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愛で縛り付けないで第3話

この話は約1908字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

和子の目がぱっと見開かれ、瞳には収まりきらない不信感が満ちていて、声まで震えていた。

「何を言ってるか分かってるの?」

裕司は眉をひそめ、いらだち混じりの口調で言った。「ただのネックレスだろう?知子はお前の命を救うんだ。彼女にあげたっていいじゃないか」

体の横で握り締められた拳の指の関節が白く変色し、息をする度に胸の奥で重苦しい鈍痛が波打った。

和子は彼をぎらりと睨みつけ、一語一語が歯を食いしばって絞り出すように言った。

「これは両親が残してくれた唯一の形見よ。

あなたも知ってるはずでしょ。彼らを探すための唯一の手がかりなの!

他のものなら何でもあげる。これだけは絶対に駄目だ!」

裕司ははっとした様子で、ようやくそのネックレスが彼女にとってどれほど大切なものだったかに気づいたようだ。

知子が指先でネックレスを弄ぶ、あの愛おしそうな様子を目が掠めた途端、彼はさっと視線をそらし、声をふわりと宙に浮かせた。

「和子、何年探し続けてきた?ネックレスをずっと身に着けても、何の成果もないじゃないか?

それに、今は俺がお前の家族だ。そんな執着はもう捨てよう。

知子はお前の命の恩人だ。これはお前の借りだ」

和子の呼吸が一瞬止まった。

裕司がこんな言葉を口にするとは夢にも思わなかった。耳の奥でブンブンと鳴り響いて、まるで何かが少しずつ崩れていくような感覚だった。

抑えきれぬ感情が爆発し、彼女はほとんど叫ぶように言い放った。「もう骨髄なんていらない!私のものを返せ!」

言葉が終わらないうちに、彼女はもう飛びかかっていた。

裕司は反射的に知子の前に立ちふさがり、腕を振るって和子を押し飛ばした。

「和子、いい加減にしろ!」

彼の目には非難の色が満ちていて、まるで彼女が理不尽に騒いでいるように見えた。

知子は二人のやり取りを見て、ついに堪忍袋の緒が切れたとばかりに薄笑いを漏らした。「ただのボロネックレスじゃないか、そんなに大袈裟に騒ぐことか?」

手首をひらりと返すと、そのネックレスが手を離れ、パンと和子の足元に叩きつけられた。

ペンダントが砕けた瞬間、和子には世界がスローモーションに変わったように感じられた。

心臓が停止し、彼女は呆然と砕けた破片が自分の足元に転がるのを見つめていた。

その場が一瞬水を打ったように静まり返った。次の瞬間、和子は必死に立ち上がり手を伸ばして、パンという鋭い音が居間に響き渡った。

知子は頬を打たれて顔をそらし、完全に面食らった。裕司が最も早く反応し、和子をぐいっと突き飛ばした。

和子はよろめきながら後退り、腰が階段の手すりにぶつかった。そのままバランスを崩して後ろに倒れ、後頭部が段差の角にドスンと強打した。

温い液体が髪の毛先を伝わり、すぐに床に鮮烈な赤が滲み広がった。

和子の視界は次第に暗転し、下唇を噛みしめて痛みの声を押し殺した。

裕司は床に広がる血を見て顔色を失い、無意識に彼女へ手を差し伸べた。だが和子は階段に手を突いて這い上がり、彼の手をかわすとしゃがみ込み、震える指で破片を拾い始めた。

ちょうどその時、ハイヒールが容赦なく踏み下ろされ、まさしく彼女の手の甲を軋んだ。

激痛が一瞬で全身を走り、背中が冷や汗でびっしょりになった。

「知子、何してるんだ!」

頭上から裕司の声が降ってきたが、かすれた声に力はなかった。

知子は薄笑いを浮かべ、地面に丸めた和子を見下ろした。「理由もなくぶたれたんだから、何か取り返さないとね?」

そう言いながら、さらにヒールで踏みつけた。

骨が軋むほどだった。

和子は痛みで視界が揺らぎそうだったが、知子のスカートの裾越しに、躊躇いながら立ち尽くす男の姿を捉えた。

心底が凍り付いた。

歯を食いしばって手を引こうとしたが、肩に突然強い圧力がかかり、身動きができなくなった。

顔を横に向けると、ちょうど裕司の横顔と目が合った。彼は目を逸らし、かすかな声で呟いた。「和子、少し我慢しろ……知子の気が晴れれば済むことだ」

「結局、彼女しかお前を救えないんだから」

和子の心はどん底に沈んだ。

以前、彼女の指先に小さな傷がついた時、裕司は彼女の手を両手で包み、長い間息を吹きかけながら、自分の不甲斐なさを悔やんだものだった。だが今、彼は自ら彼女を押さえつけ、他の女に何度も手の甲を踏みつけさせている。

一粒の涙が目尻を伝い落ち、冷たい床に叩きつけた。

指先の痛みがどれほど鋭くとも、心臓を締めつけるような、彼女を飲み込もうとする鈍痛にはかなわなかった。

突然、脳を貫くような激痛が走り、温かい液体が鼻から流れ出て手の甲に垂れた。耳元の声は次第に遠のき、厚い水の底にいるようだった。

闇に沈む直前、彼女は裕司の狼狽えた顔をかすかに見た。

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