息子の願いは、私を替えることだった第2話
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瑠璃が来た時、私は公園のベンチに座っていた。
「大丈夫?」
私は首を横に振ったが、赤く腫れたままの目元がすべてを物語っていた。
私は顔を上げて、瑠璃とその隣にいる男性を見つめた。
「どうしてあなたが?」
一条和也(いちじょう かずや)は心配そうに私を見ていたが、私の言葉を聞くと、不自然に表情をこわばらせて問い返してきた。
「なんだよ。俺は来ちゃいけないのか?」
瑠璃が間に入ってとりなした。
「和也が最近帰国したばかりなの。陽翔くんが病気だって聞いて、何か手伝えることはないかって。
ていうか、陽翔くんが病気じゃないって、どういうこと?」
私は知っている限りの真実を、淡々と彼らに話した。
瑠璃は激怒した。「あの親子、ろくなもんじゃないわね」
そう言って今にも乗り込んでいきそうな彼女を、私は慌てて引き留めた。
「もういいの、瑠璃」
瑠璃の目も赤くなっていた。
「このまま、あいつらを許すっていうの?」
私は首を横に振った。
「彼らがそこまでして家族になりたいのなら、そうさせてあげる」
しばらく慰めてもらった後、私は二人に家まで送ってくれるよう頼んだ。
この家に未練があったからじゃない。ただ、私のものを、こんな場所に残しておきたくなかっただけだ。
荷物をまとめ終えた頃、彰人から電話がかかってきた。
電話に出ると、彰人が言った。
「結婚式の会場、いい感じに仕上がってるよ。君も見に来ないか」
「行きたくないわ」
私の拒絶に、彼の声が一瞬途切れた。
「君が来ないと、陽翔がまた気を病む。せっかく病状が少し落ち着いて、元気が出てきたところなんだ」
私は反論せず、ただこう言った。
「陽翔にはもう約束したわ。今は、杏奈が陽翔の母親なのよ。
そんな場所に私が行くのは、おかしいでしょう」
彰人はためらいがちに尋ねた。「怒ってないのか?」
私は微笑んだ。
「まさか。息子のことなら、何だってしてあげたいもの。
陽翔にも伝えて。余計なことは考えず、自分の思った通りにしなさいって」
電話の向こうで、彰人はひどく感動したようだ。
「沙織、君のように物分かりのいい妻を持てて、俺は本当に幸せ者だよ」
さらに二言三言適当にあしらってから電話を切り、配送業者を呼んだ。
荷物の一部は瑠璃の家に送り、残りの一部は、そのままゴミ箱に捨てた。
すべてを片付け終えると、目立つ場所に置いてあった家族写真とアルバムが目に入った。
私は何の躊躇もなく、それを人気のない場所に運び、炎が少しずつ飲み込んでいくのを見つめていた。
アルバムを燃やし終え、ベッドに横たわると、全身から力が抜けていくようだ。
目の前を、たくさんの光景がよぎる。彰人が私に告白した日、陽翔が離婚してくれと私に懇願した日……
最後には、それらすべてが渦を巻いて歪み、病室で楽しそうに笑い合う三人の姿に変わった。
私は乱れる思考の中、深い眠りに落ちていった。
彰人の気配で、私は目を覚ました。
「なんて不用心なんだ。眠る時に布団もかけないで、風邪をひいたらどうするんだ?」
目を開けると、彼が私に布団をかけながら、ぶつぶつと小言を言っていた。
私は彼の顔をじっと見つめ、その優しく愛情深い仮面の下にある、本心を見透かそうとした。
私の視線に気づき、彼は尋ねた。「どこか具合でも悪いのか?」
私は首を振った。「結婚式の会場、準備はどう?」
「だいたい終わったよ。金さえあれば、どんなに時間がなくても何とかなるもんだ」
そう言うと彼は少し黙り、私の額にかかった髪を耳にかけてやりながら、優しく囁いた。
「この間は、本当に辛い思いをさせたな。
すべてが終わったら、必ず埋め合わせはするから」
その声があまりに優しくて、私は思わず目を赤くした。
彰人は私の手をぽんぽんと叩いた。「いい子だ、泣くな」
私が頷くと、彼はさらに二言三言私を慰め、部屋を出て行こうとした。
「結婚式のリハーサルで、まだやることが残ってるんだ……」
「彰人」
彼は振り返って尋ねた。「まだ何か?」
私はシーツを固く握りしめ、震える声で問いかけた。
「あなたと陽翔、何か私に隠していることはない?」
彰人の瞳に一瞬だけ罪悪感の色がよぎり、言葉を選ぶように、口を開いた。
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