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後悔のない人生を歩もう第2話

この話は約2229字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

咲夜が再び目を開けた時、すでに正午だった。

陸斗はいなかった。

彼女は目を開けても陸斗の姿を見ない生活に慣れていた。

咲夜は黙ってスマホを充電し、電源を入れた。

スマホが起動すると同時に大量のメール通知が飛び出した。

咲夜は新人が提出した服のデザイン案を一つずつ確認し、的確な意見を返した。

仕事の処理を終えてから、彼女は見知らぬ番号からのメッセージに気づいた。

【話したいことがあります。午後3時、陸斗がよく行く西洋料理店で会いましょう】

署名は水村晴香だった。

咲夜はメッセージを見つめ、指先が少し縮こまった。

晴香はそんなに待ちきれず、陸斗を自分のものだと主張しに来たのか?

2時50分に、咲夜は西洋料理店に着くと、すぐに晴香を見つけた。

淡いメイクにオフホワイトのコートが、彼女を優しく知性的に見せていた。その名にふさわしい雰囲気だった。

咲夜は晴香の向かいに座り、作り笑いを浮かべた。

「晴香さん、最近モデル界で話題の人物だそうですね。今日、私のような無名な服飾デザイナーを呼び出して、一体何を話したいんですか?」

晴香は薄く微笑みながらメニューを差し出し、穏やかな口調で言った。

「咲夜さん、今日は陸斗について、話したいです」

「陸斗」という名前を語尾を上げ気味に呼び、彼女の言葉には親しみと微かな含みを感じさせた。

咲夜は心が揺れたが、表情には出さずに答えた。

「私の夫の話ですか?申し訳ないけど、あなたと話すことは何もありません」

彼女はメニューを取らず、椅子の背にかけたコートを手に立ち上がろうとした。

立ち上がったところで、背後から晴香の声が聞こえた。

「咲夜さんは最近、ファッションショーがありますよね。テーマは確か……初恋でしたね?

じゃあ、知っていますか?陸斗は私をトリに使うことにしたんですよ」

たった一言で、咲夜はほとんど立っていられなかった。

初恋のショーで、彼が……

このショーに咲夜はどれだけの時間をかけて準備してきたか、陸斗が知らないはずがなかった。

トリのドレスは彼女の全力作だった。そもそもこのテーマにしたのも陸斗のためだった。

彼は彼女の初恋だった。

しかし今、その全ての努力が彼の初恋の女性のために使われるとは?

胸にナイフが突き刺さり、心がえぐられた後、一気に引き抜かれるように、血がほとばしる痛みが走った。

「陸斗、あなたは本当に、どうやったら私をもっと痛めつけられるか、よく知っているわね……」

咲夜は西洋料理店から逃げるように出た。

彼女の頭は混乱していた。ふと自分のドレスを思い、さらに晴香の顔を思い浮かべた。しかし結局、思いはあの真っ白な診断書に留まった。

咲夜はスマホのトップにある連絡先に電話をかけた。

「米村(よねむら)さん、時間ありますか?今、そちらに向かいます」

午後5時、咲夜は法律事務所に駆けつけた。

「遺言書を書きたいんです」

咲夜がそう言うと、米村弁護士は驚いた。

しかし弁護士としてのプロ意識から、彼は何も聞かず、静かに記録ノートを開いた。

「どうぞ」

「私の現在の貯金は、私が亡くなった後すべて寄付してください。

そして、雨宮グループの株式は陸斗に返してください。

最後に、残ったデザイン案は……」

そう言うと、咲夜はまだ完成していないドレスを思い出した。

覚悟を決めて、彼女は言葉を続けた。

「全てのデザイン案を破棄してください」

米村弁護士は驚いた。

咲夜は国内で有名なデザイナーだ。トップクラスとは言えなくとも、彼女の服は人気が高く、未完成の作品を破棄するのは惜しいことだ。

だが、彼女の決然とした様子を見て、聞けなかった。

何度も書き直し、夜6時になってようやく終わった。

「他に何かありますか?」

米村弁護士が慎重に書類を差し出した。

「ありがとうございます。お疲れさまです……」

咲夜は書類を受け取ったが、言葉がまだ終わらないうちに、突然、顔色が真っ青になった。

「ゴホン、ゴホン……」

激しい咳のあと、彼女の掌に鮮やかな血が染みついた!

米村弁護士の顔色が変わった。血まみれの手を見て、場数を踏んできた彼でも動揺した。

「江口さん、これは……病院へ行きましょうか?」

咲夜は目を赤くして顔を上げた。

「大丈夫です。水をください」

米村弁護士はすぐに立ち上がり、水を汲んで渡した。

咲夜は手を拭き、バッグから大量の薬を取り出して飲み込んだ。

米村弁護士は心配そうに背中を軽く叩き、彼女の気持ちを落ち着かせた。

「無理なさらず、今日はここまでにしましょう」

咲夜は頷き、少し休んだ後、バッグからいつも携帯している病歴の診断書を取り出した。

「米村さん、これもお願いします。私が亡くなったら、すべて陸斗に渡してください」

米村弁護士は「胃がん末期」と書かれた文字を見て、ようやく全てを理解した。

「わかりました……」

夜は漆黒のように深かった。

白鳥別荘にて。

咲夜は外を長く歩き回り、家の玄関に着いたのはもう10時だった。

一日中、陸斗からの連絡は一つもなかった。

彼は自分のことを全く気にかけていないのだろう。

咲夜は寂しそうにドアを開けたが、思いがけず陸斗がソファに座っているのを見た。

「こんなに遅くに帰ってきたのはなぜ?」

「仕事でいろいろあって、時間を忘れてしまった」

会話はそれで終わった。

陸斗は他に何も尋ねず、ただ咲夜を見つめた。その深い瞳には読み取れない感情が揺れていた。

この沈黙の雰囲気には咲夜も慣れていた。

彼女は陸斗を避けて寝室へ向かおうとした。

だがすれ違いざま、陸斗に腕を掴まれた。

「ちょっと待って」

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