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愛を捨てて、それぞれの道へ第1話

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会社の創立記念パーティーの日。私・藤原凛(ふじはら りん)は社長である・宮城駿介(みやぎ しゅんすけ)が、ついに私を副社長に抜擢すると発表してくれるものと期待していた。

ところが駿介は、隠していた愛人・白石紗雪(しらいし さゆ)を壇上に上げ、彼女を新しい副社長に任命すると発表した。

それだけではない。私が担当していた主力プロジェクトも、すべて彼女に奪われてしまった。

「凛さんは会社に欠かせない人材だからこそ、現場にいたほうが力を発揮できる」

冷酷な言葉が、駿介の口から放たれた。

周囲の社員たちが、一斉に私へ同情や嘲笑の視線を向ける。

私は騒ぎもせず、冷静に結婚指輪を外してデスクに置くと、駿介へ社員証を差し出した。

「そこまでしなくても大丈夫です。私が辞めて、あなたの愛人に席を譲ります」

駿介はまだ知らない。彼がずっと提携を望んでいた上場企業が、すでに私をスカウトしようとしていることを……

* * *

会社の創立記念パーティーの日。私・藤原凛(ふじはら りん)は社長である・宮城駿介(みやぎ しゅんすけ)が、ついに私を副社長に抜擢すると発表してくれるものと期待していた。

ところが駿介は、隠していた愛人・白石紗雪(しらいし さゆ)を壇上に上げ、彼女を新しい副社長に任命すると発表した。

それだけではない。私が担当していた主力プロジェクトも、すべて彼女に奪われてしまった。

「凛さんは会社に欠かせない人材だからこそ、現場にいたほうが力を発揮できる」

冷酷な言葉が、駿介の口から放たれた。

周囲の社員たちが、一斉に私へ同情や嘲笑の視線を向ける。

私は騒ぎもせず、冷静に結婚指輪を外してデスクに置くと、駿介へ社員証を差し出した。

「そこまでしなくても大丈夫です。私が辞めて、あなたの愛人に席を譲ります」

駿介はまだ知らない。彼がずっと提携を望んでいた上場企業が、すでに私をスカウトしようとしていることを……

「どういうつもりだ?」

駿介の声には不機嫌さが滲み、眉間に深い皺が刻まれていた。それでも、社員たちの前という手前、表面上は平静を装い、苛立ちを抑えて私に問いかけた。

今にも爆発しそうな彼の怒りがひしひしと伝わってきた。

場の誰もが、これから始まる修羅場を待ち構えるように、私を嘲笑の目で見つめている。

駿介が私に向かって社員証を突き返してきた。声のトーンは少しだけ抑えられている。

彼にしてみれば、これが精一杯の譲歩だったのかもしれない。

「白石さんに与えたのは形だけの肩書きだ。昔からの知り合いでな。しばらく会社にいてもらうだけだ。そのうち時期を見て、凛さんも副社長に推薦してやるから。

いい大人なんだから。子供っぽい意地を張るな」

しかし、私の心はすでに冷めきっていた。私は決意を込めて言い返す。

「いいえ、宮城社長。私はもう辞めたいだけです」

駿介の表情がみるみる曇った。多くの社員の前で公然と面子を潰されるとは夢にも思わなかったのだろう。

その様子を見ていた紗雪が、どこかか弱く、譲歩するような口調で割り込んできた。

「宮城社長……凛さんは会社にとってなくてはならない方です。そんな方が急にこんな形で辞めるとなったら、周囲のみなさんも内心では思うところがあるはず……私は現場から学び直しますから。彼女にその役職をお譲りください」

けれど紗雪の控えめな主張を聞けば聞くほど、駿介は苛立ちを強めた。「白石さん、謙虚になりすぎる。白石さん以上に適任な人なんていない。俺がそう判断して、その席に据えたんだ。もし誰かに何か言われたら、直接俺に言いに来させればいい」

社長にそこまで言われては、周囲の社員も黙らざるを得ない。皆、恐る恐る駿介の意向に従う旨を伝えた。

続いて駿介は私を睨みつけ、言い捨てた。「凛さん、言いたいことは言った。やるならやれ。やらないなら出ていけ」

私は皮肉な笑みを浮かべた。

やはり彼にとって私の存在は、どんな新米社員よりも価値が低いのだと痛感した。

私の返事も待たず、駿介は言葉を続ける。

「白石さん、俺の隣に座って。記念式典を再開しよう。各部署の責任者も紹介したいから」

一瞬にして、私はまるで忘れ去られた道化のように、行き場を失い佇んだ。

周囲からの同情とも嘲りともつかない視線が、突き刺さるように感じられた。

私は迷わず、背を向けた。

「その扉を出たら、二度と戻ってくるな!」

駿介の怒りを帯びた声が背後から響いた。

私は耳を貸さず、そのまま会場を後にした。

扉を出てすぐに、数人の同僚がわざとらしい気遣いを見せて近づいてきた。

すでに会場のやり取りを耳にしていたのだろう。

「凛さん、そんな歳になって……いま、まずは会社に残ることを考えるべきじゃない?」

「きつい言い方で悪いけど……女性でその年齢、今更失業して何ができるのよ。今の新卒たちは優秀だしねえ。その年齢で、誰が雇ってくれるっていうのよ」

彼らのうわべだけの顔を見ていると、駿介の庇護がなければ何もできない女だと思われているのがありありと伝わってくる。彼から離れれば、家事しかできない女に過ぎないのだと。

私は立ち止まった。その頃、会議室のほうも会議が終わったようだった。

背後から聞こえる、駿介の邪魔な人間を排除できたことを称える笑い声。さらには、私を結婚関係から追い出すべきだと駿介に勧める声まで聞こえた。

私は振り返り、澱んだ空気に満ちた会社と、偽善にまみれた顔ぶれを見渡した。

強烈な疲労感に襲われ、私は大きく息を吐き出した。

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