愛は東から西へ第3話
この話は約1013字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
母の術後五日間、私は一度も修也にメッセージを送らなかった。
以前だったら、彼が出張中であると私は毎日たくさんの注意事項を伝えていた。
仕事でよく夜更かししていないか、取引を成立させるために酒席で人と酒を飲み比べていないかと心配していた。
たとえメッセージを送って彼が適当な返事をしか返ってこなくても、私はこの八年間ずっと続けてきた。
しかし今、私はまったく気にしなくなっている。
電話が机の上で鳴り続けている。なんと修也が自ら電話をかけてきた。
「菜月、どうしてこの数日間メッセージをくれなかったんだ?
母さんが手術終わってばかりで、彼女の体が心配だって知ってるだろうに」
悪人が先に訴えるとはこのことだ。ここまで聞いた私は思わず軽く笑ってしまう。
「本当に心配しているなら、どうして五日も経ってから聞くの?」
修也は少し言葉に詰まってから私を怨んだ。
「菜月、俺は本当に出張で疲れてんだよ。もうわがまま言わないでくれないか。
フランスからスカーフを買ってきたんだよ。服のコーデに使いたいって言ってたじゃないか」
彼が今日パリのデパートを回ったことを私は知っている。
三時間前、彩羽がSNSを更新していた。
SNSには色々なブランドのバッグを写った写真を載せてあり、その隅にいくつかのスカーフが無造作に置かれている。
それらのスカーフは、彼女がバッグの合わせ買いのために、店から選んだおまけだと思う。
私は冷淡に断った。
「結構よ。彩羽さんにあげなよ。スカーフはバッグによく似合っている」
電話の向こうの修也が完全に沈黙したあとに怒りを爆発した。
「またそんな嫌味ばかり言って!
彩羽ははるばるフランスまで出張に付き合ってくれたんだ。労うためにいくつかバッグを買ってあげて何が悪い!
菜月、自分がおいくつだと思ってるんだ?まだ小娘と張り合うつもりか?」
以前だったら、私はすでにこれらの言葉に刺されて全身が震え、ヒステリックに言い争っていたはず。
修也はいつも余裕を持って私の醜態を見て、最後に「この結婚、まだする気ある?」と聞いてくる。
その言葉を聞くたびに、私は抑えきれずに慌てふためき、思わず頭を下げて彼が慈悲深く私を許すように謝っていた。
しかし今回の私は異常なほど冷静にしている。
私は腕時計を見て、淡々と答えた。「どう思おうと勝手だよ。用事があるから、これ以上あなたと雑談をしてはいられない」
修也の言いかけの言葉を無視して、そう言ったあとに彼の電話をきっぱりと切った。
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