愛人優先で愛娘を死なせた爆弾専門家の夫第2話
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しかし、目の前にいる彼は、もうあの日の彼と重なることはできない。
私が深い悲しみに暮れるのを見て、陽菜は凛斗の後ろに隠れ、こちらへと挑発的な表情を浮かべた。
彼女は明らかにわざとやっているのだ!
我に返った時、私の両手はすでに彼女の首を絞め上げていた。
だが次の瞬間、凛斗は慌てて起爆装置を押してしまう。
閃光が走る最中、心にはただ一つの望みだけ。
私と結衣には、もうこの男が必要ない!
――ドカン!
体に縛り付けられていた爆弾の威力は小さかったが、破片は容赦なく皮膚を突き破る。
無数の矢で射抜かれたような痛みが、全身にびっしりとやってくる。
それなのに、凛斗は真っ先に飛び出して庇ったのは陽菜なのだ。
「琴音、陽菜の首を絞めてどうする気?頭がおかしくなったのか」
破片が陽菜の手をかすめた。その傷口はほとんど見えないほど小さいのに、彼はひどく焦って眉をひそめる。
その心配そうな表情は、少し前に私が指を切った時と同じだった。
あの時も彼は同じように緊張し、私に絆創膏を貼ってくれたのだ。
「自分の妻に怪我をさせたなんて、もう生きてる価値がないな。
これからは俺に任せてくれ」
しかし今、彼は陽菜に対しても同じように優しく接している。
血まみれの顔で立ち尽くす私は心が、無数の刃でえぐられるように痛む。
目の前の光景が突然ぼやけ、闇へと深く沈んでいった。
再び目を覚ますと、すでに病院のベッドに横たわっている。
「琴音、お前のわがままのせいで、陽菜が手に怪我をしたのが分るか?
専門家となるのに差し支えるだろうが」
私は凛斗の怒号を無視し、必死にスマホを探し回る。
爆発までのカウントダウンは、もうあと三時間しか残っていないんだ!
私は半ば取り乱し、凛斗の両腕を揺さぶる。
「本当にあと三時間しかないのよ。結衣を見殺しにする気なの?」
凛斗は嫌悪感を露わにして私を振り払う。
あと三時間まであるから、爆弾処理には十分すぎる時間だと彼は依然として考えているのだ。
「どうしても早く結衣に会いたいんだな?
ならいいだろう。その手の皮膚を陽菜に移植しろ。罪滅ぼしだと思え」
その言葉を聞いた瞬間、私は迷うことなく両手を差し出した。
「私の皮膚ならいくらでもあげる。だから、一時間早く結衣を助けに行って」
狂ったような私の様子を見て、凛斗は思わず眉をひそめた。
しかし、彼は何も言わなかった。
皮膚の生理活性を保つため、凛斗は医師に麻酔を使わせなかった。
生理的な涙がせきを切ったようにとめどなく溢れ出るが、私はただ時計を見つめ続ける。
一分一秒ごとが、まるで一年のように長く感じられた。
移植が終わると、医師に包帯を巻いてもらう暇すら惜しみ、私は凛斗の服の裾を強く掴む。
「これで結衣を助けに行けるわよね? もう行かないと本当に間に合わなくなる」
血が彼の腕に落ちると、彼は汚いものでも見るように身をかわす。
そしてゆっくりと血の跡を拭き取った。
「俺たちが早く現場に到着したら、陽菜の判断が間違っていたと証明することになるだろ。
彼女のこれからの立場はどうなる? 賞を取るどころじゃなくなるんだぞ。
少しでも待ってはくれないとは。お前みたいな甘やかした母親じゃ、結衣はとっくに息が詰まってるかもな」
その後、凛斗が目配せをすると、医師が麻酔薬を手に私へと歩み寄ってくる。
「少し頭を冷やせばいい」
「やめて……」
わずか1秒ほどもがいただけで、瞼が重く落ちていく。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
スマホから響く耳をつんざくような爆発音で、瞬時に目が覚める。
巨大な恐怖が、私を完全に呑み込む。
結衣の色白の肌は血に染まり、体は爆発で無惨な様子となった。
彼女は残された最後の息を振り絞ってカメラを見つめ、苦痛に歪みながらも気丈な笑顔を私に向けた。
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