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愛の残響第1話

この話は約2022字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

偶然にも、私は夫の秘密を知ってしまった。

それは、家の隅々にまで仕掛けられた無数の針穴カメラ。

私は何事もないふりを装いながら、じっと様子をうかがった。

ある日、私は外出するふりをして、こっそり物置に身を潜めた。

すると、静寂を切り裂くように、夫と愛人の甘い囁きが聞こえてきた。

桐生聡真は荒い息をつきながら言う。「急げ……羽純の治療時間は、たったの20分しかない」

彼の下にいる女がくすりと笑う。「何を怖がるの? どうせ半分しか見えてない女なのに」

その瞬間、聡真の声が鋭く響いた。

「お前に彼女のことを語る資格はない!

羽純は、俺の唯一の妻だ。 これ以上つけ上がるなら、出て行け!」

彼は知らない——私の目は、もう完全に治っていることを。彼と同じように、すべてを見通せる瞳に戻っていることを。

物置の扉をそっと押し開ける。震える指で、私は電話をかけた。

「お兄ちゃん……M国へ行くことにする」

* * *

二人の行為はぴったり二十分。一秒の狂いもなく、完璧に計算された時間配分——まるで、何百回も繰り返されてきたかのように。

西園寺美咲が服を整えようとした瞬間、聡真は長い腕を伸ばし、彼女を抱き寄せた。

彼の首にしなだれかかりながら、彼女は甘えた声で囁く。「聡真さんったら、また私が恋しくなっちゃったの?」

聡真は冷ややかな目を向け、そばに転がっていたレースの下着を拾い上げると、無造作に彼女の顔へと投げつけた。

「忘れ物だ。

急げ、羽純がもうすぐ戻ってくる」

その瞬間、美咲の笑顔が凍りついた。不満げに鼻を鳴らしながら、拗ねたように呟く。

「はいはい、私はどうせ藤崎さんには敵わないんでしょう?

でも、お腹の赤ちゃんがかわいそうね。まだ生まれてもいないのに、もう格下扱いされるなんて……」

赤ちゃん——その言葉を聞いた瞬間、聡真の表情が変わった。驚きと喜びが入り混じり、目を輝かせる。

「赤ちゃん?!妊娠したのか?!」

彼は美咲の顔に何度もキスを落とし、歓喜のあまり彼女を抱き上げ、くるくると回った。

そして何かを思い出したように、そっと彼女をソファに座らせると、大事そうにお腹に手を添えた。

彼の戸惑いが入り混じる優しい仕草に、美咲はくすくすと笑いながら、そっと彼の胸に顔を埋めた。

「二年だよ……そろそろ石にも花が咲く頃でしょ」

二年——

あの事故で視力を失ってから、ちょうど二年が経つ。

それ以来、目を開いても、世界はぼんやりとした影のようにしか映らなくなった。

聡真は柔らかく微笑みながら、そっと美咲を抱き寄せ、彼女のお腹を愛おしそうに見つめていた。

「羽純は俺の妻だからな。彼女が盲目になっても、さすがに無下にはできない。

でも、お前は俺の大事な人だ。格下扱いされるわけがないでしょう?」

その言葉に、美咲は頬を膨らませ、彼の胸を小さく叩いた。

「またそんな甘い言葉でごまかして!じゃあ、私の子どもは?世間に隠さなきゃいけない私生児のままじゃない!」

聡真は彼女の言葉に詰まり、一瞬考え込んだ後、静かに口を開いた。

「そんなことはない。俺の子どもは、当然、特別な存在だ。

生まれたら、羽純に養子として迎えさせる。

そうすれば、俺たちは正式な家族になれる。そして、彼は堂々と俺の後を継ぐことができる」

その言葉に、美咲の目が輝き、満足げな笑みを浮かべた。

私は、このすべてを聞いていた。背筋を這い上がるような悪寒が止まらず、膝が震える。

信じていた夫が、こんなにも冷酷に計算し、私を欺こうとしていたなんて。

扉が閉まる音が響いた。私は唇を噛みしめ、そっと物置の扉を開けた。

聡真は美咲を送り出した後、リビングに座る私を目にした瞬間、顔色を変えた。

「羽……羽純?!いつ帰ったんだ?」

「今日は出かけてないわ」

その一言で、彼の表情が強張る。

「そ、そうか……何か聞いてないよな?」

そう言いながら、彼は私の目の前で手を振った。

私は何も知らないふりをして、静かに首を振る。

「何も聞いてないわ。どうかした?」

私の目に変化がないことを確認すると、聡真の表情がふっと和らぐ。

私の隣に腰を下ろし、手をそっと握りしめながら、優しく囁いた。

「いや、大したことじゃない。さっき工事の人が来ててな、騒がしかったから……

羽純、俺は本当にお前を愛してる」

その後、彼はまるで何事もなかったかのように、私のために薬を煎じ、丁寧に吹いてから口元に運んでくれた。

彼の誠実そうな仕草を見て、一瞬、本当に今日の出来事は夢だったのではないかと思いかけた。

だが、次の瞬間、彼の一言が、私を現実へと引き戻した。

「羽純……俺たち、養子を迎えないか?」

血の気が引き、指先が冷たくなる。それを見た聡真は、焦ったように言葉を変えた。

「いや、嫌なら今は考えなくてもいい。気にしないでくれ。

ごめん、俺が急ぎすぎたな……怒らないでくれよ」

「考えなくてもいい」そんなものは、ただの時間稼ぎにすぎない。

だが、美咲のお腹の中の子どもは、待ってはくれない。

彼の「養子計画」は、すでに動き出していたのだ。

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