愛さなければよかった第1話
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夫の神前元紀(こうさき もとき)は、外で何度も女遊びしたにもかかわらず、どうしても離婚に応じてくれない。
彼の家族は、私のことを「ふしだらな女」だと罵った。
五年前、私が初めて離婚を切り出した時、元紀は何も言わず、ただ私を別荘に丸々一ヶ月間閉じ込めていた。
一ヶ月後、私は妊娠が判明した。
三年前、私が二度目の離婚を切り出すと、元紀はその夜のうちに実家へ戻った。
その直後、私は週に一度だけ子どもに会う権利を得た。
今日は三度目だ。私はようやくここから去ることができる。
なぜなら、私の子どもが私を愛していないこと、そして私たちの結婚自体が偽りであったことに気づいたからだ。
結局、私は外にいるあの愛人たちと何一つ変わらないのだ。
その後、再び顔を合わせた時、元紀はすぐに目を赤くした。
* * *
友人・伏見健一(ふしみ けんいち)の結婚式で採用されたのは、かつて私が自分のために練り上げたウェディングプランだった。
あの頃、私は半年もの時間をかけて式のすべての流れを計画したのに、神前元紀(こうさき もとき)はそれをわずか一分で却下した。
形式だけの適当な式の後、元紀は私にこう約束した。
「外でどんなに女遊びしても、俺の本当の妻はいつまでもお前だ」
そして今日、彼はこの結婚式に若い愛人を連れて現れた。
私が会場に足を踏み入れた瞬間、四方八方から刺すような視線を浴びせられた。
面白がるような目、品定めするような目、そして……同情の目。
元紀だけが相変わらず涼しい顔で言った。
「来たか」
彼の腕に馴れ馴れしく絡みつく少女、日笠梨々花(ひかさ りりか)を一瞥し、私は静かに頷き返した。
結婚して七年、元紀の浮気は今に始まったことではない。
そんなことは、とうに慣れっこだ。
健一も気まずそうだ。明らかに、この事態は想定外であろう。
「清子さん、よく来てくれたんだ。さあ座って、遠慮しないで」
私は控えめな笑みを浮かべ、その場を取り繕ってくれた彼に心の中で感謝した。
本来私が座るはずだった席は、既に埋まっている。あろうことか、私の席を奪ったその招かれざる客を、元紀が守っている。
彼は私をちらりと見ただけで、悪びれる様子もなく言い放った。
「席が埋まってるから、別のところに座れ」
長年にわたり全てを飲み込み、耐え忍んできた私は、従順であることが骨の髄まで染み付いてしまっていた。
「……わかったわ」
席に着いた瞬間、周囲の視線がいっそう遠慮のないものに変わったのを感じた。
健一は申し訳なさそうにしているが、中座する際にも家族に私への気遣いを頼んでくれた。
夫である元紀よりも、友人の彼の方がよほど私の気持ちを案じてくれている。
結婚式は予定通りに始まった。
新婦は私がデザインしたウェディングドレスを身に纏い、私がコーディネートしたバージンロードを歩んでいく。私が手に入れられなかった幸せのもとへと、嫁いでいくのだ。
何もかもが、かつて私が夢見た通りだ。
ただ一つ、その夢を叶えたのが私ではないという事実を除けば。
元紀の腕に寄り添う梨々花は若く、その表情は天真爛漫そのものだ。
「元紀さんから聞いたけど、清子さんって花道が得意よね?私にも花束を作ってくれないの?あの花嫁さんが持ってるみたいなやつがほしいの!」
その場の空気が一瞬にして凍りついた。同じテーブルの人々は顔を見合わせ、誰も口を挟めずにいる。
私は箸を置き、無意識のうちに元紀の方へ視線を向けた。
元紀は梨々花の頭を愛おしげに撫でながら、私に向かって尊大に顎をしゃくり、命じた。
「何ぼんやりしてるんだ?さっさと行って作ってこい」
面白がるようなその目を見て、私は一瞬言葉を失ったが、すぐに何も気にしないように笑みを浮かべた。
私は椅子を引いて立ち上がると、迷うことなく踵を返し、会場の出口へと歩き出した。
元紀は満足げに頷き、さらに追い打ちをかけた。
「手際よく頼むぞ」
私は何も答えず、歩調を緩めることすらしない。
会場を出てホテルの出口へ向かい、出口を抜けて大通りへ出た。
一度たりとも、振り返ったことはない。
道端のゴミ箱の前で、私は足に馴染まないレッドソールのハイヒールを脱ぎ捨て、中に放り込んだ。
自分に合わないものは、もう必要ない。
裸足で地面を踏みしめた瞬間、私は深く長い息を吐いた。
まるで、体に巻き付いていた見えない枷さえも、跡形もなく消え去ったかのようだ。
結婚して七年目にして、ようやく私は本当の意味で「地に足がついた」感覚を味わっている。
家に着いた途端、元紀から電話がかかってきた。
「たかが花束一つに、いつまでかかってるんだ?待たせてるのがわからないのか?」
私はテーブルの上の花を指先で弄びながら、気のない声で答えた。
「花束を作るなんて、約束した覚えはないわ。
それから、私ならもう家にいるわよ」
元紀は鼻で笑いながら言った。
「神前清子(こうさき きよこ)、お前いい度胸だな?」
「ええ、そうね」
彼の予想に反して、私はその言葉を素直に受け入れた。
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