愛は恨みに、永遠の別れを第2話
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あの「方法」とは、つまり私が修治のために「心臓を差し出す」ということだった。
私自身の心臓を摘出し、医師が新たに作製した、まだ一度も臨床試験されていない人工心臓を私に移植する――そういう意味だったのだ。
その結果がどうなるか、私は痛いほどよく分かっていた。
それでも――兄が生きていてくれるなら、私は何だってするつもりだった。
思考が冷たい嘲笑によって現実に引き戻された。
修治は亜矢子を庇い、その瞳には彼女だけが映っている。
「喉乾いてないか?こんな恩知らずのゴミと話す必要はないよ」
「やっぱり俺の亜矢子は優しいな。俺のことを気遣ってくれてる。さすが、俺の可愛い姫だ。お前も、お前の飼ってる犬も、俺が全部守ってやる」
目の前の幸福な光景が、私の胸の奥を容赦なく締め付けた。
元々震えていた心臓が、ますます痛み出した。まるで大きな手に喉を掴まれたかのようで、私は息ができない。
もうこれ以上、二人のいちゃつく姿なんて見ていられない。
修治は一瞬ためらいながら手を伸ばしかけたが、私はそれをかわし、胸の奥にある苦い痛みと嫉妬をぐっと飲み込んだ。
だが、私が一歩踏み出した途端、亜矢子が突然私の肩を乱暴に突き飛ばした。
「どこ見て歩いてるの?私にぶつかるくらいならまだしも、体の弱いお兄ちゃんに何かあったらどうするのよ!」
左肩に走った痛みが胸にまで響き、頭がくらくらして、私はそのまま地面に崩れ落ちた。
口の端から血が滲んだ。
それを見た修治は眉をひそめ、本能的に私を抱き起こそうとした。
しかし、亜矢子はすぐに顔を強ばらせ、彼の胸に飛び込み、涙をぽろぽろとこぼした。
「お兄ちゃん……あの人、私のことすごく怖い目で見たの……!」
私の冷たい視線に気づいた修治の目が、暗く沈んだ。
「桑名遥香(くわな はるか)、みっともないことをするな!
金をせびるために血漿を使って俺を騙そうとするなんて――お前みたいな妹、吐き気がする!」
私は壁に手をつき、よろよろと立ち上がり、気にしていないふりをしながら唇の血を拭った。
「……いいわ。あなたが200万円だけ貸してくれたら、私はこの先一生、あなたたちの前から姿を消す」
修治の拳がぎゅっと握られ、次の瞬間、壁に叩きつけられた。鈍い音が響いた。
亜矢子は彼を抱きしめ、涙をこぼしながら私を見つめた。
その瞳には、憎悪と軽蔑が渦巻いている。
「お兄ちゃん、彼女だって自分の命をおもちゃみたいに扱う人じゃないはずだよ。
それに……昔はあなたの妹だったんでしょ?彼女がそんなこと……
幸いにも、あなたは善人の助けによって救われた。
――なら、その恩返しだと思って、少しだけ手を差し伸べてあげたら?」
その一言が修治の記憶を呼び覚ました。
彼が可愛がっていた妹、彼のことに巻き込まれるのを恐れて、結局彼を見捨て、命金を持って逃げた――あの苦しい過去を。
彼の目の奥に浮かんだわずかな哀しみは、たちまち深い憎しみに変わった。
「こういう、死ぬのが怖くて他人を踏み台にする卑怯者なんて、腐るほど見てきた。
……本当にそうだったとしても、自業自得だ!」
そう吐き捨てると、修治は亜矢子の手を引き、彼女の同情の言葉を遮るように立ち去った。
だが、彼は気づいていない。
その背後で、亜矢子の唇がわずかに歪み、嘲笑を含んだ笑みを浮かべた。
私の指先は無意識のうちに強く握りしめられ、爪が掌に食い込み、鈍い痛みが走った。
その痛みとともに、胸の中の人工心臓がかすかに震えた。
視界がかすみ、二人の姿はもう見えなくなっている。
――ピロン。
スマホが鳴った。
一瞬、何の音かわからず、私はぼんやりと画面を開いた。
そこには【手術費用の支払い完了】という通知が表示されている。
心臓が、再び抑えきれないほどに震えている。
胸元に刻まれた新しい傷跡は、古い傷を覆うようにして、焼けるような痛みを伴っている。
――私の、いちばん大切な兄。
彼はきっと知らないだろう。
彼を救って「善人」と呼ばれ、また彼に「卑怯者」と罵られたのも、すべて私自身だったということ。
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