣はもう死んだというのに。
そして父親である彼は、満面の笑みで人殺しに感謝しているのだ。
あまりにも狂っている!
鳴り止まない熱烈な拍手の中、独占インタビューが終わった。
凛斗がこちらを見下ろし、あざけるように冷笑を漏らす。
「そこでずっと狂ったふりでもしてろ。
結衣には陽菜みたいな、素直で勇敢な母親の方がお似合いだ!」
あっという間に、私が地面に這いつくばって遺灰を集める姿は「土下座して感謝している」ように編集されてしまった。
資格すら取っていない陽菜は、一晩にして特例で「天才専門家」「ヒロイン」として祭り上げられる。
ネット上では凛斗と陽菜のコンビが「赤と青のバディ」までと持て囃されている。
【氷室さんは一生女の弟子は取らないって言ってたのに、星野さんだけは特別なんだね。このコンビ尊すぎる!】
【氷室の奥さん、全然感謝してないじゃん。星野さんが娘を助けてくれたのに、なんであんなに恨めしそうな顔してんの】
【星野さんが爆発時間を縮めたとかデマ流してるし。こういう嫉妬丸出しのヤツ、早く氷室先生から離れてくれないかな】
……
凛斗はその状況を大いに楽しみ、反論の一つも発しない。
私はネット記事のコメント欄でこう投稿した。
【末長くお幸せに】と。
すると彼は私のスマホを叩き落とし、氷のように冷たい視線を向けてくる。
「こんな時までふざけてるのか?
やっぱり結衣のことなんかこれっぽっちも心配してないな。
ただ娘を利用して俺の気を引きたいだけだろう!
あと一時間ちょっと残ってるが、結衣を助けたくないなら好きに騒いでろ!」
言葉を吐き捨てると、凛斗は陽菜の手を引いて背を向けた。
ちょうどその時、彼の助手が慌てて部屋に駆け込んでくる。
「氷室様、たった今本部から連絡が入りました。
被害者が一名爆死したため、公の場での謝罪を求められています」
凛斗はハッと動きを止める。
「いつの話? 新しい任務なんて聞いてないぞ。
被害者ってどこから出てるんだ?」
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R94522- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。