愛が燃え尽きるとき第2話
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桜は奏太の初恋の彼女。
かつて彼を捨てて海外へ行き、心ごと持ち去った女。
「奏太、両親はあなたの家の事情を知って、私たちの交際に反対してるの。私だって仕方なかったのよ。お願い、這い上がって迎えに来て」
彼が再び頂点に立った時、彼女はLINEでこう送ってきた。
【奏太、決めたわ。家族と縁を切っても、あなたとやり直したい!】
私が桜と初めて出会ったのは空港だった。
彼女は私が奏太の袖を掴む手を振り払い、そのまま彼の胸に飛び込んだ。
「奏太!家族と絶縁したの!私たち、もう一度始めよう!」
それは十年で初めて、奏太の声に笑みが混じった瞬間だった。
「もう大人なんだから、落ち着けよ」
桜は鼻をくしゅっとさせて無邪気に笑いながら、首を傾げて私を見た。
「この人があなたに付きまとってるっていう、あの目の見えない子?」
そう言うと、彼女はタバコを一本取り出し、火を点け、赤く光る火先を私の手の甲に押し当てた。
私が火傷の熱に反射的に手を引き、思わず叫ぶと、彼女は楽しそうに笑った。
「避けないの?へえ、本当に見えてないんだ。
惜しいわね。自分が私にどれだけ似てるか、見れたらよかったのに」
私が苦しみに震えている間、奏太は彼女のタバコを取り上げただけだった。
「女の子が変なこと覚えるな。タバコは体に悪い」
桜は私の耳元に口を寄せ、ささやいた。
「偽物はどんだけ上等でも偽物よ。
偽物さん、そろそろ私の奏太を返してくれない?」
でも、あの時、私は諦めなかった。私たちは結婚したのだ!
私は彼の正式な妻だ!
しかしその夜、私は日が昇るまで彼を待っていた。
翌朝、奏太が家に戻ってきて荷物を取りに来たとき、彼の体からは桜の香水の匂いがした。
奏太は言った。「桜が帰ってきたんだ。お前はもう席を譲るべきだろ」
彼は離婚を望んだが、祖父の元秘書が忠告した。「もしご自身から離婚を申し出れば、佐野家の財産や会社の一切があなたの手から離れます。ただし、小松さんから別れを切り出せば別です……」
奏太は激怒し、私に無理やり離婚を迫ったが、私は首を縦に振らなかった。
私たちは喧嘩を繰り返し、奏太は家の中をめちゃくちゃに破壊した。
最後に彼は吐き捨てた。
「いいさ、見てろよ。お前がいつまでしがみついていられるか!」
彼はドアを乱暴に閉めて出て行った。私は荒れ果てた部屋で、黙って座っていた。
奏太は知らない。もし私が彼を諦めてしまえば、私が彼のために差し出したすべてが無に帰すということを。
今、私は鏡の中の自分を見ている。
奏太、私はもう行くわ。
……
私は体調が悪いと嘘をつき、桜の誕生日パーティーには行きたくないと告げた。だが奏太はすぐに拒否した。
「昨日人に噛みついて謝ってもないだろ!今日は桜の誕生日だ。きちんと謝れ!」
私は容赦なく車に押し込まれ、首の傷を掴まれて激痛が走った。
彼が私に謝罪を強いたのは、私が桜の腕を引っ掻いたからだ。
昨日、桜は誕生日パーティーの準備と称して仲間を集め、混乱に紛れて私をトイレに押し込んだ。
「このクソ盲目、あんたって本当にしつこいのね!
自分が奏太にとって特別だとでも思ってる?笑わせないで。
ここにいるみんな知ってるのよ。あんたなんて、私がいなかったからって我慢して抱かれてただけの、タダマンよ」
私の髪は何束も引きちぎられ、頭皮から血が滲んだ。呻き声は拳で喉元に叩き込まれ、掻き消された。
桜は冷笑を浮かべ、私の首を締め上げた。
「一言で、あんたを別の男のベッドに送るのなんて簡単なのよ?
山田社長とか、ずっといやらしい目であんたを見てるじゃない。
あ、見えないんだったね、あの脂ぎったハゲ頭も……」
息ができず、私は反射的に彼女の腕を引っ掻いた。
よろめきながら外へ逃げ出し、やっとの思いで奏太を見つけて泣きながら訴えた。
けれどその直後、背後から幽霊のように現れた桜の声が響いた。
「私、確かに気が強いけど、あんな言いがかりはひどくない?
目が見えないっていうから手伝ってあげたのに、私のことを不倫者って罵って、いきなり顔を引っ掻くなんて!」
彼女の声は周囲の注目を集めた。
「私は佐野とやり直したい。でも不倫じゃないわ!
小松、あんたこそ不倫者くせに、よくもまあ被害者ヅラできるわね!
目が見えないからって、周りも見えてないとでも思った?」
周囲の人々が同調し始める。
「桜ちゃん、もういいよ、こういう人ってさ、貧乏育ちでろくな経験してないから、少しでもいい男ができたらしがみつくんだよ」
「それに桜ちゃんがライバルじゃ、他に勝ち目ないからって、可哀想なふりしてるだけでしょ」
私は晒し者のように非難された。震える手で奏太の袖を掴み、命綱のように握りしめた。
でも彼は冷たく私の手を振り払った。「小松、もうやめろよ」
桜は上機嫌に寛大な提案をした。
「じゃあ、このお酒を飲んだら、許してあげる」
私がアルコールアレルギーだと知っていながら、奏太は冷たく言い放った。
「聞こえなかったのか?酒を飲んで詫びろよ」
その酒は、顎を掴まれて無理やり喉に流し込まれた。
次に意識が戻った時、私は見知らぬベッドの上で、熱にうなされていた。本能的な欲求に手探りで触れたのは膨らんだ腹だった。
奏太じゃない。
恐怖と混乱で逃げようと必死に抵抗するも、私はこめかみを強打され、意識が飛びそうになった。
両手を押さえつけられ、どう叫んでも、どう懇願しても無駄だった。
最後には弄ばれた人形のようにベッドに投げ捨てられた。
その瞬間、私はようやく理解した。奏太には、心なんてないんだ。
涙で潰れた声で、封印していたシステムを呼び起こした。
「家に帰りたい……」
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