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愛とは繭を作ること第1話

この話は約1952字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私・橋本和紗(はしもと かずさ)のネット恋愛の相手である江口安英(えくち やすひで)は、姉・橋本寧々(はしもと ねね)の宿敵だ。

安英と姉は高校時代、席が隣同士だった。姉は学年一位で、彼は学年二位だった。

お互いに気が合わず、顔を合わせれば張り合っていたくせに、結局は二人とも地元の同じ大学に進学した。

休みのたびに帰ってくると、姉は何日もかけて私にその「宿敵」の愚痴をこぼしていた。

ところが今回は、珍しく笑顔でスーツケースを引きながら帰ってきた。

母がからかうように言った。

「今回はあの人の話をしないのね?ずいぶん機嫌がいいじゃない。まさか、何かあったんじゃないでしょうね?」

姉は笑いながら、母に金のネックレスを一つ手渡した。

「これ、お母さんの未来の婿さんが買ってくれたの」

その場にいた私は、その金のネックレスを見た瞬間、心臓がドクンと跳ねた。

スマホを開くと、安英とのチャット履歴は3日前で途切れたままだった。

彼が私に尋ねていた。

【どの金のネックレスが一番きれいだと思う?】

私はじっくり見比べて、その中の一つを選んだ。

それが、母の手にあるものとまったく同じだ。

姉が私に目を向け、突然尋ねてきた。

「和紗、大学入試の結果はもう出たんでしょう?どこの大学に行くか、もう決めたの?毎日スマホばかりいじってないでよ!

お母さん、和紗はまだしっかりしてないんだから、お父さんと二人でちゃんと考えてあげないと……」

母が手を振って何か言おうとしたとき、私は突然口を挟んだ。

「もう決めたの。S市に行きたい」

姉は一瞬ぽかんとした。

そして反射的に口を開いた。

「S市?そこって家から200キロ以上も離れてるんだけど」

* * *

「昔から臆病なんだから、そんな遠くに一人で行ったら、誰も面倒を見てくれないでしょう」

姉は眉をひそめて言った。

鼻の奥がツンとし、私はうつむいて、くぐもった声で言った。

「もう決めたの。あっちが経済的にも発展してるし、卒業したあとも仕事を見つけやすいから」

私の様子がおかしいことに気づいた姉は、それ以上何も聞かなかった。

母も唇を結び、少し驚いたような顔をしていた。

何しろ、私はこれまで一度も県外の大学に行きたいなんて言ったことがなかったから。

涙をこらえきれなくなりそうで、適当にいくつか返事をすると、私は逃げるように自分の部屋へ駆け込んだ。

私と姉が生まれたのは、たった数秒しか違わない。

それなのに、幼い頃から今まで、姉はずっと私より輝いていた。

私より話すのが上手で、人に好かれるのも上手い。

勉強だって私よりずっとできて、何度も飛び級した。

親戚たちは姉の話になると、口をそろえて「こんな娘がいて幸せね」と私たちの両親を褒めた。

けれど、私の話になると、決まって気まずそうに笑う。

聞き分けがよくて、親孝行で、手のかからない子――それが私の数少ない長所だった。

私の成績では、せいぜい普通の二流大学に進学するのが精一杯だった。

一方の姉は、小学校から大学まで、いつだって人の輪の中心にいた。

そして、姉と安英が関わり始めたのも、その頃からだった。

高校3年間、ずっと隣の席だった。

そして、姉は学年一位で、彼は学年二位だった。

どちらも相手に負ける気などさらさらなかった。

安英は姉のことを気に入らなかった。

いつも自分より一つ上の順位にいる姉が気に食わないうえに、何かと偉そうな態度を取るのも腹立たしかったらしい。

けれど、誰の目にも明らかだった。

口では姉を嫌っているくせに、彼の視線はいつも自然と姉のほうへ向いていた。

休みになるたびに、姉は私をつかまえて、何日も安英の愚痴をこぼした。

「子供っぽいし、口は悪いし、いちいち鬱陶しいのよ。あいつ、頭おかしいんじゃない?成績だって大したことないくせに、毎日私に張り合ってくるんだから」

私はその隣で、黙って話を聞いていた。

何度も聞いているうちに、安英という名前が、少しずつ私の心の中に入り込んでいった。

その後、あるゲームのライングループで、一人の口の悪い人と出会った。

ネット上の名前は「Q」だ。

文字を打つのが速く、口も悪い。

グループ内の誰かと口論になれば、一歩も引かない。

私はそれが気に入らなくて、彼に一言返した。

するとその日の夜、私たちはグループ内で何十通ものメッセージを飛ばし合って言い争った。

最後には、彼のほうから私を友達登録してきた。

最初の一言はこう書かれていた。

【ずいぶん口が達者だったのに、どうした?もう続きはないのか?】

そのとき、私はまだ腹を立てていた。

だから、こう返した。

【頭おかしいんじゃない?】

すると、彼から疑問符が一つ送られてきた。

そして、こう続いた。

【へえ。気の強い女だな】

それから私たちは、さらに2日間、言い争いを続けた。

そして3日目、彼は突然、私に尋ねてきた。

【ゲーム、やる?】

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