愛人を家に連れ込んだ夫を刑務所送りにした話第1話
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妊娠が判明したその日、私・吉野柚木(よしの ゆずき)は、何気なく夫・高城渉(たかぎ わたる)の車載レコーダーを確認すると、映し出されたのは――彼と、あのヨガインストラクターとの、車中での情事だった。
画面の中の渉は、私が聞いたこともないような卑俗な言葉を、興奮に任せて吐き散らしている。
映像を見せて問い詰めた。彼は一瞬たじろいだが、すぐに言い訳めいた口調に変わった。
「医者に言われただろ?妊娠の安定期まではダメだって。君と赤ちゃんのことを思えばこそ、外で解決したんだ!
所詮はその場限りの遊びだよ。俺の心はいつだって、君だけに向いているんだから……」
この、開き直ったような口ぶりに、吐き気がこみ上げてきた。
この腹の中の命を、私を縛る鎖にしようというのか。
そっと手を下腹に当て、俯いたまま薄く笑った。
「うん、わかった。信じるから」
遊びたいなら存分に遊べばいい。私が、とことん付き合ってやる――心の中で、静かに、そう呟いた。
* * *
妊娠が判明したその日、私・吉野柚木(よしの ゆずき)は、何気なく夫・高城渉(たかぎ わたる)の車載レコーダーを確認すると、映し出されたのは――彼と、あのヨガインストラクターとの、車中での情事だった。
画面の中の渉は、私が聞いたこともないような卑俗な言葉を、興奮に任せて吐き散らしている。
映像を見せて問い詰めた。彼は一瞬たじろいだが、すぐに言い訳めいた口調に変わった。
「医者に言われただろ?妊娠の安定期まではダメだって。君と赤ちゃんのことを思えばこそ、外で解決したんだ!
所詮はその場限りの遊びだよ。俺の心はいつだって、君だけに向いているんだから……」
この、開き直ったような口ぶりに、吐き気がこみ上げてきた。
この腹の中の命を、私を縛る鎖にしようというのか。
そっと手を下腹に当て、俯いたまま薄く笑った。
「うん、わかった。信じるから」
遊びたいなら存分に遊べばいい。私が、とことん付き合ってやる――心の中で、静かに、そう呟いた。
渉は一瞬呆然としたが、すぐに大喜びで私を腕の中に引き寄せた。
彼の体に染みついたタバコの匂いと、濃厚なクチナシの香りが混ざり、甘ったるくて胸がむかむかした。
私は吐き気をこらえ、うなずいた。
「ええ、赤ちゃんのためなら、何でも我慢する」
渉は私を離し、さっきの口論で乱れたネクタイを直した。
「やっぱり君はしっかりしてるよな!ちょうどよかった、サプライズを用意してたんだ」
彼は振り返り、外に向かって呼びかけた。
「真凛、入ってきて」
ドアが開き、タイトなヨガウェアに身を包んだグラマラスな女性が入ってきた。
正にあの録画の主役、青沼真凛(あおぬま まりん)だ。
彼女は着替えていなかった。はだけた胸には無数のキスマークが生々しく、頬の赤みもまだ引いていない。どんなに強い香水も、あのいやらしい情事の匂いを消しきれない。
真凛は私を見つめ、挑発と得意げな表情を隠そうともしない。
渉は彼女の手を取って、あっけらかんと紹介した。
「君のために、特別にプロのマタニティヨガインストラクターを手配したんだ。
こちらは青沼真凛さん、これから、指導しやすいようにうちに住み込んでもらうんだ」
手のひらがじんと痛んだ。
愛人を家に連れ込み、しかも私のためだと言い張った。
渉、あなたは「厚かましい」の極みだね。
真凛は腰をくねらせて私の前に歩み寄り、上から下までじろりと見下ろした。
目線はまだ膨らんでいない私のお腹で止まり、軽蔑混じりの笑みを浮かべた。
「柚木さん、お顔色があまり良くないようですね。これからは私の指導通りにしていれば、きっと高城社長の大事な赤ちゃんを、丈夫にお産みになれますから」
彼女は特に「高城社長の大事な」という部分に強くアクセントを置いた。
まるで、この腹の中の子が私の子供ではなく、彼女が渉に功績をアピールするための道具であるかのように。
渉がそばで調子を合わせた。
「そうなんだよ、真凛は本当にプロだから。さっき車の中でも……君の体調に合わせた細かいプランについて、真剣に話し合ってくれてたんだ」
どこまでが「話し合い」で、どこからが「授乳体験」だったの?
眼前の息の合った破廉恥な二人を見つめ、心底では憎悪が猛り狂っている。
だが、顔には作り笑いを浮かべ、声は普段通りを保った。
「青沼さん、これからはよろしくお願いします」
渉はそっと私の頭を撫でた。
「そうこなくちゃ。いい子だ」
まるで、わがままを言うペットをなだめるように。
「真凛はまだ食ってないから、何か作ってきて。あっ!味は薄味でな。彼女、体づくりしてるから脂っこいのはNGなんだ」
渉は当然のように指示し、私が妊婦だということも、ましてや今がつわりで最も辛い時期だということも、完全に忘れている。
当然のように、私に愛人のための食事の支度をさせる。
憎しみをぐっと飲み込んだ。いつか必ず、この恨みが彼を斬る刃になる。
「うん、わかった」
私は振り返り、キッチンへと向かった。
背後から、真凛の甘えた声が聞こえてきた。
「奥様って、本当に言われた通りに動くわね。社長の言うことには、まるで忠犬みたいに従順なんだもの。まさか、夜の生活でも、そのままなんだか?!つまんないな~」
渉がクスリと笑った。声には侮蔑がにじんでいる。
「あいつはベッドではラブドール以下だよ。君みたいな小悪魔ちゃんとは比べ物にならない。俺が干からびそうになるほど貪りやがって……」
服が裂ける音とともに、真凛が小さく喘いだ。「社長……奥様が近くにいるのに……」
「知ってて誘惑してくるからだろ……」渉は声を潜めたが、むせ返るような濃厚なキスの音はむしろ大きく響いた。
真凛の淫らな喘ぎ声はますます大胆になり、激しい動きに合わせて途切れ途切れになっている。「ねえ……奥様……気づいたり……しない……?」
「あいつに、そんな度胸はないさ」
私はキッチンのシンクの前に立ち、蛇口をひねった。
流れ出る水が両手を洗い流すが、心に染み付いた嫌悪は洗い落とせない。
彼が言ったのは「気づかない」でも「見逃す」でもなく、「度胸がない」だった。
彼は私が彼から離れられないと、心底から信じ切っている。だから、何の遠慮もない。
度胸がない?
私は蛇口を閉め、手を拭いた。
そんなに役者じみたことが好きなら、最後まで付き合おう。
スマートフォンを取り出し、産婦人科の田中(たなか)医師に電話をかけた。
「先生、あの計画を始動させてください――」
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