愛の反対第1話
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結婚式の1週間前、妊娠が発覚した私・黒崎栞(くろさき しおり)のもとに、見知らぬアカウントからメッセージが届いた。
差出人は、自分が7年後の私の子供だと言う。
【ママ、僕をおろして】
【僕は生まれつき両足が不自由で、ママとパパはいつも僕のことで喧嘩していた。結局ママは心の病気にかかって、薬を飲んで自殺しちゃったんだ】
【ママにそんな苦しい思いをしてほしくない】
私はすぐに病院へ行き、中絶手術を受けた。
藤原蒼佑(ふじわら そうすけ)は怒り狂い、病院に駆けつけて私と大喧嘩したあと、ドアを乱暴に閉めて立ち去った。
退院して家の前に着いた途端、中から蒼佑が執着している女、桐生遥(きりゅう はるか)の得意げな声が聞こえてくる。
「未来からのメッセージ?そんな馬鹿げた話を信じる人が本当にいるとはね。ふふっ。
たかがデタラメなメッセージ一通で、自分の子供まであっさり捨てるなんて」
蒼佑は淡々とした表情で警告した。
「今回は大目に見てやる。次にまたこうして栞をいじめたら、ただじゃおかないぞ」
ドアの外にいる私は、異常なほど冷静だ。
もう二度と「次」はない。
あのメッセージが嘘だということは知っている。
けれど私自身は、嘘偽りなく、絶望に打ちひしがれた7年後からこの「過去」に戻ってきたのだ。
* * *
結婚式の1週間前、妊娠が発覚した私・黒崎栞(くろさき しおり)のもとに、見知らぬアカウントからメッセージが届いた。
差出人は、自分が7年後の私の子供だと言う。
【ママ、僕をおろして】
【僕は生まれつき両足が不自由で、ママとパパはいつも僕のことで喧嘩していた。結局ママは心の病気にかかって、薬を飲んで自殺しちゃったんだ】
【ママにそんな苦しい思いをしてほしくない】
私はすぐに病院へ行き、中絶手術を受けた。
藤原蒼佑(ふじわら そうすけ)は怒り狂い、病院に駆けつけて私と大喧嘩したあと、ドアを乱暴に閉めて立ち去った。
退院して家の前に着いた途端、中から蒼佑が執着している女、桐生遥(きりゅう はるか)の得意げな声が聞こえてくる。
「未来からのメッセージ?そんな馬鹿げた話を信じる人が本当にいるとはね。ふふっ。
たかがデタラメなメッセージ一通で、自分の子供まであっさり捨てるなんて」
蒼佑は淡々とした表情で警告した。
「今回は大目に見てやる。次にまたこうして栞をいじめたら、ただじゃおかないぞ」
ドアの外にいる私は、異常なほど冷静だ。
もう二度と「次」はない。
あのメッセージが嘘だということは知っている。
けれど私自身は、嘘偽りなく、絶望に打ちひしがれた7年後からこの「過去」に戻ってきたのだ。
……
リビングから、遥の笑い声が絶え間なく聞こえてくる。
「そう?蒼佑、本当にそんなことできるの?」
彼女は身を乗り出し、その真っ赤な唇を蒼佑の頬にそっと押し当てて、挑発的に眉を上げる。
「私を家に住まわせておいて、これ以上どうやって私をお仕置きするつもり?」
蒼佑の喉仏が何度も上下するのがはっきりと見える。ついに耐えきれなくなったのか、彼はいきなり手を伸ばして彼女の腰を抱き寄せ、自分の胸に押し付ける。
二人はそのままソファの上で熱いキスを交わし始める。
唇を離した時、遥の顔は艶めかしい赤みを帯びている。
私は目を伏せた。心臓が無理やりえぐり取られたかのようで、胸の奥を冷たい風が吹き抜けていく。
蒼佑は冷ややかな態度で、二人の唇の間に繋がった糸を拭い去る。
「手元に置いた方が、躾けるのに都合がいいからな。
お前が俺の母親を死に追いやり、栞の母親まで怒らせて、今もベッドから起き上がれないほど病状を悪化させた。その上、俺から子供まで奪ったんだな。絶対に許さないから」
遥は彼の胸先をツンツンと突き、意味ありげに言う。
「奥さんが怒るんじゃない?」
蒼佑はためらわずに答える。
「あいつは昔から聞き分けがいいんだ。お前とは違う。
遥、言っておくが、もし栞をいじめたら、俺は絶対に――」
遥はおかしそうに肩を震わせて笑う。
「絶対にどうするの?
奥さんが中絶したあの日のように、私を腰が立たないくらいにするつもり?」
彼女の言葉が鋭い刃となって、私の心に突き刺さる。
私は唇を強く噛みしめ、喉の奥に血の味がするのを感じた。
数日前、病院で蒼佑と喧嘩した時の言葉が蘇る。
どうしても外せない用事さえなければ、命に代えても絶対に子供はおろさせなかった、と。
その「用事」というのが、遥のベッドの上だったなんて。
胸が痛くて息ができなくなり、無意識に壁に手を突いて体を支える。
次の瞬間、中から蒼佑の少し慌てたような声が聞こえる。
「栞!どうしてこんなに早く退院したんだ?今……何も聞いてないよな?」
私は彼をじっと見つめ、静かな声で問い返す。
「何を聞いてほしいっていうの?」
彼は複雑な目つきで私としばらく見つめ合い、やがて安堵の息を漏らすと、私の手を引いて中へと歩き出した。
遥は私を冷ややかに一瞥し、さも当然のように命令する。
「蒼佑、奥さんにあなたたちの寝室を片付けさせて。私がそこを使うから」
蒼佑は体を強張らせ、低い声で私に説明する。
「栞、誤解しないでくれ。あいつを住まわせるのは、懲らしめるためだ。お前は少し我慢して、あの部屋を譲ってやってくれ。
知っての通り、あの性悪女は昔から手段を選ばない。怒らせて、またお前に手を出されたら困るから」
遥はまた笑い出し、得意げに私に向かって眉を上げる。
蒼佑もさすがにまずいと思ったのか、彼女を厳しく叱責する。
「遥!言っておくぞ!もし栞を傷つけたら、絶対に許さない!」
だが、そう口にしながらも、彼の体は反射的に遥の前に立ちはだかる。まるで私が彼女に何かするのを恐れているかのように。
私は耐えに耐えたが、結局我慢できずに聞く。
「じゃあ、私はどこに住めばいいの?」
蒼佑の顔に、一瞬だけ気まずそうな表情が浮かぶ。
彼が答えるより早く、遥は自分の綺麗に手入れされたネイルを見つめながら、どうでもよさそうに言う。
「もちろん、使用人部屋よ」
彼女は挑発的に蒼佑を見る。
「ねえ蒼佑、今回、私がどうして実家と喧嘩したか知ってる?
縁談相手をたくさん紹介されて、結婚を強要されてるのよ。だから、もうあなたとは遊ばないわ」
予想通り、蒼佑はたちまち慌てふためき、無意識に私の方を見る。
こんな彼を見て、私は自嘲気味に口角を上げ、彼より先に静かに口を開く。
「蒼佑、彼女と結婚した方が、もっと上手く復讐できるじゃない?
私たち、離婚しましょう。結婚式ももう挙げないから」
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