愛を捨てて、それぞれの道へ第3話
この話は約1437字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
会話を通じて、星弥も仕事を辞めたばかりだということが分かった。
若くて自由を追い求める彼の輝く姿を見て、心から羨ましくなった。一方の私は失業して失恋し、足元には空の瓶が散乱している。そんな情けない姿を見て、星弥はこう切り出した。
「一緒に海を見に行きましょう!気が合いますし、仕事からの解放記念として祝いに行きませんか?
ちょうど海に行きたかったんです!友達もみんな忙しいし、付き合ってください!」
彼の眩しい顔を見ていて、最後にいつ海に行きたかったかなんて忘れてしまったけれど、人生とは、いくつかの瞬間のためにあるのかもしれない。失業したからといって、何を恐れる必要があるのだろう。どうせ食いっぱぐれるわけでもない。
そうして私たちは隣町へ海を見に行った。
寄せては返す波を見つめていたら、珍しく心が落ち着いて、自然と会話が弾んだ。
星弥はとても気さくで、社会人特有のどろどろとした駆け引きに疲れていない、今の若い子特有の瑞々しさがあった。
朝から日が沈むまでずっと語り合い、一緒に夕日を眺めた。夢に満ちた彼の言葉に、ただただ感嘆するしかたがなかった。
「凛さん、過去に縛られる必要なんてないですよ。ソファで泥酔してる凛さんを見つけた時、本当にどうにかなったのかと思ってびっくりしましたから!」
あの日、私を見つけた時のことを面白おかしく話す彼につられて、私は思わず笑ってしまった。
急に気づいた。駿介との生活はすべてが枷だった。卒業してからずっと、駿介の会社のためだけに動いてきたのだ。
昼間は会社で働き、夜は帰宅して駿介の身の回りの世話を焼く。それでも彼は冷たくて、彼の気分次第で振り回されるだけの毎日だった。
駿介は、私と一緒に暮らし始めて間もなく、この関係を後悔するようになった。私が胸を弾ませながら、いつ入籍するのか尋ねたとき、彼はすぐさま冷や水を浴びせるような言葉を返してきた。
駿介は籍を入れたくなかった。彼の亡くなった父の遺言だから、仕方なく今の関係を保っているだけだと言われた。
家の中は亡くなったあの女性の思い出の写真立てだらけで、本当にひどく目障りだった。
少し動かしたり掃除したりするだけで、駿介は激怒した。
そんな長年の精神的消耗が、私の心を押さえつけていた。
星弥の若々しい顔を見ていて、私は力なく笑いながら、今までのことを話し始めた。
もともと私は弱音を吐くのが苦手だったし、何より関係が複雑すぎてどこから話せばいいのか分からない。自分が駿介にどんな感情を抱いていたのかすら、今はもう覚えていないけれど。
星弥は根気強く、私の支離滅裂な話を聞いてくれて、時折私に代わって憤ってくれた。
星弥と話した後は、ふっと肩の荷が下りた気がした。
出先での用事を終えると、私たちは一緒に例の貸家へ戻った。星弥はそこで、以前置いていった荷物を片付け始めた。中にはそこそこ大きな家電もあり、取り外すのに少し時間がかかった。
彼の忙しそうな背中を見ていて、彼と話せて本当によかったと改めて思った。
けれど、星弥には彼の夢と自由がある。私は彼の人生において、通り過ぎるだけの平凡な友達に過ぎないのだ。
それでも、私の話を聞いてくれて、前を向かせてくれたことには感謝しきれない。
ところが、部屋に入った途端、予期せぬ来客がいることに気づいた。
先頭に立っていたのは駿介のボディーガードだった。彼は私の姿を見ると丁寧に会釈をして、こう言った。
「宮城社長が、凛様にお戻りいただきたいとのことです」
「私を呼び戻したいって?」
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