愛人を家に連れ込んだ夫を刑務所送りにした話第3話
この話は約1556字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
渉と真凛が戻ってきたのは、翌日の昼過ぎだ。
真凛の手には、高級ブランドの紙袋がずしりと下がっており、その顔には満ち足りた笑みを浮かべている。
ソファに座っている私を見ると、彼女はわざわざ袋を目の前に差し出した。
「あら、柚木さん。見てください、社長がこれ全部私に買ってくださったんです。こんなにたくさん持っても使いきれませんけど。フフフッ、せっかくですから、柚木さんも一つお選びになりません?私、気前よくプレゼントしますから」
それは私が以前「いいな」とつぶやいた、シーズン限定のバッグだった。
あの時、渉はなんと言ったっけ?
「こんなバッグ、見栄えだけだ。君は外出も好きじゃないんだから、買っても無駄だよ」
その「無駄」なバッグが今、真凛の腕に掛かっている。
ちらりと見ただけで、私は言った。
「いいですね。青沼さんに似合ってます。
シーズン限定ですから、欠陥品か何かじゃない限り、中古市場にはまず出回らないんですよね。
青沼さん、そういう『訳あり品』を見つける嗅覚、さすがですね」
真凛の笑みが引きつり、目尻が一瞬で赤くなった。
「ごめんなさい、柚木さん……だって、これは社長が……私がトレーニングで大変なのをわかってくれて、心を込めて選んでくれたものなんです!もし私のことで柚木さんがお気を悪くされるなら、私は……」
彼女は唇を噛み、深く傷ついたような表情を見せた。
「……でもお願い!せめて社長の心だけは、踏みにじらないでくださいませんか」
渉の表情が暗くなり、車のキーをガシャンとテーブルに叩きつけた。
「柚木、何をでたらめ言ってる!これ、正規店で買ったんだ。レシートだってある!」
私は無邪気に目を瞬かせた。
「あなた、怒ってるの?
でも、私ただ何気なく言っただけよ。だって青沼さんって雰囲気……確かに、地に足がついていらっしゃるもの。
てっきり、倹約家の方かと」
真凛は辱められながらも涙をこらえる様子を見せた。
渉は彼女をぎゅっと抱き寄せた。
「妊婦とやり合わなくていい。あいつ、今はホルモンのバランスがおかしいんだから」
そう言うと、彼は私を振り返り、失望に満ちた目を向けた。
「柚木、人の好意を、わざわざ悪く取る必要あるか?」
私はうつむき、目元の冷たさを隠して従順に振る舞った。
「ごめんなさい。ただ一人で家にいると、つい考えすぎちゃって……」
そして、何げなく切り出した。
「ねえ……渉の会社で働いていい?あなたの役に立ちたいな」
渉は一瞬たじろぎ、眉をひそめた。
「そんなことしなくていい。赤ちゃんのことを考えて、ゆっくり休んでろ」
彼のそばに寄り、袖を軽く引っ張った。
「でも医者が、妊婦も適度に外に出たほうがいいって言うの。ずっと家にこもってるのは良くないって」
渉はまだ首を縦に振らなかった。
私は、媚びるような口調でねだった。
「あなた、お願い。行かせてよ。ただあなたの側にいさせて。お茶入れたり、何か手伝ったりするから。ね?」
明らかに、彼はその態度を気に入った。
かつての私は、誰もが手の届かない吉野家の令嬢だった。
何不自由なく、人に仕えられて育ってきた。
だが今、彼に仕えることを哀願している。
この優越感が、渉を満たしたようだ。
それに、私を会社に置いておけば、家で真凛にちょっかいを出す心配もないと思っているようで、しばらく考えた後、渉はしぶしくうなずいた。
「……わかった。ただし、会社ではしっかりしろ。上司と部下の区別はつけるんだ!
無理あるなら、やめて家に帰ってもいいから、体を壊すなよ」
私は嬉しそうに何度もうなずき、目を輝かせた。
「ありがとう!絶対役に立つから!」
渉は軽く鼻で笑うと、二階へと上がっていった。
彼の背中が見えなくなるのを待ち、私の笑顔は消えた。
そばにいるだけ? 渉、すぐに思い知るだろう。
自分が、いったいどんな危険を呼び込んだのかを。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R56934- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。